orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

「アメリカ、中国ZTEへの製品販売禁止」の影響を読み解く

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米、ZTEへの製品販売禁止

中国の通信機器メーカーZTE(中興通訊)への製品販売停止7年間のニュースが話題となっています。

jp.reuters.com

米商務省は16日、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)0000063.SZ(0763.HK)がイランや北朝鮮に対し通信機器を違法に輸出していたとして、米企業によるZTEへの製品販売を7年間禁止すると発表した。これにより、米企業はチップセットなどの対象製品をZTEに直接輸出することも、第三国を通じて輸出することも、直ちにできなくなる。

 このニュースがもたらす影響について、資料をまとめます。

 

ZTEとアメリカ、確執の歴史

実は、ZTEとアメリカの間においては、2016年から確執が発生していました。以下は、2016年3月7日のニュースです。

jp.reuters.com

米商務省は7日、米国の対イラン禁輸措置に違反した疑いがあるとして、中国の通信機器メーカー中興通訊(ZTE)と同社の関連企業を輸出規制の対象とすると発表した。

商務省の公告によると、ZTEは禁輸措置の対象となっている製品をダミー会社を利用してイランに再輸出するための仕組みを構築した疑い。

ただし、実際は上記の輸出規制は実施されませんでした。

blogofmobile.com

当初は2016年6月30日まで猶予期間に設定されていたが、その後にTemporary General Licenseを更新して猶予期間の延長を繰り返した。

1度目の延長は2016年8月30日までの60日間、2度目の延長は2016年11月28日までの90日間、3度目の延長は2017年2月27日までの90日間、そして4度目の延長が2017年3月29日までの30日間となった。

これまで延長は60日間または90日間としていたが、4度目の延長は最も延長期間が短い。

 4度目の猶予期間の間に、以下の合意がされ、輸出規制リストから外されることになりました。

jp.reuters.com

米商務省は、中国の通信機器メーカー、中興通訊(ZTE)(000063.SZ)について、輸出規制の対象リストから29日に除外すると発表した。ZTEは今月初め、イランへの米製品・技術の輸出を制限する米国の法律に違反したことを認め、9億ドル近くを支払うことで米当局と合意した。

以上のように、アメリカがイランに制裁しているにも拘らず、ZTEがいろいろな方法を使ってイランに製品を輸出しようとした件がアメリカの逆鱗に触れ、最終的には罰金の支払いとコンプライアンス遵守の約束をして、事なきを得た、はずでした。

 

ZTE輸出規制の影響についての分析

こちらは、2016年3月25日の記事です。実際は実施されなかった輸出規制ですが、もし実施されたら、という目線でのサプライチェーン専門家の分析記事です。

news.yahoo.co.jp

サプライチェーンの実務にどのような影響を与えるのか、4つのポイントが考えられます。

なお、本日のニュースは輸出規制ではなく製品販売停止なのですが、どうもニュースを読むと同じ意味のように取れます。ますは上記のニュースを読み解きます。

 

輸出規制とは

アメリカ企業からZTEに輸出することを禁ずることです。また、この輸出ルートはアメリカからだけではなく全世界に適用されます。

ポイント1 グローバルに構築された分業体制が破壊される

この中興通訊(ZTE)はマイクロソフト、インテル、IBM、ハネウェル・インターナショナルの各社と提携関係にあります。また、クアルコム、ブロードコム、インテルが同社のサプライヤ(部品供給企業)です。

 ZTE製品の部品として含まれていたアメリカ企業の製品が利用できなくなります。したがって、ZTEは製品を作れなくなりZTEの業績に大きなマイナスを与えるようです。

もちろん、アメリカ企業もZTEに売れなくなるので影響を受けます。

ポイント2 アメリカ企業に頼らない独自技術を自国・自社開発する

中興通訊(ZTE)社は、中国国内はもとより、グローバルに展開しています。そういった世界に張り巡らせたリソースを活用して、新たなサプライヤを開拓や、自社開発に踏みだす可能性もあります。つまり、米国のサプライヤや提携先を不要にする取り組みです。

もしかすると、2016年から時間稼ぎをしている間に、アメリカ企業の製品に頼らない研究開発や製品探しを続けていた可能性もあります。

ポイント3 日本企業への影響

日本企業への影響です。米国製品ではなかったとしても、中興通訊(ZTE)との取引、特に中興通訊(ZTE)への販売に逡巡する企業が増えるはずです。

本文記事においては、アメリカ企業の代わりに日本企業が選択される可能性を論じていますが、もしかすると日本もアメリカに追随してZTEとの取引を禁止する可能性も否定できないと思います。ZTEと現在取引を厚くしている企業は注意が必要だと思います。

