orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

非正規公務員がもたらす官製ワーキングプア 派遣社員よりひどいその待遇

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非正規公務員が社会問題に

本日NHKで、「非正規公務員」のニュースが流れました。

就職氷河期と絡めていることも踏まえて、考えさせられた方も多いのではないでしょうか。

 

www3.nhk.or.jp

「これ以上、わたし頑張れませんーー」

ことばにつまりながらそう話したのは、就職氷河期に大学を卒業して以来、「非正規公務員」として働き続ける女性です。

「突然、給与が減らされる」「この先、働き続けられるか分からない」「抜け出したいけど抜け出せない」

取材班に寄せられた非正規公務員の声です。(「非正規公務員」取材班・ネットワーク報道部記者 國仲真一郎 水戸放送局記者 齋藤怜)

 

特にこの半年の間に、たくさんの悲惨な現状がメディアを賑わせていますのでこれをまとめておきます。

 

メディアで語られる非正規公務員の悲惨な現状

2019/4/18 論座

webronza.asahi.com

非正規公務員が半数を超える自治体が、8年間で5倍に増えた。いまや「公務の柱」といってもおかしくない非正規公務員たちだが、契約更新期の3月は、こうした人々は「契約がつながるか」と神経を病む季節だ。クビがつながったとしても、4月からは再び次の年度末の心配が始まる。リストラに遭った民間企業の社員から、「働き手にとって解雇は死刑を意味する」という言葉を聞いたことがある。公務員は一般に、民間より守られ安定していると思われがちだ。だが、「柱」となった非正規公務員たちの「死刑宣告」の理由は、仰天するほど安易で軽いものが多い。年度替わりのこの時期、その背景を考えてみた。

 

2019/2/10 NHK

www.nhk.or.jp

小郷
「先月(1月)事実上始まった春闘では、非正規労働者の賃金の引き上げや、格差の是正が進むのか注目されていますが、今、地方自治体でも、臨時や非常勤で働く『非正規公務員』という人たちがいるんです。」

新井
「その数が急激に増えています。こちらは、全国の市区町村の職員のうち、非正規で働く人の数と割合です。ともに年々増えていて、今や3人に1人が『非正規』です。」

 

 2018/12/19 東洋経済ONLINE

toyokeizai.net

現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「私も非正規公務員として、司書の隣接資格である社会教育主事の資格で自治体の社会教育施設で働いてきましたが、パワハラなどでうつ病になり、次年度の雇用更新申し込みを拒否されました。これからどうすればいいのでしょうか」と編集部にメールをくれた、34歳の独身男性だ。

 

2018/11/6 Yahoo! Japan

news.yahoo.co.jp

「ワーキングプア」という言葉が日本で広がったのは10年ほど前のことだった。この間、ワーキングプアの大部分を占める「非正規雇用」は公務員にも拡大。中でも、地方自治体の非正規職員は2016年、約64万3000人に達した。2005年の約45万6000人から4割以上も増え、行政の現場は今や「5人に1人が非正規」だ。低賃金で不安定な働き方は、民間の非正規労働者と変わらない、まさに「官製ワーキングプア」である。一貫してこの問題に取り組んできたNPO法人「官製ワーキングプア研究会」理事長の白石孝さん(68)にインタビューした。(藤田和恵/Yahoo!ニュース 特集編集部)

 

2020年4月から改善される、のか?(おそらくされない)

この悲惨な現状は、2020年4月に「会計年度任用職員制度」という新制度が施行されることにより改善されることとなっています。

 

mainichi.jp

 2020年4月から、自治体で働く、いわゆる非正規公務員の制度が変わる。新制度の名は「会計年度任用職員制度」。これまで、事務補助員、看護師、保育士、図書館司書、給食調理員といった人たちは、自治体ごとに臨時職員や非常勤職員(嘱託職員)など、さまざまな処遇にされてきたが、新制度の施行で法的根拠が整理される。

 

ところが・・、この制度を易しく説明しているサイトが見当たらないのと、この制度は別に改善でもないのではという見方も出ています。

 

www.kobe-np.co.jp

 20年度からは非正規職員が、新たに創設される「会計年度任用職員」に移行。民間企業の「同一労働同一賃金」を目指す政府方針を踏まえ、常勤職員並みの給料水準と期末手当の支給が自治体に義務付けられる。

 

本当に義務付けられているのならいいのですが、実際の法改正の内容まで見ていると、そんなことはどこにも書いていないのです。

 

