orangeitems’s diary

クラウドで働くエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

何それつらい、オラクル「自社データセンターを作ったので引っ越ししてください」、客「何ですと?」

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これは大変な話

そりゃあ、インフラ担当者は頭を抱えてるでしょうなあ。

 

japan.zdnet.com

米Oracleおよび日本オラクル(以下、オラクル)は、国内で自社運営のデータセンター(以下、DC)を間もなく開設するのに伴い、富士通の国内DC内に設置しているクラウドサービス「Oracle Cloud」を利用する顧客企業に対し、自社DCへ移行するように交渉を進めていることが、関係者の話で分かった。

(中略)

両社にとっては今回の移行に際して、とにかく顧客企業の継続したクラウド利用にトラブルがないように実施することが求められる。顧客企業側もそれなりに労力を使うため、思わずため息をつきたくなるようだ。間借りは解消しても、両社の協業によるサービス品質はむしろ向上したと、顧客企業が感じるように努めてもらいたい。

 

データセンターなんてよほどのことが無ければ永劫に使えると思って契約しますよね。5年後無くなりますがいいですか?、って言われて「いいですよ」なんていう会社はこの世に一社もいないでしょう。

Oracle Cloudは立ち上げ時から日本国内でかなり劣勢で、それでも富士通がバックにいるなら使うか、Oracleデータベースも使えるし・・、なんていう会社も少なからずいらっしゃると思います。

 

2018年には実績を強調

まだ去年の話です。

 

www.weeklybcn.com

日本オラクルは、国内のクラウドビジネス推進に向けて、富士通と戦略的提携を行っている。富士通の国内データセンター(DC)を活用して「Oracle Cloud」を提供、ユーザーへのデリバリも富士通が担っている。すでに200社を超えるユーザーが導入しており、着実に実績を積み重ねてきた。オラクルと富士通の共創で実現するイノベーションはどのようなものなのか。5月17日・18日開催の「富士通フォーラム」における「オラクルと富士通で実現する“Transform Your Business”」と題したセッションで語られたポイントを紹介する。

 

これって、200社が移行しなきゃならんということですよね。すごいお金がかかる話だと思うのですが、Oracleが全部補償するかというと、私の知る限りそんな契約にはなってないと思います。

 

2016年、提携時の様子

こちらは富士通/オラクル提携時の記事。

 

japan.zdnet.com

 富士通と米Oracle、日本オラクルは、クラウド分野での戦略的提携を発表した。「Oracle Cloud」を富士通のクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5」と連携させる。利用者は富士通からサポートをワンストップで受ける。国内にデータを置ける環境を作ることで、基幹系でOracle Databaseを利用するユーザーのクラウド移行促進を狙う。

 

サテライトとは言えラリーエリソン氏まで出てくるのでは、「お、これは本物か?」と思った企業も多かったでしょうね。だいたいこれはまだたった2年半前の話です。実質本番リリースから2年以内のシステムばかりが対象ということですよね・・。

これはもう、ため息が出るような話ですよね・・。富士通も、利用ユーザーも、そして日本オラクルの方もかもしれません。アメリカから矢が飛んできたのでしょう。

 

Oracleは何をしようとしているのか

端的に言えば、Oracle Cloudを作り直したのです。

 

www.atmarkit.co.jp

同氏は、第1世代のクラウドは10年前の技術を基に構築されているが、Oracleの第2世代クラウドである「Oracle Gen 2 Cloud」は、極めて要求の厳しいエンタープライズワークロードも安全に実行できるように構築されていると述べた。ユニークなアーキテクチャと機能を備え、追随を許さないセキュリティ、パフォーマンス、低コストを実現するという。またOracle Gen 2 Cloudは、業界初の自己稼働型データベース「Oracle Autonomous Database」の実行に対応する唯一のクラウドでもある。