ポイント4 中国へ出張する際のデータ流出規制

業務上必要なデータをパソコン内にデータとして保存し、海外出張で中国を訪れた経験をお持ちの方は多いはずです。データの内容によっては法令違反となる可能性があり、今後は注意が必要です。

悪気なく、アーカイブされたデータが、法令違反に該当する可能性があるのです。

 アメリカ企業の情報を、日本から中国に持って行った際に、規制に引っかかるということですね。これは難しいですね。

 

本日の製品販売禁止のニュースについて

さて、本日のニュースに戻ります。

商務省高官がロイターに語ったところでは、ZTEは昨年の合意で、幹部社員4人を解雇し、他の社員35人については賞与減額か懲戒処分とすることを約束していた。しかし、同社は今年3月、幹部4人を解雇したものの、他の35人については賞与減額も懲戒も行っていなかったことを認めた。

ZTE関係者はコメントの求めに応じていない。

商務省の命令書に引用されたZTEの書簡によると、同社は一部の懲戒措置を「完全には実行していなかった」としたほか、2017年の書簡に「誤り」があったことも認めた。

 ということで、2017年に合意したのに、約束を破ったところが直接のポイントのようです。今回は「即時実施」であり「7年間」という長い期間が設定されています。ZTEは重要な部品が手に入らなくなり、かつ財政面でもアメリカ銀行の融資も滞ると思われかなりの打撃となるのは間違いありません。例を挙げれば、ZTEのスマートフォンの中の部品にアメリカ製の部品は一切入れられなくなるということです。特にCPUはQualcomm Snapdragonを使えなくなるので、実質販売できなくなるということになります。

[ZTE Corp.] ZTE、スマートフォン市場で世界第4位、シェア5%を達成 - ZTE Japan

上記の通り、世界4位のシェアを持つ製品を作れなくなるのは痛いでしょう。

 

ZTEだけの問題ではない

今回の問題はZTEだけが注目されていますが、ファーウェイ(華為技術)も一緒にやり玉に挙がっています。

www.nikkei.com

米連邦通信委員会(FCC)は26日、国内の通信会社に対し、安全保障上の脅威となる外国企業製品の使用を禁じる規制案を発表した。禁止対象の企業は今後詰めるが、華為技術(ファーウェイ)など中国勢を念頭に置く。中国製の通信機器が中国政府のスパイ活動に使われているという懸念の高まりに対応する。

 FCCのパイ委員長が規制案を4月17日の公開会合に諮ると表明した。同氏を含む5人の委員で投票した後、導入する。

中国の通信機器にアメリカが依存することにより、重要な情報が流出し安全保障上の脅威となることを問題にしているのです。ZTEはもとから製品販売停止となるためアメリカ市場ではもう手に入らなくなるでしょうが、ファーウェイもZTEほどではないとしても大きな規制をかけられることになりそうです。

 

まとめ

米中貿易戦争という言葉は、バズワードではなく、このように現実社会で影響を及ぼし始めています。ZTE自体が日本ではあまり存在感がないので日本では影響がまだ読みにくいのですが、世界全体特に通信の分野で大きく情勢が様変わりしそうです。中国がこのまま黙っているとは思えません。2016年には中国はすぐ声明を出しています。

news.searchina.net

中国政府・商務部は7日、米国政府商務省が7日、米国に進出している中国企業のZTE(中興通訊公司)などを「輸出規制の対象にする」と発表したことに対して「強烈な不満を示し、断固反対する」との声明を発表した。

ただ前回は猶予期間があったのですが今回はありません。中国も即座に何らかの対抗措置を行ってくると推測します。

水面下ではもう何か起こっているのかもしれません。引き続き米中貿易戦争の次のシナリオを注視していきたいと思います。

 

追記(2018/4/23)

ZTEが今回の命令を受け入れられないとのこと。

japan.cnet.com

この販売禁止命令について、ZTEは「受け入れられない」決定だと反発している。

とはいえ、ZTEに売るな、ってZTE以外のアメリカ企業に命令しているので、ZTEが受け入れなくても結果は同じなような気が・・。

 

追記(2018/4/26)

ファーウェイが同様なことになるかもと言う記事

www.nikkei.com

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は25日、米司法省が中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を捜査していると報じた。米国の対イラン制裁に関係しているという。

一発レッドカードになるか、ZTEのように猶予期間が設けられるか、なにしろファーウェイまで締め出されたらアメリカ企業にも日本企業にも影響は不可避。

何か決まったら記事しようと思います。