いつも苦難ばかりという環境においては、油断は起こらない。
油断が起こるのは総じて、自信の過剰、つまり過信から生まれる。
経験上、よくある油断を挙げていく。
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運が良かったで済ませる油断
いろんなことがうまく行っているときに、ヒヤりとすることが起きることがある。自分の不注意だったり油断だったりを、問題発生前に気が付いてほっとする。
ここで、運が良かった、で済ませてはいけない。これは大きな問題が起こることを知らせてくれるアラームだと思う。なぜそれが起きたのかを考え、再発防止を今後確実に行わなければいけない。
また、うまく行っていること自体が、油断を誘発していることも十分に考えられる。危ない状況が起こるということは、運がいいからうまく行っているだけ、という証明にもなる。
重大な問題がいきなり起こることは稀で、何かのシグナルが前にあると考えるのが自然だ。そのシグナルを見た時に「たまたま」ということでないことにする性質が人間にはある。
運よく、シグナルに気が付けたのであれば、そこでもう徹底的に対策を行うことができると思うべきである。そうじゃなければ運の良さは活かせていない。反省をせず、運で済ませてしまうのが油断だ。
うまく行くことに慣れ過ぎる油断
うまく行く、と感じる場合はたいてい、仕事の方法がルーティーン化している。大部分がマニュアル化され、ある程度の想定外発生の場合の手順も決められている。
幅広い状況を事前に考えて対策を決めておく。責任範囲を決める。手堅い組織づくりで問題を消しこんでいき、そしていつしか安定するようになる。
この安定が長く長く続いたときに、人々には油断が訪れる。誰も工夫しなくなり、何かあれば前例にとらわれるようになる。ルールを変えることを強く拒み、保守的になる。
こういった環境で、永遠にうまく行くと慢心が走ると人々は柔軟性を失っていく。ある日突然大きな環境の変化が起こったときに、ルーティーンを変える方法がわからない。
あまりにも今のやり方がうまく行くという自信が過信に変わり、大きな変化に対する対応の仕方を皆がわからない。
油断は、油断しやすい人が起こすのではなく、環境が誘発していると思う。
反省しづらくなる油断
長いことうまく行っている組織では、事故も起こりづらいので、反省の機会が生まれにくい。小さな失敗を繰り返して改善していくフェーズでは、その度に反省があるので組織は成長する。しかし、成長し、小さな失敗すら起きなくなったら、段々と今が一番素晴らしいという思いこみが発生する。人に注意したり反省を促すプロセス自体も、嫌がるようになる。それより今の人間関係を優先し出す。
そうなったときに、何か小さな失敗が起ころうものなら、もみ消しがちとなる。その後に起こる面倒ないつもやっていない「反省」を回避したくなるからだ。
ストレスや緊張に弱くなる。反省しないのが当たり前ということに話がすり替わり、何か予見的なシグナルが起こっても、無かったことにする。
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ここ最近の私は、うまく行っていると自分でも思うので、多分にこういった要素で油断が生まれている。だからこそ一度、油断のメカニズムを言語化してみた。
ここで、一度、気を引き締めたいと思っている。