技術者が転職するリスクについて具体例を1つ挙げたい
技術者が転職するリスクについてはいろんなサイトで語られているのもあり、実体験に基づいて、1つだけ珍しい話をしておきたいと思います。
高い技術を持つ会社に入って成長したい!という転職パターンは20代くらいの若手なら通用します。しかし30代を超えてくると、今自分が持っている技術を必要としている会社に行って高い評価を受けたい!、という方が王道だと思います。
この、王道パターンで転職した場合で、思惑通り高評価を受けたときに、リスクがあるのです。
中途採用を応募する現場には必ず課題がある
中途採用をしたい会社で、技術を欲しがっている会社の現場は大体において、問題を抱えています。それはマネジメントの問題かもしれません。開発の現場ならばこれまで構築してきたソフトウェアの作りが悪いのかもしれません。インフラ運用の現場ならば運用設計やインフラ基盤設計が悪くて、それが何十本か立ったときにメンバーが疲弊しているのかもしれません。このように、いくら転職活動のときにその会社の外観や経営者のキラキラトークがあったとしても、中途採用を入れたい現場には何らかの課題があることが多いと考えています。
もちろん、優れたビジネスモデルのもとに、成長期を迎え単に優れた人を増強したいというパターンもありますので全てではないと思います。ただ傾向としては、全く問題がないのに中途採用を入れようということはないのではないかと思います。
気を付けなければいけない1つのパターン
課題を持つ現場に対して、当初の数か月である程度の是正処置をして、「おお、あいつはできるやつだな」と思われたとします。
ここまでは成功談ですが、ここからがリスクです。上手くいきだすと、マネージャーレベルに引き上げられます。あいつに任せとけば万事うまくいくみたいな雰囲気ができます。これが危険です。少し説明が長くなりました。この
中途入社 → 是正措置 → 高評価 → マネージャーへ格上げ
というこのパターンは大変リスクがあることを共有しておきたいのです。
この是正措置において、課題が100%解決することは絶対にありえないのです。悪い流れを食い止めることと、根絶することとは全く関係がないです。
ビジネスがうまくいくことと、現場の運用設計がうまくいくことは、あまり相関していないのではないかと思うことがあります。だいたいビジネスがうまくいきだすときは3年くらいで急成長します。この3年の間は売上・利益ともに右肩上がりなので、現場の人々もどんなに忙しくなろうがドーパミンみたいなものが出て、なんとか組み上げてしまいます。もしゆっくり設計し構築したなら、絶対そうはしないよね、みたいなことが次々と起こってしまうのが成長期です。日本で言えば高度成長期の会社なんてそんな感じだったんだろうと思います。課長島耕作なんか読むと、当時のサラリーマンは無茶苦茶やってます。
さて、私が転職したときも、そういう無茶苦茶な設計・運用をしているシステムが多数ありました。なんでそうなった?、でももう動いているのです。
成長期が止まり、いわゆる無茶が連なったこれらの問題の数々を、一人の中途採用者が応急措置をしたところで、解決するはずがないのです。しかし、マネージャーになってしまうと、責任を負わなければいけなくなってしまうのです。
その後、どうなるか。問題は次々と頻発します。ああ、転職なんてするんじゃなかった、となります。
具体的にどうするか
上記のストーリーは、実は日本全国でよく発生しているのではないかと思うんです。取引先で中途採用で着任し結構よくできる人だったのに退職されるパターンを見ているからです。できる人ほど陥りやすいのではないかということです。できるばっかりに、多大な負債の責を負う。技術的負債という言葉を作った人は偉いと思うのですが、本当に技術者は負債を作ってマネージャーにぶん投げてきます。
具体的にどうすればいいか。どうすればよかったか。
悪いアーキテクトはすぐにでも廃し、自分が信じる新しいアーキテクトに切り替えることを徹底すべきと思います。
自分が知らないこれまで作ってあったものは、すべてゴミに捨てる気持ちで、新しいアーキテクトに載せ替える。
それぐらいやらないと、責任なんて負えません。
一方で、上記をやると新しい問題が出てきます。現存メンバーの反発です。ひどいアーキテクトでも、作った人は愛着があるのです。彼らをないがしろにすることにもなります。
組織が割れたり、もしくは退職する人まで出てきます。
私はそれでもやりきるべきだと思いますが、ここからは経営者判断ということになります。新しいアーキテクトと、古いアーキテクトで部署を分ける、という判断もありうると思います。
ドロドロした話だと思いますが、すごくよくある話です。
過去事例
自分の経験から話を作ったのにどこかで聞いたような話だなと思ったら、思い出しました。
退職の連鎖が広がった。新しい人事や評価制度への反発もあり、結局3年間で社員100人中47人が退職したのだ。
トランプ大統領だって当初の周辺の幹部はどんどん辞めさせてますし、急激に何か変えようとすると人は反発するよなあ・・。で、そこに耐えうる自分かどうか?というところはリスク要素として必ず取り上げてほしいなあと思います。
こちらの本、上記記事、南福岡自動車学校の話です。
スーツを脱げ、タイツを着ろ! ―――非常識な社長が成功させた経営改革