orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

「ナッジ」理論がビジネスで大流行する?

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ナッジとは?

また新しいキーワードが出てまいりました。

AI、IoT、RPAと小難しい言葉が流行していますが、今回は「ナッジ」です。ただ今回はIT関連じゃないのでご注意を。

 

www.nikkei.com

政策現場で「ナッジ」と呼ばれる手法が広がり始めた。行動科学の知見を生かし、文書の文面を変えるといった心理に働きかけるちょっとした工夫で人々を動かすことを狙う。補助金や規制などの従来の手法よりコストも手間もかからず、中央省庁や地方自治体の期待は大きい。

 

政治の世界ではIT自体は主役ではなく、国民を正しくリードすることが主役ですからそれにつながる理論は政府も敏感です。

このナッジと呼ばれる手法について、関連記事をまとめましたのでご参考になればと思います。

 

関連記事

 

日本経済新聞(2017/12/28)

www.nikkei.com

環境省は人の心理に働きかけて行動を変える「行動科学」を使い、高齢者が普段の生活で出す二酸化炭素(CO2)を減らす実証事業をこのほど始めた。自治体の公共施設に高齢者が集まるように後押しし、自宅で冷暖房や照明に使う電気を節約する。病院の業務部門など他の取り組みとの合計で2021年度までに年間数十万トンのCO2削減を狙う。

 

ナッジ自体は2017年のノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大のリチャード・セイラー教授が理論化したものです。その内容はすでに上記のように早々に政策に取り入れられ現在に至るというわけです。

 

週刊医学会新聞(2019/6/24)

www.igaku-shoin.co.jp

 職場の残業時間を減らそうと定時の退勤を呼び掛けてもいまひとつ効果が現れない。でもこれ以上,人手は増やせない――。

 適切な労務管理や健康支援,ワーク・ライフ・バランスやキャリア形成など,働きやすい職場環境の整備に向け,医療機関とその管理者は日々試行錯誤を重ねていることでしょう。職場ごとのさまざまな課題を前に,改善の有効な一手はないものでしょうか。

 そのような期待に応える新たな政策手法として今注目を集めるのが,行動経済学の知見に基づき人の特性を利用した「ナッジ」(MEMO)1)です。本紙対談では,行動経済学の医療への応用について『医療現場の行動経済学』(東洋経済新報社)にまとめた行動経済学者の大竹文雄氏と,医療勤務環境改善にナッジの利用を提案する小池智子氏が,職場・職種の特性に応じたナッジの選択と設計について検討しました。改善に向け,そっと背中を押してくれるアイデアとは?

 

かなり具体的なナッジ理論の応用がまとめられていて、良い記事です。人間の行動を変えるきっかけを作ることで、実際の結果が大きく変わっていくというナッジの目的を学ぶのに有用です。

特にITではなかなか生産性向上がやりにくい、医療・介護・教育・地方自治などの分野で効率を上げている様子です。IT業界にいると何でも自動化の方向に持っていこうとするのですが、人間の行動を最適化する考え方も持っておくと、相乗効果が期待できると思います。

例えば、ポップアップやWEBの文言一つとっても、ナッジ理論を応用すればユーザーの行動を誘導する品質が向上しそうです。

システム設計の上流工程から活躍しそうなナッジ理論です。

 

Yahoo!ニュース(2019/6/12)

news.yahoo.co.jp

5月21日、経済産業省(METI)はナッジユニットを設置すると発表した。イギリスやアメリカ等ではすでに先行事例があるナッジの政策応用について、その費用対効果を検証した論文があるので、そのひとつを紹介したい。

 

こちらは外国でのナッジの事例についてまとまった記事です。

ナッジ理論はより良く利用すれば良い結果がもたらされるものの、悪意を持って利用することもできると言います。スラッジと呼んでいますが確かにこの点は重要です。本質的に何を目的とするかを見逃さないことが重要だと思います。

 