地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律の運用について(平成29年6月28日総行公第87号・総行給第33号)| 総務省 (PDFファイル)

第1 会計年度任用職員に対する給付(第203条の2及び第204条関係)

フルタイムの会計年度任用職員については、給料、旅費及び一定の手当の
支給対象とし、パートタイムの会計年度任用職員については、報酬、費用弁償及び期末手当の支給対象とするものであること。

 会計年度任用職員に対する給与については、フルタイム、パートタイムにかかわらず、新地方公務員法第24条に規定する職務給の原則、均衡の原則等に基づき、従事する職務の内容や責任の程度、在勤する地域等に十分留意しつつ、地域の実情等を踏まえ適切に定めるべきものであること。

 また、通勤に係る費用については、平成26年7月4日付総務省自治行政局公務員部長通知「臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等について」(総行公第59号)では費用弁償として支給できることを示していたが、通勤手当又は費用弁償として、適切に支給すべきものであること。加えて、時間外勤務手当又はこれに相当する報酬については、正規の勤務時間を超えて勤務することを命じた場合には、適切に支給すべきものであること。

 さらに、期末手当については、適正な任用・勤務条件を確保するという改正法の趣旨や、国の非常勤職員において期末手当の支給が進んでいることを踏まえると、適切に支給すべきものであること。また、期末手当の具体的な支給方法については、常勤の職員との権衡なども踏まえつつ、制度の詳細について検討することとしていること。

 また、今後、国の非常勤職員の取扱い等を踏まえ、支給すべき手当等について明示する考えであるが、それ以外の手当については支給しないことを基本とすべきであること。

 

お時間のある方はPDFファイル全文を見て頂ければと思いますが、どこにも義務とは書かれていないのですね。

「適切に支給」のオンパレードであり、何が適切かを定めていないので、環境改善になると見るのは乱暴だと思います。

 

また、決定的なツッコミポイントが存在していまして・・。

 

www.jichiken.jp

給料水準の考え方は、「マニュアル」では「類似職務の級の初号給、職務の内容や責任、必要となる知識、技術及び職務経験等の要素を考慮し」となっています。また、再度の任用にあたっては、「常勤職員の初任給決定基準や昇給の制度との均衡を考慮することが適当」(「マニュアル」Q&A)としています。しかし、一方では「それまでの職務経験すべてを考慮する必要はない」として、事務補助職員については、正規職員の初任給基準額を上限目安としています。

「マニュアル」では「同一労働同一賃金ガイドライン案を踏まえ」としていますが、正規・非正規の差は厳然と残され固定化されます。期末手当や退職手当(フルタイムのみ)については「支給できる」とされており、自治体が財政難を理由に支給しないことも考えられます。

さらに、「マニュアル」では、任用根拠の明確化・適正化のなかで、「ICTの活用や民間委託の推進等により(中略)現に存在する職を漫然と存続するのではなく、それぞれの必要性を十分吟味したうえで適正な人員配置に努める」よう求めています。今回の会計年度任用職員の導入が、自治体業務のアウトソーシング拡大と、それによる臨時・非常勤職員の削減につながる懸念があります。すでに、新潟市では財政赤字を理由に2018年度予算で、約1200もの事業見直しとともに、120名もの臨時・非常勤職員を削減するとしました。

 

このように、給与水準は明らかに低いままですし、昇給も保証されていません。自治体によって期末手当・退職手当がないこともありえますし、民間へのアウトソーシングによりそもそも職場が消滅することだってあり得るとの内容です。

これでは改善とは全く呼べません。基準もあいまいだし罰則規定がないのです。

現実に官製ワーキングプアと言われる状況が拡大していること。2020年4月より新制度が始まるが、結局は現実追認の体であり単に法を整備しただけにしか過ぎないこと。かつ、民間へのアウトソーシング拡大とともに職場の永続性も保証されないこと。

また、派遣社員とは違うので「無期転換ルール」は適用されないこと。

 

www.zenso.or.jp

6 会計年度任用職員には労働契約法の「無期雇用転換ルール」は適用されない

労働契約法は公務員には適用されないので2018年(平成30年)4月から実施の「無期転換ルール」は適用されません。

 

「働き方改革」と言う言葉ばかりが躍りますが、それを支える自治体自体がこのような状況です。これ以上ワーキングプアを生産しないためには、最低時給が生活できる程度まで引き上げる必要があるようです。

やりがい搾取を公共団体がモリモリやっているというのはなかなかショッキングな状況ではないでしょうか。歯止めが必要です。