Docker社の不振
世の中、ドッカーDockerと技術者が言い始めて随分経ちますけれども、その生みの親であるDocker社自体が資金難という記事がアメリカで出ております。
(日本語訳)
Dockerは、コンテナー技術の代表的な産物であるのですが、一方で企業であるDocker はトラブルの最中にあります。リークしたメモによると、Docker CEO Rob Beardenは「大きな課題をもたらす不確実性」と「過去数週間の不明瞭な状態」に耐えている社員を称賛しました。
何についての明確性の欠如なのでしょう?
同社の近くの情報筋によるとそれはシンプルだという。
Dockerにはもっとお金が必要なのだ。
(日本語訳)
今週、Docker CEOのRob Beardenが従業員にメールを送って、会社が資金を集めようとする挑戦を認めました。
Beardenは、彼の前の会社HortonworksがClouderaと合併した後、今年初めにDockerの4番目のCEOになりました。
オープンソース企業のElasticやMongoDBとは異なり、Dockerは実用的なビジネスモデルを見つけるのに苦労しています。
コンテナは、企業のインフラ基盤に間違いなく革命を起こすとされていますし、マイクロサービスの考え方はたくさんの人々が指示しています。開発者はDockerの導入で、開発環境の可搬性が非常に上がり便利になったのを知っています。
しかし、たくさんの人々が気が付く必要があります。Docker社にお金を支払った経験がある人がどれだけいるのかと。エンタープライズ環境でマネタイズしようとしていたDocker社。例えばVMwareやRedHatがそうしたように、個人レベルでは無償で配り企業レベルではライセンスビジネスに特化して大企業に成長した。しかしKubernetesによってその夢は挫折し、むしろDocker自身がKubernetesを採用しなければいけない状況に追い込まれました。
たくさんの人々がDockerをコンテナと同じ意味で使っているにもかかわらず、当のコンテナ技術は標準化されDocker社ではなくても実装できるようになってしまっています。少なくともクライアントベースのシェアを失いたくないDocker社は、クライアントでのDockerのリリースを続けていますけれども、結局マネタイズするタイミングを逸しているように見えます。
「Arukas」サービス提供終了
さくらインターネットが、Dockerベースのホスティングサービスを運用していたのはご存知でしょうか。
まさにDocker不振が伝えられたその日に、さくらインターネットが終了のサービスリリースを出しました。
お客さま各位
平素よりさくらインターネットに格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。2020年1月31日(金)をもちまして、コンテナ型仮想化技術「Docker」を利用したホスティングサービス「Arukas」の提供を終了いたします。併せて、新規お申込み受付につきましては、本日2019年9月30日(月)をもって終了いたします。
「Arukas」にご登録のお客さまのデータは、サービス終了後に削除いたします。ご利用中のお客さまにおかれましては、詳細をメールにてご案内いたしますので、ご確認いただきますようお願いいたします。
このたびは多大なるご迷惑をおかけいたしますことを心より深くお詫び申し上げます。
さくらインターネットでは、今後もよりよいサービスの提供が行えますよう、精一杯努めてまいります。引き続き変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
ホスティングサービスでもクラウドでも、サービス終了となればその上のデータは消え去ります。きっと採用していた企業は大慌てだと思います。むしろサービス終了に気が付かずある日システムにつながらなくなり、大慌てというタイプもいるんだろうと思います。
過去私もWebサービスの終焉に立ち会ったことが何度かありますが、面白いのがWebサービス自体のコンテンツ更新が1年以上止まっているのに、課金し続けているユーザーが少なくない人数いることです。多分解約を忘れているのでしょう。人間、そんなところでお金を失ってるんだなあと感心したものですが、まあArukasが終わるよ、ということとシステムオーナーがどこまで密に結合しているかは終わってみれば分かるのだろうと思います。
Arukus自体もかなり成長したサービスだったように記憶しています。
Arukasは、これまで無料で利用できるオープンβテストを実施しており、3月26日の正式提供時点で約10,000ユーザーの登録となりました。さくらインターネットは、「やりたいことをできるに変える」の理念のもと、本サービスの提供を通じて、お客さまの実現したいシステム開発を支援してまいります。
正式サービス開始から2年と持たないのですから、技術の移り変わりは残酷極まりないという感想です。何度もこのブログにて、「インフラ基盤は枯れた技術でちょうどいい」と言い続けていますけれども、Dockerレベルでこのような状況となるとこれは本当に新技術には警戒しないといけないなと思います。
Kubernetesが天下を取るにしても、クライアントサイドでKubernetesを動かすのはまだハードルがありそもそもDocker超使いやすいし、のような状況です。一方でDockerではないコンテナランタイムもたくさん出てきていて混沌としているように見えます。詳しくは以下の記事をご参照ください。
100年続く基盤技術はないけれど
一青窈さんの「ハナミズキ」の歌詞で、
~君と好きな人が 百年続きますように~
とありますが、インフラ基盤が100年続くわけはありません。そもそもコンピュータシステム自体が100年経っていません。
むしろ2年でどうにかなる世界です。
そしてインフラエンジニアは、5年使えるインフラ基盤を提案するようにいつも命じられます。むしろ5年と言わず10年でも動いてほしい。
だからこぞって、AWSなどのパブリッククラウドに移り、永続性を担保しようとします。ただ万能でもありません。
技術の素晴らしさだけでついつい採用してしまわないように、製品選択を行なう場合は注意しなければいけないと思います。なぜこのプロジェクト/会社は今の最新技術を採用しないで、旧来のままなのか。深い理由があるのかもしれません。