orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

IT業界、17年前と今の時代で決定的に違うこと

 

一通り読んで、17年前の記事であることに気が付いた。

 

softether.hatenadiary.org

たとえば建築業だと、神業的な技能を身につけていて、かつ他人がどれだけ真似しようとしてもどうにも真似できないようなすごい大工さんがいて、それ以外に大勢の作業員がいる。その他でも同様だろう。コンピュータに関する職業が特殊な訳ではない。ただIT業でその傾向が強いのは、単純に偶然今最も儲かっている産業の1つになっているからだと思う。

 

さて、私は17年前どころか25年前あたりからこの業界を見ているので、業界の状況は良くわかっている。そして、私も似たようなことを昔思った記憶はある。この記事で言う「2. 作業員的な技術者」はたくさん周りにいて、そして私は、何で勉強しないのだろうという疑問を持ち続けた。なぜなら、勉強すればよい仕事ができ評価されるのは明白だったし、しなければ、お仕事の量が下降線になったら真っ先に戦力外通告され追い出されてしまうルールだったからだ。

私は、微妙に就職活動を失敗したと言うか、そもそも俗にいう就職活動をしないで、卒業間際に直接会社の人事にかけた電話で「もう新卒採用打ち切ってますけど、受けにきていいですよ」みたいな流れで拾われた歴史がある。そのときは就職氷河期が始まっていたのでどうせ、ちゃんと就職活動してもどうなっていたかわからないけど、もともと世間知らずだったので、バリバリの超優良企業には入れなかったと思う。

だからこそ、同期には負けないぞーとか、先輩も追い越しちゃうぞー、みたいな馬力だけはあって、そのエネルギーが良い方向に流れて、就職して数年はいろいろ勉強したように思う。何せ、文系だったし。

そうやって、常に危機感というか、就職プロセスが適当だった後悔もあり、入った会社で活躍してやろうかと言う動機が、あの人手余りの厳しい時代を乗り切ったポイントだったのでは・・と思う。

若手の時はしたがってコンプレックスが強かったが、環境としては大量に周りに「2. 作業員的な技術者」がいて、これを反面教師にできた。だって、その逆をやれば評価されるというのはわかりやすい。勉強すれば目立った。これって、優秀な人が集まる会社だと味わえないと思う。現場のドブさらいでもなんでもやったんだけど、やればやるほど手柄になるので、これは私には向いていたと思う。調子に乗るタイプだから。「鶏口となるも牛後となるなかれ」ということわざ通りの性格をしている。

風向きが変わったのが30代半ば、リーマンショックのころからで、新卒で入った会社の居心地が滅茶苦茶悪くなった。おそらく景気が一時的に下がり、ベテランは単価が高くて敬遠されたんだと思う。がんばって「1. 本当の意味での技術者」を目指してたのに、それが単価が高いから会社の足を引っ張るって、何を言ってんだこの会社、と腹が立ち、自分の技術を活かせる会社を見つけて転職した。それがたった1回の転職経験。

そして、そこから10年ほどたち、やっぱり「2. 作業員的な技術者」はたくさんいるんだけど、中には「1. 本当の意味での技術者」になりたいと思っている若手もいる。全員ではない。でも、なり方がわからなそうだ。それはそうで、今の時代、たくさんのことが自動化されている。中で何が動いているかわからないものを、ボタン1つで完了できるようになっている。ボタンを押してだけいても「1. 本当の意味での技術者」にはなれないんだ。ボタンを外して中を見てみないと本当はいけない。でも、外せる?。普通の感覚なら、ボタンを外すと機械は壊れると思わない?。もしくは勇気を持って外しても、そっとすぐ閉じてしまうだろう。

だからこそ、もし今、自分が「1. 本当の意味での技術者」だと自負する人は、多くの「2. 作業員的な技術者」に甘んじている若手を、引き上げる努力をしなければいけないと思う。じゃないと、この業界自体が「なぜだかわからないけど動いているもの」に支配されてしまう。そのロジックは全て外国で作られていて、日本で「2. 作業員的な技術者」が動かしているだけ、となってしまう国に成り下がるかもしれない。そうなったら、日本では主体性のあるITがどんどんなくなっていく。他国のSaaSにどんどん業務が載せられて、日本人はログインするだけ、となってしまっても不思議ではない。

今は、単なる二元論(技術者/作業者)でこの国の業界で働く人々を裁く時代ではない。一人でも多く、本当の意味での技術者のレベルに、ベテランの力で引き上げていかなければいけないこと。このことが17年前と今の時代で決定的に違うことだ。中で争っている場合ではない。