orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

図書館司書を増やす前に解決しなければならないこと

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司書を増やすことに日本維新の会が反対し話題に

話の筋はこうです。

2015年に改正学校図書館法が施行されました。

 

www.mext.go.jp

 この法律改正は,学校教育における言語活動や探求的な活動,読書活動等の充実のための学校図書館の重要性が一層高まっていることに鑑み,学校図書館の運営の改善・向上を図り,児童又は生徒及び教員による学校図書館の利活用の一層の促進に資するため,学校司書を置くよう努めるものとすること等とするものです。

 

しかし内容を見てもわかる通り、「努めること」のオンパレードで、現場は努めているけれど遅々として進まない。

そこで、「文字・活字文化推進機構」の働きかけにより、国会決議を行うことでこの努力を促進しようとしていました。

この団体、新聞社や出版社、印刷会社や書店などが役員を務めており、学校図書館にも深くかんでいます。

 

www.mojikatsuji.or.jp

 

ところが、日本維新の会が反対にまわり見送りになったという経緯となります。

 

this.kiji.is

学校図書館で子どもの読書や学習を支える学校司書の配置増を求める国会決議案に、与野党で唯一、日本維新の会が「近い将来、司書の仕事は人工知能(AI)で代替可能になる」と反対し、臨時国会(9日閉会)への提出が見送られていたことが19日分かった。

 

かつ、この「司書の仕事はAIで代替可能になる」という言葉が独り歩きし、

・まだAIに置き換えられないんだから暴論
・政治家こそAIに置き換えられろ
・AIの怖いところは、AIが何でもできそうなことでありもしない推論がされる

というような意見が噴出しているという状況です。

 

本質は、国民が司書の仕事に理解がないこと

そもそもこの維新の文書の写真が一部の文章しか示していないので全部が読めません。しかし内容を読む限りは、元々の論は「司書って本当に機能しているの?」という疑念こそが本質ではないかと思いました。

図書館自体が税金で賄われているのだから効果的かどうか今一度考える必要があるし、それが明らかでないのにまた人を増員して支出を増やすのはどうか、ということです。

AIなんて取ってつけただけのロジックで、図書館自体をもっと効率的に仕組みとして見直し、教育にもっと寄与できる存在にするべきではないか・・。

 

ということで、そもそも現在、図書館秘書がどんな状況に置かれているかご存知でしょうか。生々しい記事があるのでご紹介します。

 

gendai.ismedia.jp

「司書」と聞いて、どんな人を思い浮かべるだろうか。

図書館のカウンターに座って、黙々と何か作業をしている人、みたいな感じだと思う。

私は関西の大学で9年間、図書館の司書をしてきた。普段私の周りには同僚はもちろん友人まで司書ばかり。でもたまに異業種の人と初対面で会う機会があって、自己紹介では当然お互いにどんな仕事をしているのか話題になる。

正直、図書館の話をするのは気が重い。だいたいこんな反応をされるから。

「カウンターに座ってるだけでしょ。暇そう」
「楽して稼げていいね!」
「好きな仕事ができて幸せだねー」

 

どうでしょうか。そもそも学校自体が図書館司書を重要視していません。重要視する仕事を業務委託にした上で半分を派遣会社がピンハネして安月給の非正規社員が支える構造である、と言いいます。

学校自体がそうであれば政治家だってそうでしょう。みんな、図書館司書のことを教育のために必要なユニットと認めていません。

だから、AIで置き換え可能という発想も、まかり通ってしまいます。

今、AIにしろRPAにしろ、人の仕事を自動化して無くしてしまう発想が流行っているけれども、それで削減しようとしている仕事は経営者はみな、「ムダ」だと思っています。司書も「ムダ」だとはっきり言うのが、たまたま日本維新の会にすぎないのだと思っています。

 

司書の低待遇を裏付ける記事はたくさんあります。

 

news.careerconnection.jp

昨年、保育士の賃金の低さが話題になったが、同様に厳しいのが司書だ。4月3日、はてな匿名ダイアリーに「私が司書を辞めた理由を吐き出す」との投稿があった。7年間学校司書として勤めた女性は、当時をこう振り返る。

「給料は最後の一年の毎月の手取りはフルタイムで働いて8万9千円ぐらい」
「ああもう無理だわ、と思ったのは、保護者から給料が高いんじゃないかと全体の場で指摘されたときだった」

 

学校が意味がないと思うことの裏付けに、利用する子どもの保護者の低理解もあります。そうなると、政治家や学校運営を責める前に、我々自体の意識の問題ではないかと考えてしまいます。

 

toyokeizai.net

この連載では、女性、特に単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。
今回紹介するのは、図書館で非正規雇用で働く女性だ。ごく一般的な女性である彼女が、なぜ貧困に苦しむようになったのか。

 

dot.asahi.com

東京都練馬区立図書館の運営を民間に任せるかどうかをめぐり、練馬区と図書館司書らが激しく対立し、司書らがストライキの構えを見せていたが、18日の最終交渉の末に、ストは回避された。ネット上では、映画「図書館戦争」を引き合いに出し、「リアル図書館戦争」などと話題となったが、不発となった。

 

もうこの手の、司書が非正規で低賃金で生活できないという話はネットに山のようにあふれています。

この状況で、「学校に司書を増やす」というのは、生活困窮者をさらに増やすだけではないかと思います。

司書だけではなく図書館自体も確かに再定義して、効率的な税金の利用方法を考え直すということを考えると、日本維新の会の言っていることもあながち暴論には聞こえないと考えています。

司書が悪いのではなく、図書館政策全体を含めた中での今の司書の位置づけが機能不全に陥っているのではないか。そのため国民の評価が低すぎて、それに対する支払いがいよいよ最小化して行っているのではないか。

司書を見直すのではなく、図書館の在り方を含めて見直し、そのうえで司書の待遇を大幅改善しなければいけないのではないか、ということです。

 

AIが政治家や経営者、医者や弁護士の仕事は奪わない

折に触れて出てくる「AI」という存在ですが、きっと政治家や経営者、医者や弁護士の仕事を奪うことはありません。

それはなぜか。

権力があるからです。彼らしかできない仕事を定義していて、それを鉄壁のディフェンスで守っている。

「AI」が削減するのはいつでも、権力者から見て「削減したいな~」と思う原価です。今、RPAがザクザク削減している「時間」は諸元は非正規やアルバイトの仕事だったりします。RPAにも続々とAIが取り込まれていますが、何しろ削減するのは、権力者にとって削減しても傷つかない仕事です。

だから、今後、偉い人が「AIで削減して~」と言ったら警戒してください。絶対に偉い人が偉い人で無くなるようなAIの使い方は行われません。

 

「文字・活字文化推進機構」には新聞社が入っている。共同通信が司書を増やさない方針を出した維新を報じる。AIを語るのが政治家。そして司書は現在低待遇で疲弊している。しかし、数だけ増やすという法律。

今回のニュース、なかなか世の中の構造がクリアになる現象だと思いますがいかがでしょうか。