orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

「海賊版サイト対策へ本当に手を尽くしていたのか、権利者団体に聞く」技術的理解を深める

 

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海賊版サイトとの戦いの経緯

著作権侵害への対策に対して、日経XTECHの記事にて、コンテンツ海外流通促進機構(CODA) 代表理事後藤健郎氏のインタビューが期間限定(2018/4/24 11:00まで)で公開されています。かなり詳細な内容となっていますので是非この機会にご覧ください。

tech.nikkeibp.co.jp

 

技術的な内容も含まれていましたので、参考のため個々の専門用語に解説を入れたいと思います。

 

用語解説

フィンガープリント技術による動画照合技術を使って侵害コンテンツを検知し、サイトに削除を要請する「自動コンテンツ監視・削除センター」

こちらの記事が詳しいです。

www.coda-cj.jp

CODAでは2009年度より、経済産業省の実証実験として中国、韓国のUGCサイト等への対策を開始し、クローリング技術によるサイト監視とフィンガープリント技術による動画認識(照合)を組み合わせた「自動コンテンツ監視・削除センター」を運営しています。

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※CODAの上記リンクより引用

上記のように、権利者が自動監視システムに「照合用映像データ」を登録すると、自動で動画投稿サイトの調査をしてくれるという優れものです。しかも、これらの動画データから「フィンガープリント(指紋)」と呼ばれるデータを生成し、調査まで迅速に対応できます。下記の記事は参考になります。

【Inter BEE 2011】NTTデータ FingerPrint技術を使った「リアルタイムコンテンツ連動サービス」を展示 | Inter BEE Online | Magazine

リアルタイムコンテンツ連動サービスのベースになっているのが、FingerPrint技術である。FingerPrintとはコンテンツの“指紋”のようなもの。膨大な情報の中から、比較対象となる情報の特徴点を高速かつ正確に検出し、一致箇所を探索する。NTTデータのFingerPrint技術は6万時間のデータから特定のコンテンツを1秒以内に探索可能。音楽形式、映像形式それぞれに強い方式を所持しており、テロップ、編集、写り込み、背景音がある場合でも検知できる。

自動的にレポートが権利者に届き、これに対して通知もシステムを通じて可能です。

通知したら動画投稿サイトが消してくれるかどうかは、サイト次第といったところのようです。あまりにも対応しないサイトとして、AnitubeとMioMioが今回上がった模様です。

 

ジオブロッキング

ジオブロッキングの詳しい解説記事を紹介します。

news.livedoor.com

アクセス元のソースIPアドレスを見て地域を判断し、特定地域のアクセスをブロックすることです。記事のようにヨーロッパでは禁止の方向で調整されています。

なお、技術的にはそこまで難しい技術ではなく、例えばAmazon CloudFrontというCDNにおいては、地域でブロックすることが可能です。

docs.aws.amazon.com

また、AWSのDNSサーバーであるRoute 53でも、名前解決を要求してきたクライアントの地域で返るIPアドレスを変更できる、「Geo DNS」という機能がありますが、これも設定によっては日本からしかIPアドレスを返さないなどの設定も可能です。

dev.classmethod.jp

 

ジオブロッキングするかどうかはサイト側で決められますので、国やインターネットプロバイダーの対応ではありません。

 

SimilarWeb

イスラエル製のアクセス数調査サービスです。本社はロンドンにあります。

www.similar-web.jp

何をどうやっているのか全く不明なのですが、特定サイトのPVや流入先の分析情報を得ることができます。Google Analysysに似ていますが、違うのは、どのサイトでもできるということです。本当にどうやっているのか不思議でたまりませんが。

私たちのデータについて|SimilarWeb PRO - 競合サイトWebサイト解析ツール

うーん、どうやって手に入れてるんだろう・・。

以下のサイトを見ると、あまり良くない方法で取得しているような気もします。

nelog.jp

Facebookの件で、個人の情報取得は相当厳しいことになってきましたので、CODAがこのデータを使うのはどうなのかなあ・・。

 

完全匿名のドメイン登録サービス「Njalla」

恥ずかしながら初めて知りました。

njal.la

Njallaについて
私たちはドメイン名登録サービスの別のタイプです!

