orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

謝罪のメカニズム

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テレビでニュース番組を見ていて思うのは、謝罪の場面。どうも聞いていると、謝罪すべきその内容について、とにかく謝っているということです。申し訳ありませんでした。すいませんでした。言葉は踊るのですが、なぜその問題が発生したのかの経緯。原因の深掘り。そして再発防止策、と言った仕事で浮かぶ報告書の形式とはかけ離れています。個人的には、謝罪するのであれば謝ることより、どう反省したのかをちゃんと知りたいものですが、世間一般はそうではないように見受けられます。とにかくきちんと謝ることが大事。むしろ謝ってしまった後責任を果たしていくとして、結局は辞職もせず対応もあやふや、というのはここ最近の政治が作ってしまった結果かもしれません。

ただ、このトピックは仕事上でも同様の記憶があります。実際の仕事の場においてシステム障害等で謝罪をするときに、そこまでユーザーが報告書の細部まで見ていない、という現象です。むしろ、ちゃんと第一報を入れ、それに対して経緯を報告し、報告書を出すこと。そして誠実に謝ること自体の方がよっぽど大切だということです。中身の技術的な内容の真偽まで踏み込まれることは皆無でした。もちろんこちらが専門家であるということもあるのかもしれませんが、それにしても報告の内容が正しいかどうかは気にならないものか。いや、ユーザーは内容の真実さより、まずは誠実に謝罪の姿勢があるかとうことと、報告を行ってくれるかのほうがよっぽど大事なんだ、ということを何度か感じたことがあります。

謝罪される側にとっては実は原因なんてどうでもよくて、再発しないことだけが重要です。何度も再発するということは、つまり原因の深掘りもできていないし再発防止策も不徹底だということを示します。結果こそ大切。だから、謝罪の場で必要なのは誠実な姿勢でありその内容じゃないんだ、ということを今では理解しています。

私がまだ社会人経験が浅かったころは、なんでこんなに細部にまでまとめた内容をきちんと読まず、報告者の姿勢や態度、報告書の迫力でこんなに信じてくれるのだろうと思ったものです。でもあれは、信じているのではなく、二度目は無いよという圧力にほかならない。謝罪の際に相手の様子に拍子抜けを感じた人は、それを考えた方が良いかと思います。結局は謝罪の質ではなく、結果だけが大事。

昨年は東証のシステム障害で結局はトップが辞職するまでになったのですが、障害対応としては業界内ではかなり高い評価がされています。しかしなぜ辞職に至ったかと言うと、2018年に発生したシステム障害発生から二度目だったからことが考えられます。

 

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日本取引所グループ(JPX)傘下の東京証券取引所は23日、9日に起きたシステム障害の原因と再発防止策をまとめた報告書を金融庁に提出した。メリルリンチ日本証券からの大量のデータ送信で回線の一部が使えなくなり、切り替えに手間取った約40社が一時売買注文を受けられなくなった。東証は再発防止策としてシステム設定の変更や障害時に備えたテストを実施。市場運営者として責任を取り宮原幸一郎社長の月額報酬の10%を1カ月減額する。

 

原因その他全く2020年の際とは違うのですが、結局ユーザーは原因など見ていないのです。またか、ということで責任を取らざるをえなくなった。

そう考えると、謝罪の本質は、結果が全てであり、その前提として誠実な姿勢、と言うことになると思います。不誠実な態度をするとユーザーは信じられなくなり、任せておくわけにはいかない・・という流れ。

この謝罪、という現象を考えるとき、「誠実な態度かどうか」のような非科学的な尺度で判断されるのが先で、その後「結果がついてこない」という科学的な態度で最終判断されるという複雑なロジックが動いているということを知る必要があると思います。