JIJI.COM(2019/5/4)

www.jiji.com

働き方改革関連法が4月1日に施行され、罰則付きの残業時間の上限規制が始まった。国家公務員についても民間企業と同等の上限規制が人事院規則で定められ、24時間体制で事件・事故に備える警察でもワークライフバランスの向上が急務となっている。
 警察庁中部管区警察局の岐阜県情報通信部は2017年5月から、ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授が提唱する行動経済学の理論「ナッジ(nudge、そっと後押しする)」を用いて休暇取得を増やす取り組みを実施。成果を挙げている。

 

少し決まりを変えるだけで、人の行動が大きく変わってしまうナッジ。これはITを使わなくても生産性が向上するよ、というシグナルでもあります。

何でもITを使おうとするIT業界人からすれば、盲点となりうる考え方です。これを逆手に取ってITにナッジを活用することで、よりよいシステムづくりができるという裏返しでもあります。

 

PR TIMES(2019/6/18)

prtimes.jp

デロイト トーマツ リスクサービス株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 木村研一、以下DTRS)は、スマートフォン向け運転診断アプリ「D-rive GO」(以下、アプリ)の機能を活用し、企業・団体等を対象に従業員向け「D-rive GO安全運転ナッジ*1 サービス」の提供を2019年6月より開始します。

 

こちらは、ナッジを利用したスマートフォンアプリサービスです。ITとナッジは相容れないものではなく、両方認識することでよりよいシステムを構築することができると思います。

 

ナッジ理論を学ぶには

いくつか本が出ていますが、まずは下記の本をお勧めします。

いわゆる「原典」でリチャード・セイラー教授の代表作です。 

 

実践 行動経済学

 

あとは「行動経済学」というキーワードで周辺のわかりやすそうな本を手に取ればいいと思います。

  

ITシステムを作る側の方もシステム化後の導入効果は重要だと思いますので、このナッジ理論や行動経済学を学ぶ効果は大きいと思いますがいかがでしょうか。

 

ウェザーテック 天気とビジネスを結び付ける事例をまとめる

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はじめに

記録的な日照不足ですね。

せっかくの3連休ですが私の周りでもずっと雨です。結局家にこもって、Amazon Prime Dayに参加するぐらいしかできてないです。

さて、この天気ですがビジネスに大きな影響を与えることがわかっています。今年の冷夏傾向においては、いわゆる夏っぽい商品が全く売れていないそうです。一方でいつも売れないようなものが売れたりして。

この「天気」はすでにビジネスの世界において、需要予測のための大事な変数として利用されています。そんな事例を紹介していきたいと思います。

 

事例集

 

資生堂

www.jiji.com

新サービス「オプチューン」は月額1万800円で、資生堂の大規模コンピューターシステムと無線でつながった機器とともに、5種類の化粧液のもとが届く。
 利用者はまず、専用アプリを使って肌を撮影し、皮脂量や水分量を測定する。入力した生理周期や気分、寝返りの回数などのほか、天候や花粉飛散量などのデータと合わせて資生堂のシステムが解析。約8万通りの中から化粧液のもとの配合が瞬時に決まり、必要な量が抽出される仕組み。

 流行のサブスクリプションビジネス、そしてIoTです。基礎データとして天候を利用しています。

 

日本気象協会

tenki.jp

今回は、これからの時期、何℃になったらどんな商品が必要になるのかを、商品の売り上げと気温のデータをもとに解説します。

ぜひ実際の天気予報と照らし合わせて、お出かけの準備や献立の計画などにお役立て下さい。

日本気象協会が一般化してくれているんですね。

商売する人は常識にすべき情報でしょう。しかし、この気温になったら売れる商品、と言うのは逆を返せば今売れるはずが売れていない商品ともなるわけですね。

 

japan.zdnet.com

 日本気象協会(JWA)は4月23日、気象条件から商品需要を予測するサービス「売りドキ!予報」の関東版サービスの提供を小売業向けに開始した。予測データを提供する対象商品を550カテゴリー以上に分けた「スタンダード」(月額7万円)と、約120カテゴリーに分けた「ライト」(月額5万円)の2プランで販売する。主なターゲットは中規模以下の小売事業者で、2019年夏に全国版の提供も予定している。

