orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

SES会社を離れて10年、昔を思い返す

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私は10年ほど前まで大きなSES会社にいたのだけど、一つ誤解していたので整理して晒そうと思う。

大きな会社においては、誰にどんな仕事を振るかなんて悩み方はしない。とりあえずいろんな案件を拾うルートを作る。これは直接ユーザー企業から案件を頂くプライムという立場もあるが、私が経験したのは大手SIerからの案件紹介だ。いわゆる二次請けである。大手SIerが取り組む大型プロジェクトに人材を送りお金を頂くという方法だ。基本的に毎月精算で会社にお金が振り込まれるし、請負でもないので完成責任もない。大手SIerならいくつも案件は抱えているので、そこに入り込んでいく。

案件を仕入れるルートを複数持つと、それに対して人が必要になるが、全部を今いる社員でやり切れないときがあるので、外部の協力会社に相談し、その会社の社員を送ってもらう。もちろん大手SIerに再委託の件も話し管理は弊社できちんとやります、なんて調整しておくのは営業の仕事だ。

だから、案件の仕入れ先である大手SIerと、人が足りないときに手伝ってもらう協力会社、両方の開拓が重要になる。

SES会社の重要なミッションは、これに尽きる。

技術的に何に取り組むかという主体性はない。大手SIerの先にいるユーザーが何を望むかなんて知ったこっちゃない。むしろ大手SIerが何を売りたいのかを察知する能力こそ大事だ。社員には技術研修を場合によって受けさせて、より使われやすい状況を作っておく。そして、人手は有限なので、協力会社とのコミュニティーづくりも大事だ。必要な技術が社内で確保できる保証は何もない。大手SIerから見て、何らかの理由で人手が欲しい時にどんな技術要件でも親身に対応してくれるSES会社は本当にありがたい。

営業からある日見せてもらったことがあるのだが、メーリングリストを作っていた。協力会社のメールアドレスを登録し、日々案件情報をメールしていた。たくさんの案件の打診があるので、自社単独では無理だが、たくさんの協力会社がいれば手を挙げてくれるところがあるかもしれない。なお、協力会社がさらにその協力会社に話をし、再々委託みたいなことを繰り返し多重請負になりがちというのはこのあたりの話であるが今回はしない。

大きく案件情報を掴み、協力会社と広く関係を作り、そのパイを大きくしていくというのがSES会社のビジネスだったと、今になったらわかる。

そのビジョンの中において、ある技術者の単価なんてのはかなり「適当」に弾きだされる。なぜかと言うと、複数人で体制を作り、マネージャー、リーダーに高い単価を振り、メンバーレベルにはそこそこの単価を振る。その体制に対して大手SIerが支払う金額が、それぞれの人件費を上回っていればそれでいいのだ。もしマネージャー単独では赤字でも、メンバーの人数分の方で黒字であり、全体で黒字であればもちろん案件としてはGOとなる。もちろんマネージャーやリーダーに若手を登用しつつ、給与は安いなんてことができれば会社としてはラッキーだが、案件自体が炎上されても困るので、戦略が必要となる。

初めの立ち上げはベテランにやってもらい、メンバーが育ったらリーダーやマネージャーにアサインし、ベテランは去る、なんていう方法も取れる。

よく技術者は、「自分の単価を知ったら給与が安すぎてバカバカしくなった」という状況に遭遇するのだが違うのだ。どこで利益を出すかは全体を見ながら決めるので、一人の単価だけに注目するのは誤りだ。

そんな考え方をしていると、年齢が高くなった時に、「自分は給与より単価が低いかも」なんて悩むことになる。単純な切り取りならそうだけど、会社の運営としては間違っている。単体で黒字は出しにくいけど、重要なピースを担っていることは十分あり得る。

だから、SES会社においては、案件の単価を技術者にオープンにするのは、基本的にはご法度だと思う。「オレってフリーランスで独立したらいいんじゃない?」「他の会社に移った方が給与が増えるのでは」という雑音を生むことにもなる。だから、SES会社では営業と技術のセクショナリズムが激しいのだ。むしろ営業は、若い女性を取って、大手SIerに出入りさせるみたいな、今流行りのオンラインサロンみたいな手口すらあるので、技術畑とはまた違う領域である。

一方で、技術者は大手SIerとの案件の商談において技術の話ができるので、SES会社でのキャリアパスとして、営業寄りに転身する人も多い。この問題点は、優秀な技術者が営業をやってしまうことだ。優秀な技術者が優秀な営業でもある場合もあるが、何かもったいないな、だからこの会社は技術が育たないんだな、という感想を持ったこともある。

SES会社を離れたのは10年以上前だが、それこそ離れた理由が「年齢が30代になって単価が高くなり、会社における売れ残りのような存在になるのでは」だった。私にそういう印象を与えてしまった会社のミスだと思うのだが、まあ、私は転職して良かったと思うから別に何の思いもない。ただ、SES会社を離れるときには、このビジネスモデルはいつか終わる、なんて思ったものだけど、この令和の時代においてもピンピンしているので、しぶといものだな、という感想しかない。