orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

IT子会社、作っては捨て作っては捨て

 

気になる記事を見つけた。

 

www.nikkei.com

アクセンチュアが大手企業のIT(情報技術)子会社に共同出資する形式で、デジタルトランスフォーメーション(DX)支援を進めている。その一例がコカ・コーラボトラーズジャパンとアクセンチュアの共同出資会社である。バックオフィス業務のDXやデータ活用を目指す、いわば「新型IT子会社」だ。アクセンチュアが何を目指し、どんな取り組みを実践しているのか。アクセンチュアが仕掛ける新型IT子会社の実態を探る。...

 

ユーザー企業がSIerと共同出資してIT子会社を作るケースだが、もう何度同じ仕組みが繰り返されてきたか。インターネットに残る最古の記事といってもいい記事を添付しておきたい。

 

xtech.nikkei.com

 大手ユーザー企業がシステムを作るための情報システム子会社や,さらには情報システム部門を持て余し始めている。

 史上最悪とされる経済不況のなかで生き残りを賭けるユーザー企業が本業回帰の速度を加速し,「我が社にとっての本業は何か」「そのために必要な資産は何か」を問い直した結果,情報システムの開発・運用を委ねてきた情報システム子会社をもはや抱え続ける必要はないとの判断に傾いている。ユーザー企業にすれば「ITの専門家は(ユーザー企業にとっての)利益を生み出すもとにはならない」からだ。

 

これは去年?おととし?、いや違うのである。2001年の記事だ。23年前であるにも関わらず本文を読んで欲しい。全く内容が色あせないのである。古いのはユーザー企業だけである(ダイエーもJALも一度それから破綻したね)。

システム開発すること、がDXすることに変わったわけだが冒頭の通り、コンサル(っていうかSIerでいいと思う)と合弁化することの意味って、2001年の記事に書いてあると思う。

 

次から次へと登場する新技術・新製品のスキルを身に付けなければ,ITプロフェッショナルとしての付加価値が高まらない現状にあって,ユーザー企業の人事制度や給与体系では,情報システム子会社を十分に処遇できない。情報システム子会社にしても,親会社からの安定した発注と(ユーザー企業の)年功序列型給与体系のなかでは,IT関連スキルを高めなくても良いという甘えの構造になりがちだ。ある大手メーカーのIT戦略立案担当者は,「200人,300人規模の情報システム子会社を作った企業は今,にっちもさっちも行かなくなっている。子会社が食べていくために仕事を増やしているのが実情」と明かす。

 

つまり、新型も旧型も、DXもシステム開発も関係ない。ユーザー企業の中にIT技術者を置くのは人事制度・給与評価面でギャップが「ありまくり」なのである。それはここ数十年変わっていない。

一方で、もう一つ気になるニュースがある。

 

www.asahi.com

時間外労働の上限規制が導入された働き方改革関連法の施行から、4月で5年が経った。厚生労働省では、働き方の多様化に対応するため、労働基準法などのより抜本的な見直しも視野に入れた議論が進んでいる。「40年に1度」(同省幹部)とも言われる大改正につながるのか、関心が高まっている。

 

これは今年のニュースである。40年に1度、ということは、これまでIT子会社を作っては捨て作っては捨て、という歴史にピリオドを打つ大改正が行われるかもしれない、という可能性が出てくる。

2001年の記事で指摘されていたが、いざ目の前のシステム更新が終わったらIT子会社は生命維持の手段が宙ぶらりんになってしまう。常に新しい案件を受注し、技術をアップデートし続けないといけない存在なのに、過去システムのお守りに縛られ、会社の中がどんどん劣化し続けてしまう。

もし、労働基準法などの基本的な労働法が、アメリカのような緩い解雇規制を取り入れるならば状況が完全に変わるだろう。ユーザー企業にとって「用済み」ならばすぐに人員削減するので、IT子会社化など回りくどいことをしなくて済むからだ。

SIerや、SIerもどきのコンサルは、常に新しいIT人材を求めているから、ユーザー企業に眠っているIT人材を、共同出資の形で奪い、その後自身のあまたの案件に送り込む。

そうやって過去の歴史は繰り返してきたが、今後どうなるかは、政治次第と言える。それまでは、新型も旧型もなく、歴史の繰り返しなのである。