 売れるのに作らないとか、売れないのに作りすぎる、などを起こさないようにするための在庫調整はビジネスにおいて重要な観点です。

天気なんてわからんよ・・、ではビジネスに波乱を持ち込むことになりますのでこのサービスは社会的意義も高いと思います。必要な分だけ作る、は環境の観点からもよいことですよね。

 

オランダ・デジタルサイネージ

adgang.jp

オランダのアパレルブランド・Scotch & Sodaが、秋冬シーズンのプロモーションの一環で、“その場所のリアルタイムの天気”に最適なファッションコーディネートが表示する屋外デジタル広告(DOOH)をアムステルダムで実施しました。

駅行内などで大きい液晶ディスプレイに広告を表示する、デジタルサイネージは都会では見かけるケースが多くなってきました。

そこに表示される内容を、天気に合わせてカスタマイズするというプロセスです。服は完全に天気と連動しますからね。

 

THE PAGE

headlines.yahoo.co.jp

生活をしていくうえで誰もが無関係ではいられない気象情報。スマートフォンやテレビなどでその日の気温や降水確率をチェックし、服装や傘の有無、レジャーの計画などを決める人も多いだろう。しかし、最近、それだけでなく、気象のデータを活用し、商品の売り上げアップなどを図ろうとする取り組みを進める民間企業が増え始めているようだ。

 

headlines.yahoo.co.jp

師走を目前に控えた2018年11月30日。東京・新宿のイベントホールで「第1回気象ビジネスマッチングフェア」と題する催しが開かれた。主催したのは気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)というあまり聞きなれない組織。会場には首都圏だけでなく岩手、福島、大阪、愛知、香川、広島、福岡など全国各地から245人がやってきた。そして、気象データを提供する会社、気象データをビジネスに利用したい企業、データ分析が得意な企業などの「お見合い」が行われた。

 

2つ読めば、気象データの現在がわかる記事です。

少なくとも今はまだ、気象情報提供側と小売業者の協業は始まったばかりの状態で、本番はクラウド基盤などが安定した今からだと思います。

気象情報提供関連は気象庁がかなりの権限を握っていて参入障壁の高い分野です。したがってプレイヤーも限られており、どのように日本全体で気象情報のデジタル活用を広げていくかは課題がありそうに感じました。

 

森永製菓

newswitch.jp

気象情報をビジネスに高度利用する企業が増えている。航空機の運航計画など気象予報を基に直接判断する業種だけでなく、気象と売れ行きの相関を解析して商品の需要を予測し、生産の最適化に生かすメーカーが出てきた。食品やアパレルなどの分野で広がっている。背景には中長期の気象予報の精度や分析技術の向上がある。利用業種の拡大に伴い、長年300億円前後だった気象ビジネス市場が拡大しようとしている。

 「『チョコモナカジャンボ』のモナカのパリパリとした食感と欠品の防止を両立するため、気象予報に基づく商品需要予測を導入した」。森永製菓物流部の小林健司SCMグループマネジャーは力を込める。

 そりゃあ、パリパリしたほうがおいしいですもんね。チョコモナカジャンボ。しなしな、では魅力半減、というか中のバニラが溶けて染み出てきて食べるのが大変になっちゃいますよね、溶けてると。

天気予測が使われているんだなあという実際の例です。ただ今年は今のところ苦戦しているんじゃないですかね。これだけ気温が低いと。まあ去年はアホみたいに暑かったですからあれはあれで異常でしたが。

 

日経新聞

www.nikkei.com

「雨が降るから早めに帰宅しよう」など、天気予報を見て1日の行動を決める人は多いだろう。企業にとっても、天気は客数や売り上げ、利益を左右する重要な要素だ。様々な業界の企業が気象データを人工知能(AI)で分析し「ウエザーテック」をビジネスに生かそうと動き出している。

