ある要件があるとする。
提供者は、要件を満たす代わりにこれだけのお金を頂く、という提案(見積)を顧客にする。
顧客がこの提案を受け入れ、提供者へ注文をする。
ここで契約成立。
提供者が約束通り、要件を満たす。
顧客が満たしたものを受け取り、顧客へお金を支払う。
これがざっくりとしたビジネスの在り方だ。
契約を行った上で、約束を満たしたらお金が移動する。
たまに、その提案内容と金額が釣り合わない場合がある。要件に対して高額だったり、もしくは低額だったりする。この差が度々議論になる。
低額の場合は、顧客の信用が提供者にない場合だ。安い金額でも提供者が受け入れる理由は、信頼作りであることが多い。この提供者は信用できる、ぜひお任せしたいとなるまでの実績作りで、まず安く請けることがある。
高額の場合もある。
なぜ、そんな要件で、そんな金額を顧客は支払うのですか?。
・・なんていう質問を私も何度か頂いたことがある。
単に顧客がお金持ちで金銭感覚が違うから、と思ったときもあった。
しかし、ビジネスを続けるとそうではないことがわかってきた。
実際に手を動かしてみると要件が、提案したときの見込みと変わるときがある。実はこういうことが必要だった、制約が見つかった・・など。ただ、予算は決まっていて、いろんな未知の問題に対して都度金額をブレさせることができない。
できれば、当初の提案金額のままやってくれないか・・ということを見込んだ金額が含まれた結果、高い金額が提示されている場合が多々ある。
それなら、できるだけ未知の問題を発生させずに、スマートに完了すれば高い利益が見込める‥それは正しい。一方、未知というぐらいだから、始めてから課題や習性が見つかることもあり、完全な対策はない。だから、提案時から想定外が発生しないよう、提案側がリードする必要がある。顧客の要望と、現在の技術的制約をうまく調和し、予算内で実現できる仕組みへ導ける信頼を得ているから、値段が高いのだ、と。
顧客は知っている。プロジェクト途中で妙な問題が生まれ頓挫する方が、かえって高くつく、と。この提供者に依頼すれば、想定外を発生させないでうまく、目的を叶えてくれる。しかも、できれば、追加料金なしに・・。
ビジネスに長らく携わっている人は、要件が増えればその分お金を頂くべきだ、と思うだろう。そう考えて当然だと思う。ただし、顧客自身が要件自体をよくわかっていない場合もある。よくわからないまま受注してしまい、やってみたら右往左往する分を、後から請求もできない。だからこそ、受注前にしっかり要件を整理しておくことは大事だけれども、それでも、それでも要件は後から変わるものである。
その変わることをできるだけ発生させないか、発生しても何とか提供者側で、追加費用が発生ない形でなんとかしてくれることに、お金を支払っている気がするのである。
まさに、言葉にすれば「安心感」。一見料金が高いように見えて、あの業者に発注すれば、要件が後から変わったとしても柔軟に対応してくれる。いろいろと楽なので、またあの業者に頼もう。となる。
技術者の立場だと、人月やら技術料やらの積み重ねしか物差しが無い。顧客は、その目的が達成される価値に対して金額を支払うので、提供者はこのギャップがビジネスとなっているのである。