orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

解決を金で買う炎上プロジェクトを見た

 

何十億というお金が動く開発プロジェクトが暗礁に乗り上げたときどうするか。開発規模が大きいだけに、スケジュールが遅延しだすといろんなことがうまくいかなくなる。ある作業が出来ない原因が、別の作業の遅延であり、遅延している要因が別の部門の手続き不備、コミュニケーション不足。そうやっていろんな要素が絡んでいって全体として遅延する。遅延しているときに特徴的なのが、暇な人がいること。そして帰れない。前提条件が揃わないので仕事が開始できず、でもその仕事のスケジュールはタイトである。途方にくれたってサラリーマンだし、座ってればお金はくれるので誰も何も言わないけど、そういうときにプロジェクトマネージャーは焦る。そしてプロジェクトマネージャーは客先に缶詰になりがちとなる。なぜ遅延するのか、対策は。いろいろ立ち振る舞うけれども、現場にいられないからこそ、統制も取れなくなる。帰社して、各チームのメンバーに状況を聴くけれども、表情は冴えない。

ここまではよくある話で、昔はこういう問題プロジェクトが放置され、プロジェクトが頓挫したりしてユーザーとベンダーで裁判するみたいな話がよくあった。最近ないのは、炎上しないための構築技術が純粋に高くなったのと、炎上の初期で問題を検出し、全社的に火消しに取り組むタイミングが早くなったことだ。ボヤの時点で火を消すのは大切なことで、ピンポイントでエース級を送り込み正常化させたりもする。そのほうが断然お金がかからない。

もう12年くらい前になるか、炎上まっさかりのプロジェクトにSESで参加したことがある。構築フェーズとしては設計は完了し実装中。この実装が遅々として進まなかった。その技術的原因は置いといても、そのプロジェクトのために借りられたオフィスは雑然としていた。たくさんの人がいた。でも私の会社の社員はいなかった。私の会社経由で再委託していた人はいたけど3日でいなくなった。仕事ができなかったためだろう。一方で、私は席があって座ったけれど、3日間仕事が振られなかった。仕方ないので、現場のドキュメントフォルダを探し当て、ずっと読んでいた。

普通の雰囲気じゃなかったし、周りのプロパー社員も家に帰らないので、なんとなく残ってたのだけど、それでも仕事がなかったので20時ごろに帰ったんだけど、誰も私を制御していなかった。残っていいのやら何なのやら。わからず。

その後、やっと仕事っぽいものが振ってきた。ジョブスケジューラーまわりの実装らしい。とはいえそのソフトウェアを実装したことは私もなかったけど、「わかりましたー」なんて言いながらそのソフトウェアのオンラインマニュアルを読み、ふむふむ、と言った具合で実装していった。誰もレビューしてくれなかった。でも「できた」と言われた。そしたら、ジョブスケジューラーまわりの責任者に仕立て上げられた。知らんがな。

どうもその後も、いろんな協力会社の人がどんどんやってきた。目まぐるしく増える登場人物。何をしてるのかしらないけど、この炎上プロジェクトを鎮火させるために「とりあえず人」と言う状態だったと記憶している。仕事の内容なんて来てから決める。人数を増やせ。100人日遅れてるなら、100人突っ込めば1日で終わるよね、みたいな世界をリアルに見られたのは今となっては財産である。

あれは、解決を金で買ったのだなと。高度な技術で顧客の課題を解決するのが我々の仕事なんだけど、煮詰まってくると、大量の金で自分たちの課題を解決しちゃうんだな、と。

そうやって、結構なことがお金で解決されてきた世の中だけど、ここ最近はお金があっても人がいないみたいなこともあり、さあこの手法が今でも有効かは知らない。今後、少子化の動向なんて見てると、お金はあるのに解決できないみたいなことも考えられ、「昔はよかったね、お金があれば解決できて」となるかもしれない。もしくは、お金の価値がだんだんと目減りしてきているのかもしれないが。