ほぼまとめのような記事です。

ウェザーテック、と言うんですね。

 

まとめ

農業が産業の中心だった大昔は、農作物が豊作か不作かで大いに社会に影響がありました。したがって天候が安定することを祈るお祭りが各地で行われ、毎年豊作を願っていたものです。したがって、天候というものはすこし神秘的な感覚がありますね。

しかし、技術の進歩について、天候はビッグデータであり、これを分析し未来を読むことは数学に近づきつつあります。

地球と言うインフラ上ですべてのビジネスは成り立ちますから、天気が関係ないビジネスなどないのかもしれませんね。

ウェザーテック、今後注目を集めそうです。

 

日本にたくさん残る「昭和な職場」にクラウドはいかが?

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日本にたくさん残っている昭和の職場

東京を拠点にししかもIT業界に在籍していると気づかないことがたくさんあります。たくさんの会社はクラウドをたくさん導入し、Slackだなんだとスマートに仕事をしているとばかり思っていました。

しかし、とんでもありません。まだまだ「昭和の職場」はたくさん残っています。

 

www.nikkei.com

令和の日本経済は米中貿易摩擦もあり、先行き不透明感が漂っている。だが年率1%にも届かない低成長の言いわけを、人口減少や海外環境に求めるのはもうやめにしたらどうだろう。生産性を高めて成長を底上げする方法は身近にある。それは「昭和な職場」からの脱却だ。

 

具体的な調査も残っています。

 

prtimes.jp

【調査結果サマリ】

①会社員の54.6%が、自分が勤める会社を「昭和的」と評価
 30代の6割以上が勤める会社を「昭和的」だと回答

 

②昭和的な働き方イメージTOP3は、1位「休暇が取りづらい」、2位「働く時間が長い」、3位「残業が評価される」

大企業社員は、中小企業社員よりも「会議の参加人数が多い」、「会議の回数が多い」、「社内決裁に時間がかかる」ことを昭和的と思う傾向が明らかに

一方、イマドキな働き方のイメージTOP3は、1位「休暇が取りやすい」、2位「仕事が終わればすぐに帰っても良い雰囲気がある」、3位「残業時間と評価は関係ない」という結果に

 

③昭和的な会社・働き方について、18.1%が「良いと思う」、51.8%が「どちらでもない」、30.1%が「悪いと思う」と回答 50代の「悪いと思う」回答は21.1%にとどまる一方、20代は45.5%で24.4ポイントの差

 

④昭和的な働き方の悪い点1位は「慢性的に残業がある」、2位「業務の進め方が非効率的」、3位「IT利活用が進んでいない」という結果に

 

⑤昭和的な働き方の良い点1位は「年功序列で昇進、昇給できる」、2位「残業代が稼ぎやすい」、3位「社員同士の仲がいい」という結果に
40代39.1%が「社員同士の仲がいい」を良いとする一方、20~30代は28.2%となり10.9ポイントの差

 

もう、最悪ですね。全部不要です。良い点すらどうかと思います。仲がいいことと、仕事へのモチベーションが高いことは違っていて注意が必要です。

Twitterで情報収集する限り、どうも昭和の職場、私が思っているよりたくさんありそうです。

 

政府がAWSに一本化

一方の日本政府。こちらも負けず劣らずこれまではひどい状態だったようです。

 

www.nikkei.com

政府は2020年度予算編成で、省庁のIT(情報技術)調達に関する予算を初めて一本化する。内閣情報通信政策監(政府CIO)を置く内閣官房が各府省庁の予算を統括し、要求段階から執行まで横断して管理する。調達や運用にかかるコストを大幅に減らし、削減分はマイナンバー活用やセキュリティー強化などに振り向ける。

 

この記事、有料部分を読み進めてもらえるとわかるのですが、これまでは各省庁縦割りでシステムを構築していて無駄が大変多かったそうです。各省で同じようなシステムが乱立していたり、省側の担当者がITに疎く構築や保守に無駄なコストが積まれていたり。これを各省庁のITに関する予算を内閣官房でひとまとめにし、かつITに詳しい方がベンダーと折衝するそうです。

