orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

Red Hatが正したいことを想像する

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Red Hat社が、Red Hat Enterprise Linuxについて、開発者に、16台までの本番環境利用を許すというニュースを聞きました。

 

japan.zdnet.com

 Red Hatは今回の発表の冒頭で、同社がかなり以前から開発者向けの「Red Hat Developer」プログラムを通じて、CentOS Linuxの代替となるノーコスト版のRHELを提供してきたと記している。ただ、その利用条件はこれまで、1台のマシンを用いる開発者に限られていた。しかし今回、同プログラムが拡大され、RHELの「Individual Developer」サブスクリプションは、最大16の本番環境システムで利用可能になる。

 

そもそもこのプログラム自体が初耳ですが、Red Hat社とすれば、AlmaLinuxやら RockyLinuxやら、CentOSの亜種のようなものがばらまかれるのは何としても避けたいでしょうね。それじゃあ、CentOSがある状況と全く変わりません。

おそらくRed Hat社がやりたいのは、クラウド上から「CentOS」という選択肢を消し去ることだと思います。これは半ば成功したと言えます。AWSなどのパブリッククラウドでOSを選択するときに、もはやわざわざCentOS 8を選ぶ人はもういないでしょう。今年でサポート切れですからね。じゃあCentOS 7にするかというとひとつ前の世代になりますから、中のライブラリも古いものになります。したがって今後、Red Hat Enterprise Linux 8を選ぶことが増えると思います。月額のサブスクリプションなら月額料金に含まれて少額に見えるので好都合です。一方で開発用に利用するOSについては無料にすることで、開発にかかる費用をCentOSと同じように無料にできる、という仕組みです。

また、「本番環境を含む」16台、という考え方についても、スタートアップなど資金が乏しくビジネスが軌道に乗っていない場所には無償で提供するという考え方です。将来ビジネスが軌道に乗った際には、ちゃんとライセンス費用を支払ってね、ということです。

Linuxの世界におけるRed Hat社の貢献は誰も否定しようもなく、Red Hat社はきちんとビジネスをするべきだと思います。単にお金儲け、という意味ではなく、その分に応じてRed Hat社は開発者コミュニティーにかなりの対価を支払っていますからね。

 

www.redhat.com

 

毎年きちんと利益を出している大企業や老舗企業が平気な顔をしてCentOSを利用しておいて、お金を全く開発者に還元しないのはこれは頂けない。CentOSをめぐる状況をこれ以上野放しにはできないと仕掛けたのがRed Hat社のCentOS Streamの取り組みでした。しかし、終わってみればRed Hat社のユーザーへの説明不足が響き、関係上の失点になってしまったように思います。

Red Hat社のこの「16台無償」という取り組みは、この失点を取り戻す取り組みの一つに過ぎず今後も施策を発表するそうで、楽しみにしています。私はこれまでのCentOSを実質無くすことを単にRed Hat社がマネタイズのためにやっているとは思いません。きちんと利用に対して対価を徴収し、フリーライドを防ぎ、開発者コミュニティーに資金を還元する。この仕組みを正しく作り上げることが使命だと思っているはずで、その一環としては正しいことをしていると思います。

やっぱりね、誰かが作った便利なものをいくら使ってもタダ、というのはおかしいものです。