orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

システムエンジニアは派遣と請負と準委任の違いをちゃんと覚えようよという話

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過去、この手のネタで一度炎上したことがあるのですが、静かになったのでちゃんと記事にしておこうと思います。

 

契約の話

お客様と契約する際には、

・派遣契約
・請負契約
・準委任契約

この3つ以外はないんですが、違法労働させられ困っている人が、「それは現実と違う」とか言いがちなのです。特に気になったのが、SES派遣という言葉がまんえんしていることです。こんな言葉は法的にありません。身の回りにあるとしたら、それは法律に違反している環境の可能性があります。

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なぜ今この話題か

今日、こういう記事を見て思ったんです。

qiita.com

準委任と請負の違い
あなたがフリーランスをやっている場合、この2つの契約の違いを説明できますか?
できなければ、プロとしてそもそも失格です。
なぜなら、「法律」はビジネスをする上での「ルール」だからです。
野球選手がルールを知らずにプレーしてるくらい「アホ」なことだと自覚してください。
(といっても、結構そういうエンジニアは多いですが、、、フリーランスといっても実態はただの会社員から抜け出せていないエンジニアが多いのが現状なので、私みたいな人たちが稼げるわけです)

表現は尖っていますが、本当にそう思うわけです。IT業界はブラックだという前に、どういうルールで成り立っているのか知ろうとしない人はめっぽう多いです。そういう人と議論をすると、話が全くかみ合わないうえに怒り出すのですが、人数が多くてしかもストレスがたまっているので燃えやすいんだろうなと思います。

 

なぜシステムエンジニアが知ろうとしないのか

これは経験談です。いろいろな会社があるので全て当てはまるかはわかりません。私は14年くらい、いわゆるドナドナと呼ばれる他社へ常駐するシステムエンジニアでした。自社業務は半年しか経験したことがありませんでした(今は違いますが)。で、営業や先輩からよく言われたことがあります。

「あなたは技術者だから、お金や契約などは気にしなくていい。技術に集中してほしい。それは営業の仕事だから。」

このフレーズ、聞いたことはありますか?。あるとすればこれは策略だと思っています。特に現場のリーダークラスになれば、自社がお客様とどのような契約を結んでいるかは非常に重要なはずです。指揮系統や成果物など全然違ってきますし、お客様も法律を守らないで常駐させていると、違法な取引となりご迷惑をかけてしまいます。

にもかかわらず、このあたりの調整は全て営業が巻き取ろうとします。なぜなら、現場の技術者が知恵をつけるとお客様と調整しにくくなるからです。お客様と自社の営業が、法律を表面上守っているような体裁をどうやって形作るかを、技術者を交える調整するのです。当時、私がリーダーをやっているにもかかわらず、営業が「体制表」という謎の書類を作っているのを見たことがあります。それは現場の状況とはかけ離れたものだったのですが、法的にはそのようにしないといけない、ということでした。

このように、常駐型をメインとする会社は、システムエンジニアは「商品」であり営業が法的な調整をするのが一般的な役回りなのです。

したがって先ほどの記事は、フリーランスは、技術だけではなく、この営業部分のタスクを押さえなさい、と言っているわけです。

 

SESという危険な概念

ここでは、

・顧客(人を派遣してもらう側、オフィスがあるところ)
・A社(顧客と直接契約を交わし人をアサインし、顧客のオフィスに常駐させる)
・A社の協力会社B社(自社の仕事があふれたときに、協力し人を出してくれる会社)

と定義します。

顧客側にとって、最もよい契約方法は「派遣」でした。他の契約と違って、派遣だけが顧客が指示・命令をして許されます。「おい、A社のA君、この仕事をやってくれ。」と直接言えるのです。なぜ派遣契約にしない場合が多いのかを考えてください。

答えは、派遣についてはたくさんの制約があることです。例えば、A社を通じてB社を派遣することは、「多重派遣」と言って明確な違法です。でもA社だけでは人が足りないとき、顧客がB社とも契約するのは面倒ですし、A社とB社がチームになったとき責任があいまいになります。なので、A社とのみ契約したいわけです。また、派遣は3年までしか継続が認められないので、せっかく育てた派遣社員が変わっていくというデメリットもあります。

一方で、「請負」となると、顧客はA社に命令できません。顧客とA社の間で請け負ってほしい仕事を交わした後は、A社の中で閉じて仕事をしなければいけません。顧客のオフィスの中で顧客の社員とA社の社員が同じ部屋にいることもまずくて、別の部屋かせめてパーティションを立てて別の組織にしないと偽装請負を疑われることになります。また、請負の場合は成果物に対して責任(瑕疵と言います)を取らなければいけないです。成果物ができるまで1円も払われません。派遣だと毎月お金が入るので安全ですし、まずいと思ったら契約を打ち切れます。また、請負は一人では成立しません。請負で顧客がA社一人に命令していたら、それは派遣と何ら変わらなくなるからです。ということで、できるだけ、派遣的な仕事は請負で契約しないようにします。

 

・・・ということで、IT業界ではSES契約が横行しているのです。SESとは何度も言いますが「準委任契約」のことです。SES派遣という言葉は、まるで派遣契約のことみたいなので忘れてください。また、使わないでください。

ですから、準委任契約のことをよく知りましょう。

準委任契約は、指揮系統はA社にあります。したがって顧客は、A社の社員には命令できません。A社の担当窓口と委任した仕事について相談することはできます。このあたりは請負と同じです。したがってSES契約については二人以上である必要があります。A社に関して顧客から独立しているので、A社へB社の社員を派遣として入れても法的にはセーフです。このとき、B社と顧客の間には契約がないので、A社が指揮することになります。

一方、A社がSESでB社と契約することはできるでしょうか。これはできます。ただし、A社とB社はSES関係になるので、A社がB社の社員には直接指示できません。多重SESの場合、どうしても法的に無理している場合が多いです。同じ会議に顧客とA社とB社がいたり、飲み会をやったりと、どんどん「なあなあ」になっていきます。この、「なあなあ」感がSESの諸悪の根源です。最終的には派遣と何ら変わらない関係性になり、SES派遣なんて言葉が横行してしまっているのです。

 

まとめ

SESを含めて、体系的に理解したい場合は、以下を読むとよいでしょう。

kabblog.net

自社がどんな契約で、顧客と契約をしているか。そしてどのような制約を受けているか知らないと、知らず知らずに違法な仕事の仕方となってしまいます。まずは自分が疑問が付くような状況にないか、ぜひ、確認してください。

 

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