orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

「クラウドは思ったより安くないねえ」

 

「クラウドに持って行ったら安くなるって聴いてたけど、見積の金額は安くないねえ」って嫌味を言われた記憶、振り返ると10年前からだ。2013年くらいはクラウド、と言ってもバズワードっぽくて、自前のデータセンターに仮想環境を構えてインターネットにつないだらクラウドと言えなくもない、みたいな適当な時代だったけれど。

なんでクラウドに持っていくか、と言う話は今と、昔とでは違うということは認識しておくべきだ。

昔は、1台の物理サーバーに、たくさんの顧客が同時に仮想サーバーを載せれば、余っている資源を効率よく使えるから経済的だよね、と言う発想だった。また、データセンターやインターネット回線、構内回線含めて、自前でデータセンターを借りて設置するよりも、クラウドベンダーが管理してくれるから、利用だけに集中できる、と。

計算的には、資源効率の良さと、クラウドの仕組み側にかかるコストをミックスし、かつ使った分だけ課金、を徹底することで、利用方法によってはお安くなる上に、便利、という立て付けだった。

それは10年経っても変わっていないが、一方でオンプレミス、つまり自前で設備を借りたり買ったりして使うやり方の方がむしろ頑張った。クラウドに対するコスト競争力と、クラウド並みの手軽さが備わったと思う。ハードウェアベンダーもクラウドに負けないよう利便性と安定性、そしてコストパフォーマンスを磨いたのだ。

クラウド側は円安も進み、値段としても安いとは言えなくなってきたこともあり、どう構成を組み合わせても「お安いですね!」とはならない。後、クラウドの利用を続けて来た人ならわかると思うが、案外「起ち上げっぱなし」のシステムは多い。昼は利用者が使い夜はバッチプログラムが動いたりして、一日中動かさなければならず、クラウドだから使わない時間は止めて費用節約、みたいな目論見もあまり機能していないと思う。

ECなど一般ユーザー向けのシステムなら、忙しい時と暇なときで台数を変える方法は有効だが、一般的なシステムは、そんなに忙しくもならなければ暇な時もない。安定が求められるので、止めたり起動したりもしない。そういうシステム達はクラウドの良さをコスト面では活かせない。

現在はクラウドを利用するケースは、コスト削減というよりは運用の手間を減らすため、という側面が強い。資産を持たなくて、サービス利用料だけ支払えばいいスタイルにして、人手も余りかけず利用だけをしていたい。そういうニーズのためのものになっている。

また、クラウドネイティブと言われる、クラウドでのみ動くサービスでシステムを組み上げる方法も、もちろんクラウド向きだ。素早く構築でき素早くサービスでき、利用状況によって増強も簡単にできる。

このような状況では「全てをクラウドに」というのは既に**時代遅れ**なんじゃないかと思っている。向き不向きに合わせて、データセンターとクラウドをつないで、効果的に配置すること、「ハイブリッドクラウド」の設計が最も、企業のITとマッチングするというのが2023年の現在地である。

この10年を振り返りながら、でも、「クラウドは思ったより安くないねえ」と戦わなければいけないのは変わっていないのがとても面白い。はい、10年前からその通りです。そしてこれからもそうでしょう。