orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

AIは雇用を生み出さない

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AIをわからないのに、AIをさわった結果わかったこと

新しいもの好きの私としては、AIは見逃せない領域で、グラフィックボードをアップグレードしたりして自宅のパソコンで機械学習にトライしています。まあおかげで、この冬はパソコンが暖房になるかもなというぐらい24時間起動しっぱなしで、ほんのり暖気を部屋に送っています。

はじめてAIに触れた時に情報収集すると、そりゃあもう数学の情報ばっかりで、AI入門といえば数学でしょというのが一般的な常識でした。

でも、やっぱり今から数学を一から勉強するのは遠い。マイルストーンが遠すぎる。

かつ必修とされるPythonも、そりゃあHello World!ぐらいはできるけど、何とかプログラミングしなくても使えるようにならないかしら。

ということで、数学もPythonもぶっ飛ばして、その辺に転がっているAIライブラリーやツール、クラウド上のAIサービスを見て回っていました。

だんだん、状況がつかめてきました。そんな記事です。

 

AIの置かれた状況が目まぐるしく変わってきた

私がAIの潮目に変化をおぼえたのは下記の記事を発見してからでした。

 

www.sbbit.jp

 このような状況の変化のなかで、門前氏は「最近ではGCPのCloud AutoMLが登場し、精度の高いデータを入れると、本当に簡単に良い機械学習モデルができる状況です。AutoMLによって、Kaggle(世界最大規模の機械学習コンペティション)でメダルが取れるぐらいになってくると、今後は研究機関(部門)の役割が変わってきそうな気もしています」と語り、久保氏に見解を求めた。

「これほど早く安く自動的にモデルがつくれるとは思っていませんでした。データがあれば、エンジニアも不要になってしまいます。そこで研究の位置づけとなるロードマップがないと対応できなくなります。どんなテーマを設定しても、あっという間に時代遅れになる可能性があるのです。事業コアを持っていないと、今の時代は研究を続けることも難しいと感じます」(久保氏)

 

この記事は2か月前のものですが、これは大げさでもなんでもないです。上記で言う「エンジニア」は、AIエンジニアと言う職域なのかもしれません。

政府もAI人材を増やすと息巻いていた矢先です。

 

www.nikkei.com

政府は21日、人工知能(AI)の本格導入などに向けた「統合イノベーション戦略」を閣議決定した。最先端のIT(情報技術)人材の育成が柱で、2025年までにAIの基礎知識を持つ人材を年間25万人育てる目標を掲げた。目標の達成に向け、文系や理系を問わず全大学生がAIの初級教育を受けるよう大学に求め、社会人向けの専門課程も設置する方針だ。

 

GoogleによるAutoML以外にも、MicrosoftのAzureも似たような道に進んでいます。

 

ledge.ai

「自動機械学習 Automated Machine Learningのインターフェースでは、データを用意するだけでAzureのクラウドを使って、さまざまなモデルのパターンを試せます。

前処理やアルゴリズム、パラメータなどを気にする必要はありません。Azure側で自動的にさまざまな組み合わせを検証した結果から、精度の高いモデルを選ぶだけです」

 

AWSだと、SageMakerですよね。

 

aws.amazon.com

Amazon SageMaker は、すべての開発者とデータサイエンティストに機械学習モデルの構築、トレーニング、デプロイ手段を提供します。Amazon SageMaker は、機械学習のワークフロー全体をカバーする完全マネージド型サービスです。データをラベル付けして準備し、アルゴリズムを選択して、モデルのトレーニングを行い、デプロイのための調整と最適化を行い、予測を行い、実行します。モデルをより少ない労力と費用で、本番稼働させることができます。

 

AI分野では先人であるIBMも負けていないということで。

 

japan.zdnet.com

 IBMは米国時間6月12日、データサイエンスプラットフォーム「IBM Watson Studio」に、人工知能(AI)技術を活用した自動化機能である「AutoAI」を搭載したと発表した。これにより、エンタープライズAIの配備に先立つデータプレパレーション(分析データの整備)作業と一連の単調な作業が自動化されるという。

