クラウドが値上がりに転じる近未来と、DXブームの曲がり角

 

AWSに代表されるクラウドサービス、特にインフラ周りについては使えば使うほど値段が下がる神話があった。ハードウェアの性能が年々上がっていくから、性能当たりの値段が下がる。また、規模が拡大していくのでスケールメリットでハードウェアを入手するための値段が下がる。そんなロジックでもう10年あまり業界は動いてきた。

一方で、ここに来ての円安で請求額が1.1、1.2倍と上がっていくことについては沢山のユーザーが経験済みだと思う。しかし、大事な事実を1つ思い出す必要がある。まだクラウド自体の、ドル建ての価格は値上がりに転じていないということを。円高になればまた日本に安定が訪れる、今はそんな状況である。

しかし、それはもう甘いと思う。まずはデータセンターの電気代は看過できない上昇となっている。

 

xtech.nikkei.com

電力料金の高騰がデータセンターの運営を直撃している。影響は施設内のラックを貸し出すハウジングで大きく、値上げが不可避な情勢だ。サーバーや一部設備も値上げ傾向にあり、付加価値型サービスにも影響が及ぶ恐れがある。

 

企業間の設備契約は年間契約が多いので、クラウド自体の値段に跳ね返ってくるまでには時間差がある。その時間的猶予ももはや限られると思われる。クラウドのリソース売上に対する電気代の比率がしきい値を超えれば、ついにドル建ての値段そのものの改定がやってくるのは間違いない。

その上である。サーバーの基本部品であるCPU自体の値上げをインテルが発表した。

 

gigazine.net

2022年7月14日、IntelがサーバーやPCのCPUをはじめとする主力商品やWi-Fi接続機器など、ほとんどの半導体製品の価格を2022年秋に引き上げる予定を顧客に通知したと報じられました。ある情報提供者は、価格引き上げ率は未確定でチップの種類により異なる可能性があるものの、少ないものでは数%、場合によっては10~20%の範囲になる可能性が高いと述べています。海外メディアのThe Registerは業界筋の話として、Intelの値上げは2022年10月から始まるとの見方を示しています。

 

クラウドベンダーは、値上げ前にハードウェアをある程度確保すると思われるが、しかし半導体不足で量的に限界はある。また、部品の値段が上がるのだから当たり前の用に保守費用も上がるだろう。

企業間取引は年間契約や長期契約も多く、時間差があるので今は安穏としていられるのである。この状況だと、2023年はどんなクラウドサービスでも値上げが起こるのは確定的と言える。

その場合に、更に波及するのが、SaaSの各種サービスの値上げとなる。こうやってどんどん連鎖していく。値上げ分は最後の最後はエンドユーザーが支払うことになる。SaaS内に含まれるベンダー側の人件費も上がっていく。負担はいつしかユーザーに転嫁しなければいけない。ここまでは机上でもわかる事実だ。

 

さて、円安とのダブルパンチでこの国のIT基盤はどうなるのだろうか。

いよいよ、リソース縮小、SaaS利用見直しの大号令がどの企業でもかかりそうな雰囲気である。DXが一度止まるとしたら、このインフレが契機になってもおかしくないと考える。DXは投資だから、と言っても予算には限界がある。

それは遠い将来ではなくすぐそこなのかもしれない。