とてもいいことですが、この政府のITに関して言えばもっと泥臭い事情があります。2016年の記事です。

 

tech.nikkeibp.co.jp

会計検査院は9月、政府が進める情報システム改革に関する報告書を取りまとめた。22府省の情報システムを統合・集約するクラウド基盤「政府共通プラットフォーム」について、整備・運用の状況を検査したものである。検査は移行状況、運用経費、整備・運用の効率化、セキュリティ対策、データ連携の5つの観点で実施。いずれも不十分と指摘した。政府情報システム改革を主導する内閣情報通信政策監(政府CIO)にダメ出しをした格好だ。

 報告書のタイトルは、「政府の情報システムを統合・集約等するための政府共通プラットフォームの整備及び運用の状況について」。政府がめどとしている2021年度までの政府情報システム改革に寄与することを目的とし、会計検査院法に基づいて国会(両院議長)と内閣(首相)に提出された。

 検査の結果である「所見」には、厳しい表現がずらりと並ぶ。「移行による統合・集約化は限られたものとなることが予想される」「システム数と運用コストの削減の目標に対して果たす役割は、当面は限定的なものとなる」「必要と想定されたITリソースの規模と移行後に実際に必要となるITリソースの規模との間にかい離が生じているおそれがある」「情報セキュリティに係る要件を定義する際に担当府省でリスク評価を実施していない」「データ連携の基盤として構築していない」といった具合だ。通知表なら「もっとがんばりましょう」といったところだろう。

 

つまり、2013年3月に構築した「政府共通プラットフォーム」で各省庁のシステムを一本化し効率化を測ろうとしたけれども、結局システム全体の4割しか使ってねえじゃねえか。使ってるとしてもCPUリソースが全然余ってるし。また、システム間連携も全然やってないよ。

そういうことです。

 

で、内閣官房も業を煮やし、再度コンペしたところ以下の流れになりました。

 

tech.nikkeibp.co.jp

政府は2020年10月に運用を開始する予定の「政府共通プラットフォーム」に米アマゾン・ウェブ・サービスのクラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」を採用する方針であることが分かった。日経 xTECHの取材に複数の政府関係者が明らかにした。

 政府共通プラットフォームは政府情報システムのプライベートクラウド基盤である。政府は民間クラウドサービスの利用を前提に次期基盤となる「第二期整備計画」を進めており、現行の政府共通プラットフォームに比べて5割超の運用コスト削減を目指す。

 政府は2018年度から政府共通プラットフォームの整備に向けた入札を実施し、このうち設計・開発などの請負業務の一般競争入札について、アクセンチュアが19年5月に4億7520万円で落札して受託契約を結んだ。政府関係者によると、アクセンチュアはAWSの利用を前提に設計・開発を進めている。

 これまで自治体などの行政機関が個別にAWSなどのクラウドサービスを利用する事例はあったが、政府がAWSを大規模に採用するのは初めてと見られる。

 

過去の共通プラットフォームがどこのベンダーの基盤かは国内ベンダーであり、これは明記しません。こちらがアクセンチュアに変わり基盤がAWSになると。外資連合ですね。政府が、外資のSIで、外資のパブリッククラウドを使うぐらいなので、時代は変わったと言わざるを得ません。

まあ、国内ベンダーは今後の公共系の仕事が明らかに減るでしょうから、気が気ではないのでしょうけれども。AWSの仕事は増えそうですが、ハードウェアが売れなくなるので金額は減ります。

 

日本にたくさん残る「昭和な職場」にクラウドはいかが?

