orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

親会社の都合で作られたIT子会社が機能しない理由

 

IT子会社についての調査記事が興味深かった。

 

japan.zdnet.com

 ガートナージャパンは10月5日、国内のIT子会社の実情に関する調査結果を発表した。これによると、IT子会社設立の主な理由はコスト削減であることが明らかになった。

 

一時期、内製がやや流行って、親会社がIT子会社を再吸収して内製グループを作る、という動きが流行ったがどうも一時的な動きに留まるようだ。この調査結果を見ても分かる通り、企業が内部にIT部門を持つことはコストがかかるらしい。

私自身は子会社で働いたことはないが、常々、あの立場はやる気が出ないだろうなと思っていた。親会社の仕事をしていれば身分が保証される立場だ。そこに競争もないので、安定はするけれど成長しないと切られる焦燥感が生まれない。他の会社は普通に競合他社と客を奪い合っているので、次の飯のタネを作るのに必死である。この落差が一年、二年と経つ間に差が広がり、親会社は子会社に不満を持ってしまうのだろうな、と思う。

子会社においては、親会社が最大の取引先になるので、親会社の満足度を常に気にしなければいけない。しかし、会社名は似たような名前は付いているし、元々社内部署だったこともあって関係も深いので、甘えが生じてしまう。いざとなったら助けてくれるだろう、とも。

親子関係だと、親に子が提案するのに気が引けてしまうのもわかる。失敗してヤブヘビになったら責任も取らされる。

だから、言われたことをやるモードに子会社はなりがちで、親会社からみて受け身に見える。子会社は、言われたことちゃんとやってるでしょ、と一人で満足してしまう。

他の会社に仕事を取られることがないので、先進技術を習得することにモチベーションがないし、最悪でも詳しい会社を連れてきてやってもらえばいい、というIT子会社にあるまじき発想となってしまう。

競争がない環境だと、スピード感より、正しく期日までやることが求められる。ガツガツしないので、のんびりやりがちだし、それでも仕事はあると思い込んでいる。

他社との競争がないと価格で負けるという体験がないので、コスト見積を何かと高く出しがちになる。

そんな会社に高度な人材が集まるべくもなく、人材不足にいつも悩むことになる。

こういったところか。

親会社の中で内製化グループを作ると高くつくので子会社化する。子会社化すると受け身になって前向きに対応しなくなり技術が伸びなくなり成長しなくなる。だから吸収合併して内製化し、主体的な部門を作る・・と、完全にループしているではないか。次はまたコスト増を理由としての子会社化である。

ここまで来るともう、組織論の問題ではないことがわかる。

むしろ、完全に親会社にも子会社にもIT部門の機能を持たせないで、毎回アウトソーシングしてやってもらったらどうか。親会社にはベンダーコントロールだけ行える社員だけおいておけばいいのである。

いや、自社でデジタル人材を揃えて限りなく内製化していかないと、庇(ひさし)を貸して母屋(おもや)を取られる、だ。デジタルでの意思決定とソフトウェア作り、そしてデータの蓄積が経営を決めるという昨今よく言われる提言の通り、デジタルを全部外だししたら、意思決定ができなくなる。したとしても「あのベンダー次もやってくれるかな」とビクビクしないといけなくなる。主体性がどんどん失われる。

ここはもう、決めの問題だ。コストがかかるのが当然と割り切って親会社内にIT部門を作るか、それとも完全にアウトソーシングすることを決め込むか。

どちらにしろ子会社は機能しないよね、というのはわかる。