VR体験の品質向上のための2つの要素
数か月前にパソコンとVR環境を購入しいろいろとVRの世界を試しています。その中で最も思ったのが、VR体験の品質向上のためには、2つの要素が必要だということです。
(1)VRゴーグルの、高解像度化と視野角度の広域化
(2)グラフィックボードの高性能化
まずは高解像度化と視野角度の広域化
VRのビデオ映像を見るだけなら(1)のほうが重要だと思います。まだ裸眼と比べると雲泥の差です。その証拠に、Oculus Riftの次世代機は視野角が従来の110度から140度に向上すると言われています。
また、HTC VIVEの次世代機であるVIVE Proの解像度は前の世代に比べると、2160×1200、438ppi(片目あたり1080×1200)から、2880×1600、616ppi(片目あたり1440×1600)にアップグレードされています。
一番大事なのはグラフィックボードの高性能化だ
ということで、ゴーグル側のスペックが上がっていくことも大事なのですが、VRを体験して思うことはグラフィックボードの3D処理性能です。
単にVR映像を見るだけであれば、テレビがやっていることとあまり変わりがありません。飛び出る機能なら一足先に3Dテレビが実装したのですが全く流行りませんでした。つまり人間は立体的に見えることにそこまで価値を求めていないということです。テレビは平面でありそれを見ても脳をだませる映像づくりのほうが大事で、それはアニメなのかもしれませんし、VTuberなのかもしれません。いかに脳を現実の体験と同じと錯覚させるかがよっぽど大事です。
「リアル」を追求しようとすればするほど、かえって脳は騙せなくなる。むしろ特徴を単純化し脳に騙せる空白を与えたほうが騙されやすい。このような記事を最近見ましたがまさにその通りだと思います。
長いですが核心を突いた内容です。必要なのはリアルに近づけることではなく、いかに脳をだます仕掛けを作るかです。この処理に対して最も必要なプロセッサーが、今はグラフィックボードにあると思います。現実のオブジェクトをユーザーの挙動に合わせて立体的に表示する3Dの世界は、グラフィックボードの役割が非常に大きいです。
VRの世界の根本は3Dです。この表示にあたって、カクつきなどは絶対に許されません。脳が「ああこれはうその映像だな」と思ったら最後です。没入感ゼロです。現実の映像がカクつくことはないですから。そしてユーザーの行動によってアクティブに映像が変化していくためには、たくさんの計算が必要です。これを担うのがグラフィックボードです。
もちろん、グラフィックボードの負荷を軽くするプログラミングも必要なのですが、ゲームがファミコンからNintendo Switchまで進化したように、クリエーターからすれば制約はないに越したことがありません。
グラフィックボードの基本性能が向上すれば、作品の幅が広がり、VRの世界が急激に向上していくと思われます。今は制約が多すぎ、いざ作ってみてもなかなか脳をだませないと悩んでいるクリエーターも多いのではないかと思います。
今回のNVIDIAの発表で気になるところ
さて、今回のNVIDIAの発表にて性能の向上を示す大事な言葉があります。
NVIDIAのGPUとしては第8世代に属するNVIDIA Turing GPU Architectureは、世界初のレイトレーシングGPUで、従来世代の製品となるPascal世代と比較して、物理シミュレーションの演算で6倍の性能を発揮するという。
6倍という数字に驚愕します。今のIntelのCPUが6倍になることはまずありません。そしてこの「世界初のレイトレーシングGPU」というワードは何でしょうか。
レイ トレーシングについて考えるために最も簡単な方法は、今すぐに自分の周囲を見回すことです。今見ている物体は、光線に照らされています。次に、自分の目から光が当たっている物体へと、反対向きに光線の経路をたどってください。これが、レイ トレーシングです。
こちらが解説記事ですが、わかるようなわからないような。
下記の映像が最もわかりやすい。
2次元の映像なのに、まるで実写のように感じられますね。
ご興味があればレイトレーシングでYoutubeを検索してみてください。たくさん例が出てきて面白いです。ちなみに、レイ・トレーシング (Ray Tracing)です。
これが脳をだますということだと思います。この技術がVRに到着するとともに解像度や視野角がアップすることにより、いよいよVRは新次元に突入することが私でもわかります。
さあ期待
次世代のフラグシップを手に入れるのは価格的には厳しいと思いますが、しばらくすると廉価版(1060や1070に相当するもの)が出てくると思います。そのタイミングと、次世代のVRゴーグルがコラボレートし、かなりのステップアップを期待しています。
この分野は注目しているので、今後もついていきたいなと思います。
VRは脳をどう変えるか? 仮想現実の心理学 (文春e-book)