orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

雑な思考が求められるとき

 

事業を一から起ち上げるとき、あまりリスクは取りたくないので、少数精鋭でまず起ち上げるとする。事業が幸運にも右肩上がりの成長を始めたとき、段々と人手は足りなくなる。ただ、少数精鋭なものだから人を一人増やすだけでも人件費としては重い。事業をもう少し大きくして、完全に利が乗ってから人を増やす。

このように、リスクを取らず利益優先で人員計画を作ると、どうしても人を入れるタイミングが遅くなる。

ところが、人を増やさない戦略が行き過ぎると、一人一人の仕事が重要になり過ぎてしまう。彼が辞めたら事業が終わる、くらいの状況が生まれる。属人化、の問題である。

一度始めた事業は顧客がいることなので辞めることは基本的にはできない。期待を頂いて仕事をしているのだから期待を裏切ることは事業停止以上に痛手だ。信用問題だ。会社は、二度とつきあってもらえなくなることだろう。

もし、事業に将来が見えて、そして属人化の問題を排除するためには、どうしても一度冗長に人を雇い入れなければいけない。一時的には人余りが起きるため、利益が犠牲になってしまう。けれども、人を増やさずここで事業が大きくなることを先にすると、もっと属人化は高まってしまう。人が足りない状態で更に仕事が降ってくるのだから、人をそこで入れても育てる余裕すらなくなってしまう。

売上、原価、利益の関係を計算していると、人を増やしたくない気持ちに駆られる。少数精鋭だと生産性の数字は高くなる。一人一人が活躍しているから当然だ。活躍の裏側で、一人抜けた時のダメージが高止まりする。それでは、特に事業の成長が中規模以上になると、リスクもその分大きくなる。物事が大きすぎて小手先で交わせなくなるからだ。

 

一時的に人が暇になってもいいから、とにかく人を増やす。増やしてから考える。仕事はきっと来るだろう。これはもう、勘の世界であり、雑さが必要なのではないか。緻密に考えれば考えるほど、一人一人をより働かせて利益を絞り出す未来を書いてしまう。しかしそれでは「今後雑に仕事が増えた時」に対応できないのだ。人々に余裕がないのだから。

未来なんて見通せない。見通せないなりに未来に希望が持てる状況が揃ってきているのなら、もしくはもうほぼ感覚のみで、人を増やす決定を雑にしなければいけない時はあるのだな、と思っている。

この雑な決定、必要なのになかなか会社では難しい。決定には根拠とロジックが求められるからだ。実際なところ、ほとんどの人が「でっちあげ」てるんじゃないだろうか。何となく納得できるような理由を後付けで考える。そうでもしないと、なんとなく、なんて報告した日には自分自身が雑に対処されかねないだろう。

 

世の中のいろんな行動が、どれだけ雑に決定されているのか。私の体感的には、結構な決定が雑さをはらんでいるのではないか・・と思う。そしてその雑さの裏で、無理やりもっともらしい理由を考え作文してるんじゃないか。

なかなか、科学的な思考は万能じゃない。なぜなら未来は想定外にありふれているからだ。雑を受け入れなければいけない。雑でも最善を引けるようにしなければいけない。だからこそ、こんなにデータサイエンスのような、たくさんの過去情報から未来を推測する技術に注目が集まっているんだろうけど。しかしどこまで行っても、雑な思考は求められる。