日本政府も、これだけ思い切った施策を取り全面的にクラウド化を進めているのです。政府のシステムが全てAWSで運用される。しかも各省庁のITは予算・要求・執行も含めて全部一か所(内閣官房)で管理する。無駄なコストを減らしたら、新しい施策に投入する。

もう政府すらそういうことをやる時代ですから、「うちの職場にクラウド?」なんて昭和な感覚の企業も、そろそろクラウド、いかがでしょうか。どんどん時代はスマートになってますよ。

昭和な職場をアップデートしないと競合他社や海外勢がどんどん前に行ってしまいます。政府を見習いましょう。

 

おそらく今からSAPを勉強すれば10年は食える

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SAPの2025年保守切れ問題

SAPというERPソフトウェアは業界にいれば超有名なのですが、私はなんとなく触れる機会もなく20年が経過してきました。

一方で、SAPを使っている企業はたくさんあるのですが、良く使われているバージョン(SAP R/3)が2025年でサポート切れとなってしまいます。よく言われるようになった2025年の崖とはこの件が非常に深く関係しています。

この問題については、下記の記事をご一読ください。

 

www.sbbit.jp

 国内大手企業を中心に4,000社以上の導入実績がある老舗のERPベンダー、SAP。最近はERPビジネスよりも、クラウドサービスやプラットフォームビジネスのほうが伸びていますが、「ERPベンダーのトップ」として今なお君臨しています。

 そのSAPを使うユーザー企業(およそ2000社)を悩ませているのが、「2025年問題」です。これはSAP ERPや同製品を同梱したSAP Business Suiteなどの保守サポートが2025年で終了することを指します。

 

2025年になるまでには、最新バージョンS/4HANAに移行すれば問題がないのですがこの仕事ができる人が市場に限られている、というのが問題となっているのです。

 

SAPは人材を集めた

SAPとしても、2025年までに移行をスムーズに終わらせたい。しかし日本国内に人材が不足している状況で、下手すれば他のベンダーに移るきっかけとなってしまう。

SAP委託案件でまるっと受託できる企業が存在すればいいのですが、これも数が限られていて探し当てるのが難しいようです。

また、フリーランスを探すにしても、登録が複数の人材紹介会社に分散していて、必要な人数がそろわない。

このように、2025年に迫っているのになかなか移行が具体化できない。SIerから提案ももらえないので予算化できない。そんな状況が透けて見えます。

 

ここで、SAPは以下の行動を起こしました。

 

tech.nikkeibp.co.jp

 フリーランスのエンジニアを探すサービスは、SAPの人材検索のクラウドサービス「SAP Fieldglass」を利用してSAPジャパンが構築した。フリーランスのITエンジニアを束ねる人材派遣サービスが持つ人材データベース(DB)とSAP Fieldglassを接続し、複数の人材会社の人材DBからSAPエンジニアを探せる機能を提供する。SAPエンジニアが不足するITベンダーは、このサービスを利用して自社に必要なフリーランスのSAPエンジニアを探せるようになる。

 

まずは人材会社のデータベースを統合し、横ぐしで人材を探すことができるサービスの提供です。人材が欲しいSIerが複数の人材会社の情報を俯瞰することができるようになります。

SAPジャパンも公式のレターを出しています。

 

news.sap.com

国内サプライヤーの初期パートナーとしては、イントループ株式会社、K2パートナーリングソリューションズ株式会社、株式会社クラウドワークス、株式会社パソナJOB HUB、ヒューマンホールディングス株式会社、マンパワーグループ株式会社、株式会社みらいワークス、ランサーズ株式会社が参画しています。(五十音順)

 

まずは、システムエンジニアがSAPスキルを保持していれば、実案件の獲得が簡単になる環境づくりが進められた、ということです。

 

SAPコンサルへの転進も促進

単に、人材を見つけやすくしただけでは、全体の人数は増えません。

全国のSAPコンサルの人数を増やし需要に答えられなければ、人材がいないことを可視化するだけで終わりになってしまいます。

SAPは、SAPコンサルを増やす取り組みも始めています。

 

tech.nikkeibp.co.jp

 SAPジャパンは新たなパートナー支援策である「パートナーサクセスプログラム」を発表した。実践型でプロジェクトの進め方を学ぶ講座を提供したり、SAPジャパンのコンサルタントがパートナーのプロジェクトを支援したりする。一連の取り組みを通じて、「今後5年で数千人規模のSAPコンサルタントを育成する」とSAPジャパンの大我猛デジタルエコシステム統括本部長は強調する。