Oracle Gen 2 Cloudの基盤である「Oracle Cloud Infrastructure」は、任意のエンタープライズワークロードを安全に実行するように設計されている。この先進的なIaaSは、Oracle Autonomous Databaseをネイティブにサポートし、重要なデータを保護するためにコアからエッジまで、新たなレベルのセキュリティを提供するという。

 

私も去年、Oracle Cloudは第二世代になるという話を聞いてはいたのですが、それがこんな話(富士通のデータセンターからの大規模移行)になるとは・・・。

確かに、AWSのインフラはサービスインからかなり時間が経ったので、新しく作り直すとよりスマートな設計や性能となることは理解できます。多少は共感していたのですが、既存顧客への扱いがかなり「アメリカ的」だなあと・・。

 

もっと詳しく、日本のOracle Gen 2 Cloudのことを語った記事がこれです。

 

www.weeklybcn.com

オラクルは今年、Oracle Cloudの最新データセンター(DC)を東京、大阪に開設する計画だ。川島氏はこれに言及した上で、オラクルのクラウド戦略は「SaaS、PaaS、IaaSの全てを包含したポートフォリオを持ち、互いに連携し統合されたプラットフォームを提供することができる。エンタープライズのお客様のニーズに確実にお応えできることが大きな違い」であると強調した。

オラクルでは「Oracle Gen 2 Cloud」と呼ぶ次世代型クラウドデータセンターの構築を開始している。4年前にシアトルの開発拠点でOracle Cloudの開発がスタートしたとき、携わる人員はわずか数十人だったが、現在は数千人規模まで大きく拡大。それだけ「巨額の投資をしている」と川島氏は力を込めた。

 

すごくよくわかる・・のですが・・200社!

利用にあたっては、5年単位で予算を計算して、データセンターの性能を細かく調べて・・、細かく調べて利用を開始したはずです。会社のシステムですからね。それが水の泡・・。

 

感想

特にOracle Cloudに限った話ではなく、データセンターを利用する際はこの手の話は警戒したほうがいいです。

・データセンターの設備が古くなったので止めます
・経営方針が変わり事業継続を断念しました
・今後の新規受付を停止します
・株主構成の変更で、貴社はグループ会社じゃなくなったので出て行ってください

みたいな話に巻き込まれることは、実はよくある話です(全部聞いたことがある)。

 

今回のOracleの件、5年前に、IBMがIBM SmarterCloudを止めてSoftlayer(現IBM Cloud)へ移行させた件と全く同じことなんですね。

 

tech.nikkeibp.co.jp

日本IBMが、IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)である「IBM SmarterCloud Enterprise(国外での名称は「IBM SmartCloud Enterprise」)」を2014年1月31日で終了することが分かった。2013年10月31日現在、顧客への説明を開始している。米IBMが2013年6月に買収した米ソフトレイヤー(Softlayer)のIaaSとサービス内容が重複するためで、既存顧客にはソフトレイヤーへの移行を推奨しているという。

 

まあ、今回の件は既視感(デジャヴ)がかなりあるのです。当時のIBMにしろ、今回のOracleにしろ、巻き返したいのは同じです。

せっかく構築したシステムが別の場所に移行しなきゃならんとなったら、本当に大変です。新しいことが全然できなくなります。

そうならないためには。いくつかに基盤を分散する、いわゆるマルチクラウドの考え方は重要でしょう。また、運用企業の体力や信用力、シェアやビジネス状況も注視する必要があります。

また、Kubernetesのような、可搬性(どんな基盤でも動く)というインフラ基盤を作るのも重要です。特定のクラウド基盤に依存したシステムを作ってしまうと、今回のような件について移行が大変になり、基盤の移行に対して脆弱と言うことになります。

今回の話、ため息が深すぎて、日本の二酸化炭素濃度が若干上がったような気がしてなりません。インフラやクラウドの仕事が私のフィールドなだけに、身が震える内容でした。対岸の火事と思わず、インフラ基盤にはこういうことがあるとご理解ください。