 AutoAIには、データプレパレーションとガバナンスに向けたツールが含まれている。AutoAIはWatson Studioの中核として機能することで、データサイエンティストがモデルの開発に集中できるようにする。Forrester Researchの調査レポートによると、AIの配備に向けた最大のハードルとして、データの品質を挙げる回答が60%を占めていたという。

 

ただ、別にクラウドサービスを使わなくたって、ゲーミングパソコンがあれば自宅でAIを試すことはごくごく普通にできますね。クラウドがもっと簡単にしてくれるというお話です。

 

考察

たくさん使われるようになるということと、それを作り出すというのは全く別のことだと思います。

私もインフラエンジニアを名乗っていますけれども、CPUやメモリー、ストレージ、ネットワークインターフェースがどういう風に作られているか、どんな設計をされているかは大まかにしか知りません。

もし一から作るとなると、もちろん高度な工学の知識や数学の知識が必要となるでしょう。しかし、それはCPUであればIntelやARMなど一部の大手企業が抑えていればよく、我々はお金で買ってそれを利用しているだけに過ぎません。利用するだけなら、高度な知識は不要です。

とても難しい理論で出来上がっているものが、ハードウェアやOS、ミドルウェアやアプリケーションが吸収してくれて、利用者は簡単に使えるという仕組みです。

AIも、急速にそうなりつつあるということです。

AIを単に利用し、システムを構築するだけなら数学から学びなおす必要はないということです。

AIは大量のハードウェアリソースが必要でしたが、ハードウェア側も急速にAIに最適化していきパフォーマンスが過去の数倍、数十倍、というリリースが相次いでいます。ソフトウェアもどんどん更新されています。

 

tech.nikkeibp.co.jp

 Core-Xの新製品では、「Intel DL(Deep Learning)Boost」と呼ぶ技術などによって、推論処理の性能を高めたことが特徴の1つである。その特徴は、Xeon W-2200も備えている。

 

medium.com

TensorFlow 2.0 offers many performance improvements on GPUs. TensorFlow 2.0 delivers up to 3x faster training performance using mixed precision on Volta and Turing GPUs with a few lines of code, used for example in ResNet-50 and BERT.

 

液晶ディスプレイの世界も似たような状況にあると思います。日本の液晶ディスプレイの代表的な企業JDIは、存続が危ぶまれている経営難の状態にありますが、液晶ディスプレイの利用が少なくなったかというとそうではありません。むしろ十年前の数十倍の利用がされているのではないでしょうか。

これは、液晶ディスプレイの量産がより簡単になり、中国を中心に安価に質のいいものが大量生産できるようになった。そのため、液晶ディスプレイの専門のエンジニアが大量に余ってしまうという状況が生まれています。

このように、「これからはAIの時代だ」と言いつつも、AIエンジニアの雇用が大量に生まれると考えるのは拙速であると言うことがわかってきました。

一方で、AIの仕組みを知っていることそのものは何のデメリットもなく、むしろ誰でも使えるAIをどのように社会に活かし、運用可能なものにしていくかをリードするため、既存の情報技術やプロジェクトマネジメントなど、レガシーでスタンダードな知識をきちんと学んでいくことが大事なのではないかと思います。またビジネスの業務知識も大事です。

逆に言えば、すでにシステムエンジニアとして活躍されている人は、今から「使いやすくなったAI」を利用すれば、AIの仕組み自体はわからなくても利用でき、システムにイノベーションをもたらすことが可能になります。AIというと「数学から学びなおしか~」のイメージが強かったと思いますがそうではありません。まさに今がはじめ時だと言っても良いと思います。

個人的には、狭義のAIエンジニアと、AIを使うことができるシステムエンジニア、そしてAIが使えないシステムエンジニアの3極化していくんじゃないかな、と予想しています。AIそのものがAIエンジニアを大量に作り出し、雇用を生み出すというのは誤りでしょう。