 

企業戦略としてSAPのSIに取り組む場合は、この流れに乗るのが良さそうです。IT人材を抱えるのであれば、SAPジャパンのこのパートナーサクセスプログラムと提携し、人員教育を始めるべきでしょう。

 

SAPを独学するためには

今までSAPをやったことがなくて、フリーランスとしてSAPコンサルに転身したいというITエンジニアは少なくないと思います。そもそもSAPコンサルの相場を見ると月給100万クラス以上ばかりで、単なるSE/PGと比べるとかなり相場が高いです。人材が少ないからこそのブルーオーシャンですが、フリーランスや副業を考えられている方なら興味を持っても良いのではないでしょうか。

 

私がもし取り組むなら、下記の本をまず読んでみます。

図解入門 よくわかる最新SAPの導入と運用 (How-nual図解入門Visual Guide Book) 単行本 – 2018/12/14

 

全体像をまず知ってから次に動くことが重要です。

2018年末に出たばかりの本ですので、昔SAPをやっていた方にもおすすめします。

今年夏から、SAPジャパンがSAPコンサルになるための育成塾を開始すると記事中にはありますから、こちらが正式案内された後に流れに乗るのが今のところ王道のように見えます。

 

私の感覚だと、今からSAPを勉強すれば間違いなく10年(もしくはそれ以上)は食えると考えます。狙い目です。

 

SAPのフリーランス月額単価相場

すごいね・・。

 

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転載元: https://freelance-start.com/jobs/skill-34

 

追記

SAPのERPユーザー会であるJSUGが本件絡みの文書を出してくれています(無償)。

 

www.jsug.org

ジャパンSAPユーザーグループ(事務局:東京都新宿区、会長:数見 篤、以下 JSUG)とSAPジャパン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:福田 譲、以下 SAPジャパン)は、2018年7月から2019年3月にわたって、有識者による「ニッポンのERP再定義委員会」を組織し、このたび、日本企業のERP導入に向けた提言『日本企業のためのERP導入の羅針盤~ニッポンのERPを再定義する~』を取りまとめ、公開を開始しました。

 

日本における現状のSAP利用状況がまとめられています。かなり充実した内容にもかかわらず無料。こちらも紹介しておきます。

 

年収1億円をもらう研究者はIT技術者ではない 基礎研究にもっと投資を

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日本のIT技術者のイメージとは程遠い好待遇

AIが登場すると人間がやらなければいけないことはどんどん減っていって、人間の価値が出しにくくなり、給与も上がりにくくなる。そんな悲観的な話もあると思うのですが、一方で、高い報酬の仕事も生まれ始めています。

 

tech.nikkeibp.co.jp

「10年後以降の将来を見据えた基礎研究に取り組んでいく。GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)のように企業を買収するのではなく、一流の研究者のネットワークを広げて連携し、世界で通用する研究所にしていく」――。NTT 代表取締役社長の澤田純氏は、「シリコンバレー」で2019年7月8日(現地時間)に開催した発表会でこう意気込んだ。この発表会は、シリコンバレーに設けた基礎研究所の開設を記念して開催したもの。まずは、量子コンピュータや暗号、生体の3分野の基礎研究に集中する。これまでNTTのシリコンバレー拠点では、クラウドやセキュリティーといった分野の研究開発に注力していた。

 

この好待遇の根拠はどこから来ているのでしょうか。 

 

基礎と応用

SI関連に携わっていると、既存の技術を組み合わせて、顧客の希望を叶えることが技術だと思っている側面があります。各種ベンダー資格なども結局はすでに実装された技術の集合体です。

