orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

企業の品質管理が年々悪くなっていく現象について

 

このごろ、やたら企業の品質問題が頻発しているような気がしている。今日も、こんなことがあったようだ。

 

ibarakinews.jp

27日午前6時56分ごろ、茨城県神栖市東和田のガラス大手「AGC」の鹿島工場内で、塩酸が貯蔵タンクから漏れる事故があった。同社によると、漏出量は最大1200トンという。鹿島地方消防本部や同社によると、関連会社の従業員4人が喉の痛みを訴えて病院へ搬送された。

同社によると、漏出があったタンクには穴が開いていた。同社は今後、原因を調査するとともに、他のタンクに不具合がないかを確認している。

 

この前も、似たような話を聴いた。

 

www.yomiuri.co.jp

 日本製鉄は18日、千葉県君津市の「東日本製鉄所君津地区」で、排水口から有害物質のシアンが検出されたにもかかわらず、県に対し、検出されていなかったなどと不適切な報告をしていたことを明らかにした。不適切な報告は今月までの過去5年間で計41回に上る。県はこの日、製鉄所を立ち入り検査し、事実関係を調べている。

 

その他、いろいろ、大企業の品質問題が大量に起きていて枚挙に暇がない。

この品質問題の原因だが、気の緩みやモラル低下がよく原因として挙げられがちだ。ただ、そうだとすると、日本全体で気が緩み、日本全体でモラルが低下しているとでも言うのか。そもそも日本を代表する大企業が次々と・・である。大企業は人が変わっても品質を保ち継続性を持つ体力があるのではなかったのか。

1つの仮説を持っている。大企業は歴史があるが、実は戦後から素晴らしいプロダクトを作り上げよい品質を保つことは、属人的だったのではないか。老練な職人が現役であった時代は品質が保たれていた。マニュアル作成はしていたけれど、本当に伝えきれないような微細な判断、そしてその積み重ねからなる細々とした技術が、今のエキスパートとされる40代、50代に完全に伝わっていないのではないか。

そのために、現場で省略してはいけない部分が省略されてしまったのではないか。例えば、暗黙に引退してしまった方がやっていた細々としたメンテナンス作業が存在していたのではないか。

かつ、最近は早期退職・希望退職などもあり、ベテランが多く抜けやすい土壌が作られている。ところが経営は現場の暗黙知を知らない。単純に給与が高い、仕事へのモチベーションが低い、成長しない、などと決めつけ大事なタレントを追い出してしまう。

いわゆる職人的な、以心伝心、属人的な仕事の仕方を大企業は嫌う。社会的にも大きな責任を背負っているので、誰かがいなくなるとまわらなくなるような仕事の仕方は徹底的に排除したい。その目的のために、品質を守っていたピースが抜け落ちていくのは、本当に皮肉な話であると思う。

この話を考えたのは、IT業界においてはまだその、職人的なベテランが次々と引退する時期がまだ来ていないからである。業界自体が新しいからだが、ところがあと10年もするとそんな時期が訪れる。今の40代が卒業していくころが危ない。・・と、当事者として思う。今の20代・30代が、40代・50代のノウハウをきちんと伝承してくれるかどうか。いや、技術は進歩するし40代・50代の知識なんて10年経ったら概ね使われなくなるとお思いか。

とんでもない。

今IT業界が人気があり人間の暮らしができるようになったのは、40代50代(もしくはその上の60代)が、プロジェクトが炎上しない、ハードウェアが故障しない、ソフトウェアが異常終了しない、本番運用時に障害が起こっても影響を最小化する、いろんな知恵をあみだしたから、である。それはもう、2000年代のこの業界は恐ろしいほどの勤務状況だったのであるから。たくさん大きな会社が潰れたり、裁判が起きたり。その結果、この安定を手に入れたのは間違いない。

そして、40代50代の暗黙知、ちゃんとマニュアル化して再現可能にしてあるかというと、そうでもない。そんなことできるのであれば、どの会社も未経験者を大量に取って短期間に育てることができるだろう。それが難しいのは、やはり以心伝心の部分がまだ残るからである。

特に、ここ最近のIT業界しか見ていない人には、その、「これをやらないと大変になるんだよ」「こうすれば問題が起きないんだよ」というポイントが見えない。大変になったところを見ていないからだ。だから、何の躊躇もなく、そこにあるリスクを踏んでしまう。

そういうことが、歴史の古い製造業では先に起こっているんじゃないかと思うし、もうしばらく経ったら、IT業界の品質低下、なんて問題が起こりえるんじゃないかと危惧している。