私たちはあなたのプライバシーを気にします。私たちは、それが民主主義の重要な部分であると信じており、匿名の権利があります。

私たち自身が使いたいドメインネームサービスを見つけることができなかったため、Njallaが開始されました。私たちの目標は、プライバシーとシンプルで柔軟性を重視することです。

あなたが私たちのシステムでドメインを購入するとき、私たちは実際に自分自身のためにそれを購入しています。私たちはドメインの実際の所有者になります。それは、他のすべてのプロバイダに見られるプロキシの所有権ではありません。しかし、あなたは引き続きドメイン名を完全に制御できます。私たちの情報、私たちのネームサーバーを使うことも、あなたのカスタムデータを使うこともできます。

システムからドメインを移動したい場合は、もちろん追加費用なしでドメインを提供します。

アイデアは、あなたが一般に公開されることを最小限に抑えるようにすることです。あなたの顧客データを簡単に出すつもりはありません。しかし、正式な政府の政府要請に対する合法的なメリットがある場合は、私たちの助けとなります。誰かの健康や安全に影響を及ぼす方法で当社のサービスを使用する場合、当社はサービスを停止する権利を留保します。

NjallaはNevisにある1337 LLCによって運営されています。

Nevisってどこか調べたら、ネービス島という、中央アメリカの島でした・・。

セントクリストファー・ネイビス - Wikipedia

Njallaへの連絡先(メールアドレス)も、ダークウェブのドメイン.onionを使っていました。何から何まで匿名ですね。

ちょっと解説を加えておくと、基本的にドメインを購入する場合は、そのドメインの所有者をドメインレジストラとよばれる事業者に開示しなければいけません。またインターネット草創期はWhoisという公開データベースに、自分の個人情報を公開しなければいけませんでした。最近は、ドメインレジストラが隠してくれるサービスを行っています。どちらにしろ、レジストラは個人情報を知る必要がありました。

このNjallaを使ってドメインを買うと、NjallaがWhoisの情報を隠してくれるのはもちろん、どんな国の捜査機関から開示要求があっても「絶対に答えません!あなたの盾となります!」だそうです。

これを漫画村は使っていたということですね。

 

リーチサイト

こちらが解説記事です。

リーチサイト | 日経 xTECH(クロステック)

オンラインストレージなどに保存された漫画や書籍、動画といったコンテンツへのリンクを集めた「リーチサイト」。リンク先のコンテンツの多くが権利者に無断でアップロードされた違法コンテンツで、こうしたコンテンツの利用を助長しているとして、権利者を中心に対策を求める声が高まっている。

 現行の著作権法では、コンテンツを権利者に無断でアップロードして配信することは違法行為だ。ところがリーチサイトの多くは違法コンテンツへのリンクを掲載しているだけで、自らはファイルのアップロードや配信はしていない。そのため著作権者の利益を損なう状況を生み出す一因になっているにもかかわらず、罪に問うのが難しい。

違法コンテンツは、後述のサイバーロッカーに保管するということですね。

 

サイバーロッカー

こちらが解説記事です。

サイバーロッカーとは? | パイレシーテイクダウン

サイバーロッカーとは、不特定多数にファイルを配信することを目的としたストレージサービスのことです。BoxやDropboxのようなストレージサービスは個人的なファイル共有を目的とした一方、サイバーロッカーは不特定多数のファイル共有を目的とした違いがあります。

なるほど。

 

各用語について、よくわかりました。

 

記事の感想

これまでの経緯が、技術的背景も含めて理解できたのはとても良かったです。

基本的に有料記事なので文章を引用しませんが、私の感想としては、やはり何を海賊版サイトとするかの定義があいまいだと、今後の運用が現実的ではないということです。今回の3サイトについては世間の同意が簡単に得られたようですが、乱発すると政府による検閲のような扱いを受けるでしょう。

このルールづくりこそ大切とありましたが、まさにその通りだと思います。政府が対応せずとも民間だけで、自律的に対応できるルールがあるのが最もふさわしいかと思います。議論が進むことを強く望みます。