日本にも私を含めてたくさんのIT技術者と呼ばれる職業の人はいらっしゃいますが、今話題になっているのは、既存の技術を使ってお客様のビジネスそのものを変えていく。つまりデジタル化、DX(デジタルトランスフォーメンション)の話です。

勘違いしてはいけないのは、一般のIT技術者は新しい技術を生み出しているわけではないということです。あくまでも既存技術の組み合わせです。アプリケーション、という言葉があります。これは日本語に訳すと「応用」という言葉になります。基礎技術を応用して仕事をしている人がほとんどという理解をしなければいけません。応用と応用を組み合わせる仕事ばかりです。

現在、1000万・3000万・1億円、なんて景気のいい年収が並ぶ仕事は、応用研究ではありません。基礎研究です。基礎の中でも「AI」「量子コンピュータ」「暗号」「生体」のような部分が今、価値があり集中投資されているということです。

だから、そもそも論として、日本のIT技術者の99%以上は基礎研究者ではないのですから、彼らの給与水準を自分たちと比べることそのものがナンセンスだということが言えると思います。

もし、基礎研究にてすさまじい結果をたたき出し、実装が完了しようものなら、たくさんのIT技術者が殺到して実装側に回るのです。いわゆる「くいぶち」を作ってくれているのが彼ら基礎研究者です。

IT業界以外を見渡せば、過去は日本も基礎研究で世界をリードしていると言われた時代もありました。しかし、現在はアメリカや中国を筆頭に基礎研究に大金をつぎ込む国家がその位置を奪い、日本のたくさんの研究者がこの状況を嘆いています。

今日の読売新聞の社説も同じことを言っています。

 

www.yomiuri.co.jp

基礎研究は、将来どう発展するのかを見極めにくい。日本人ノーベル賞受賞者の多くが「自分の研究が何の役に立つのか、最初はわからなかった」と語る。地味で息の長い基礎研究の価値を評価し、取り組みを支えるべきだ。

日本では、基礎研究という「種」から、商品や新薬などの「花」を咲かせるまでのリレーがうまくいっていない。

 

情報処理技術者試験でいうところの、基礎と応用という区分も、よくよく考えると良くないのかなとも思います。基礎研究の基礎は「ベーシック」ですが、これはBase、基盤のような意味です。どこかで「簡単」という意味に捉えられて誤解されているところがありますよね。

 

基礎研究が遅れる日本

日本にはITをひょうぼうする会社がたくさんあるので、まるで技術力に問題のないような雰囲気もあるのですが、結局のところアメリカからもたらされた「基礎研究の実装」を応用しているに過ぎないということを心に刻む必要があります。ですから、大手のSIerはこぞって北米へ研究所を設立しています。

 

www.jetro.go.jp

(答)カナダの企業や大学で人工知能(AI)・量子コンピューティングの分野の研究が精力的に行われており、また、同分野の優れた人材が豊富であるからだ。富士通としても、同分野を革新的コンピューティング技術の1つと捉えており、研究開発強化のためにカナダに拠点をつくることにした。また富士通の事業部門が、2018年にバンクーバーにAI拠点を設置したが、その際は、既に協業している企業の存在や、連邦政府やブリティッシュ・コロンビア州政府、研究機関の支援も設立に至った理由だ。

 

www.nikkei.com

NECは20日、米国シリコンバレーに新事業の創出を支援する新会社を設立すると発表した。米国のスタートアップ企業と自社の持つ人工知能(AI)などの技術を掛け合わせ、新しいサービスを生み出す。ベンチャーキャピタルからの投資を呼び込む狙いもある。世界中の先端技術やIT(情報技術)人材、投資マネーが集まるシリコンバレーで迅速な事業化につなげる狙いだ。

 

IT業界にいると、ベンダーが発表したアプリケーションを仕入れ、設計し実装し、運用し保守するのがライフサイクルだと思いがちですが、これを生み出す源流のような部分にできるだけ多くの日本人が近づき、何かを生み出していく仕組みを日本国内で生み出していかなければいけない。

我々は「基礎」のイメージを変えなければいけない。そう思います。