orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

M&Aしたけどシステムがバラバラでデジタル化遅れ、のお約束感がはなはだしい

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M&Aの結果、システムがばらばらに・・

一日に同じようなニュースを二本見ると、お約束か、と思います。

 

こちらはファミマの例。

www.itmedia.co.jp

ファミマはAWSに移行する前、システムの管理・運用の効率性に課題を抱えていた。店舗数の拡大に向けてM&Aを積極的に進め、「am/pm」「ココストア」「サークルK・サンクス」といったチェーンを統合してきた同社は、母体によって店舗システムがバラバラ。本来はシステムを最適化する必要があったが、手間がかかるため後回しになっていたという。

 

そしてイオンの例。

www.nikkei.com

前身のジャスコ誕生から50年を迎えたイオン。ダイエーなど度重なる流通大手のM&A(合併・買収)を通じてグループ会社が300社を超える国内の小売り最大手に成長した。ただ米アマゾン・ドット・コムなどネット通販の拡大で事業環境は変化している。事業の入れ替えを急ぐ世界最大手の米ウォルマートと、デジタル化などで後れを取るイオン。創業家の岡田元也社長は、どう未来を切り開くのか。

 

この2つの問題、根っこは全く同じです。違う基幹システムを持つ会社同士をくっつけちゃったものだから、デジタル的な効率化が全くできない。

とりあえずはクラウド等のインフラ基盤を共通化していくところから始め、それがひと段落したら次はシステム統合・・のような形を取りそうですが、技術者目線でなんとも気の遠くなるような話です。

特に、日本企業のシステムはカスタマイズをしまくっています。システムAとシステムBでは背反するような機能が両方にあり、どう整合性をつけるのか。どちらの会社に合わせるのかということを言い出すと政治的な話にも発展し、これだけで生産性を落とす理由になりますね。

かつ、IT部門の立場が業務部門より低い日本企業では、さて・・どうしますかね・・という状況のまま、個々のシステムの保守ベンダーは待ちぼうけ。日本各地でそんなことが起きているんだろうと思います。

 

M&Aと基幹システム

海外の企業は、M&Aが盛んなために、基幹システムをできるだけパッケージのまま利用しカスタマイズしないように心がけるという基本があります。

 

www.fujitsu.com

【酒井】
特に、グローバルな経営基盤としてのITでは、ERPをベースにカスタマイズを最小限にし、できるだけERPのベストプラクティクスの標準に合わせて素早く仕上げないとまた、10年先に同じことを繰り返すことになるということを、経営層やIT部門の方々は十分理解されています。新たなITを構築するリソースは、極力企業価値を高めるシステム構築にシフトする。そういう変化がお客様に起きています。

【森岡】
パッケージで対応するとか、他のお客様と共同開発してもいいとか、お客様の業務部門で標準化が当たり前の思考になっています。年間売上1000億以上の会社は75%くらい海外で標準化が進んでいるという調査もあり、海外の提携先と組んだ経験から、日本でも標準化できるのではという意見が出てくるのだと思います。

 

日本の大企業の経営陣について、思想ばかりがグローバル化しM&Aを積極的に手掛けるようになりましたが、ITについての理解が全くなかったので、システム統合が全くうまくいかないという話が非常に多いです。

カスタマイズしまくった基幹システムが各地に点在し、その間を通信回線をつないでなんとかやりくりしようとする場合が非常に多いのです。

 

it.impressbm.co.jp

 ところが多くの日本企業の基幹系システムの実態は、各拠点設立時に簡易的に導入されたシステムやM&Aをした会社の既存システムを温存し、結果的に世界各拠点でバラバラの状態になっているのではないだろうか。在庫管理基準や製品コードの考え方が合っていない、顧客情報もきちんと共有化されていない企業が多いはずだ。これでどうやって、グローバル経営を支えようというのだろうか?

 

毎回毎回毎回、長い間この不経済を繰り返しているのに、なんでまた違う会社同士がくっつこうとするんでしょうね。

海外の会社の場合、経営者が変わると基幹システムのパッケージごと変わるとの話を聞いたことがあります。経営手法がデジタル化前提なので、外からパッケージごと持ってきて基幹システムごと変えてしまうそうです。しかもパッケージ自体はカスタマイズ化しないで現場の仕事の仕方を変える、とのこと。

外形だけ日本企業が真似した結果、M&Aしても変わらない子会社の仕事のやり方。システム。SIerはこの状況でシステム刷新を提案しても莫大な開発費となるため、とりあえずシステム同士を結ぶことでしのいでいるという景色です。

 

事例に事欠かない

たくさんの事例が転がっているのですが、リコーの事例を挙げておきます。

 

tech.nikkeibp.co.jp

 M&Aを実施したときに、問題となるのは情報システムです。提供するサービスが複雑になってきていますので、一つひとつの案件がそれぞれ違うわけです。それを新しい情報システムで統合しようとすると、かなり大変です。我々も結構苦戦しました。北米のビジネスで利益が出ないといって苦しんだのは、そこに原因があります。

 2008年と2009年は本当に苦労しました。その経験から言うと、システム統合は絶対に片寄せでなければならないと思います。サービスや業務プロセスを、今動いているシステムに合わせる形で標準化して、その後にパフォーマンスを追求するというやり方にしないといけません。

 

この後、リコーは高い授業料を支払うことになります。

 

www.asahi.com

複写機大手リコーが、北米事業で数百億円規模の損失を計上する検討に入った。2008年に約1600億円で買収した米販売会社「アイコンオフィスソリューションズ」の業績が悪化し、想定した収益を稼げないためだ。早ければ18年3月期中に減損処理する可能性がある。
 リコーは現在、3月期決算の発表に向けて北米事業の収益見通しを精査中だ。
 2月22日には「減損実施の要否や金額は現時点で不明」とのコメントを公表。リコーは北米事業のてこ入れ策として販売網の縮小を進めるが、山下良則社長は「最適化には時間がかかる」と話しており、早期の収益改善は難しい状況だ。

 

今回、ファミマのIT部門の方の取組が話題になっていますが、実際のところ一社の問題では全くなく、企業の基幹システムに対する哲学自身を変えていかなければいけないということです。

そうでなければ、M&Aなど決して行わないことです。成長できない理由がデジタル化の遅れなのに、それをそのまま取り込んだら、M&Aする側もされる側も「かけ算」で生産性が低下していきます。

IT業界で暮らしていると、またか・・、といった話題で、かつ巻き込まれたIT部門の方はお気の毒にと思います。

ぜひ、基幹システムを日本中で何パターンかに標準化し、会社をくっつけやすくする活動が本格化してほしいなと思います。そうでないまま、カスタマイズドDX(デジタルトランスフォーメーション)が各地で行われるなら、また数年後にM&Aで似たような状況になって、ジリ貧になること間違いなし、です。

サラリーマンだって終身雇用が無くなるように、会社だってずーっと同じ会社なわけではないというのを、全国の会社の経営者が理解し、次に基幹システムを作るときには工夫を考えてもらいたいものです。