orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

日本の会社、なぜデジタル化が周回遅れになってしまったのか

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IT業界にいても、現場によって「洗練された職場」、「昔さながらの古い職場」、それぞれあります。むしろ同じ会社にいても部門によって考え方が違ったりして、いつもツイッターは不平不満が溢れているのですが、それでもIT業界にいるだけマシ、とも思うことがあります。

 

 

我々が仕事をするのに欠かせないツールはありますよね。

・ビジネスチャット

・課題管理

・Web会議

・スケジューラー(カレンダー)

・電子メール

私が想像する限り、これらは最低限です。一つでもなくなったら仕事の生産性はガタンと落ちる。そしてほとんどのIT技術者はこれらはあって当たり前だと思って仕事をしているでしょう。だから、それぞれのツールに関しては空気のように存在しているし、高度な道具とは思っていないと思います。

ところが、これらのツールが会社レベルで全て導入されている会社は、恐ろしいくらいまだ少ないです。上記のうちの一部であったり、もしくは電子メールだけかろうじて、という会社もたくさんあります。

特に顕著なのは中小企業で、こんなデータがあります。

 

www.bizclip.ntt-west.co.jp

 勤務先でビジネスチャットを導入しているかどうかを尋ねた。「導入している」と答えたのは43.0%、「導入予定なし」が37.6%となった。従業員規模別に見ると、導入比率は99人以下の企業では16.5%なのに対し、1万人以上の企業では73.0%という結果となった。従業員規模が大きくなるに従い、ビジネスチャット導入比率が高まる傾向が顕著となった(図1)。

 

私の感覚と非常に合っていて、人数の少ない企業ではびっくりするほどデジタル環境が進んでいない。

また、「使える」と言っている大企業も様子が怪しくて、Microsoft 365を導入したからついでにTeamsも使え、それにビジネスチャット機能があるから、みたいな順番で「使える」と答えているように見えます。

導入されていても、職場文化として使うかどうかはまた別の話になります。

 

少し古いデータですが、海外に比べてデジタルツールを日本は使いこなせてないという記事もあります。

 

www.soumu.go.jp

第4節 ICTによる多様な人材の労働参加促進

(2)ビジネスICTツールの利用状況

職場においてビジネスICTツールはどの程度使われているのだろうか。就労者向けに自分の所属する職場におけるビジネスICTツールについて調査したところ、調査した全てのツールにおいて「導入していない」との回答が最も多くなった(図表4-4-2-2)。また、職場に導入されているものの、「あまり使っていない」「まったく使っていない」と回答した人の割合も、勤怠管理ツールを除いて「積極的に使っている」人より多く、積極的な利用が進んでいない状況が伺える。

 

コロナ禍にて利用の方向にアクセルが踏まれたのは事実ですが、私は日本の会社文化を塗り替えるほどの変化は残念ながら起きていないと思います。その結果、オフィスに着実に人々は戻ってきているからです。

大企業は同じ場所に集めても結局全員には会えないし、場所の確保も大変なので、デジタルツールを整備したうえで全員出社しないスタイルを採用するケースも増えています。しかし中小企業は、デジタルツールを整備するよりもオフィスに集めて仕事をする方が「効率的」と考え、オフィス回帰しているのではと推察しています。

 

ただ、デジタルツールは、テレワークのために実施するのではありません。仕事を効率化して生産性を高めるために存在しています。それを無視してでも導入しようとしない企業の本音はどこにあるのでしょうか。

これは私は、会社の仕事の仕方を決めている経営者あるいは経営に近い場所にいる幹部が、デジタル化による効率化に理解がないからであると推察しています。

彼らは、アナログでの成功体験が強いです。こういう方法で会社を成功させてきた。それを部下がやってきて、デジタル化だ、と言ったところでお金はかかるわ、かつ自分の仕事スタイルも変えなければいけません。

そうなると特に中小企業においては、権力争いにもなりかねません。権力のある人間の知らぬところで仕事の仕方が変わり、しかもそれについていけないとなると一大事です。自分の影響力を絶やさぬためには、デジタル化など「あってはならない」まで平気で言ってしまうのです。

また、推進しようとする情報システム部門も、事業部門の抵抗に遭うこともあります。事業に携わる社員がデジタルツールに対して知識がないと、なぜうまくいっているのにわざわざお金を出して新しい方法に変えなければいけないのか。仕事が忙しいのに余計なことをしてくれるな。から始まり、「お前が嫌いだ」までたどり着くこともあります。

これらの状況を見ていた決裁者が「社内の和を乱す」ということで、稟議を却下してしまうことすらあり得ます。

なぜ日本企業だけが海外と比べてこんな現象が起こるかと言えば、株式会社の寿命が海外に比べて長いということが挙げられます。

 

世界の長寿企業ランキング、創業100年、200年の企業数で日本が1位 2020年版100年企業<世界編>|周年事業ラボ|日経BPコンサルティング

 

こちらなかなか良い調査ですよね。会社の新陳代謝が進まない国なので、古い成功体験が負債になりがちになるのがよくわかります。

もし、一から会社を作るなら、はじめからデジタル化しませんか?。今の感覚の人ならば。しかし、日本では古くからの企業が市場でシェアを握っているので、なかなか起業も進まないか、やったとしてもなかなかうまくいかないということになります。

解雇もしずらいし、会社もつぶれない。

この結果デジタル化が進まないという環境が生まれているのが実際です。ですから、結論として、IT業界の人は特に、自分の仕事環境が当たり前だと思わない方がよいです。

むしろ「変わった職場で働いているんだ」という意識を持ち、この文化を、日本のたくさんの遅れた、原始的な職場に持ち込むというミッションを誰もが潜在的に持っていると考えるべきです。

 

政府も、この問題を認識し動き始めていて、とりあえずお金だけは出しそうな雰囲気です。

 

www.fnn.jp

5Gの人口カバー率を、現在の3割程度から、2023年度までに9割に引き上げるほか、地方でデジタル化を推進するIT系の専門家を、2026年度までに、230万人確保することなどが盛り込まれた。

 

さて、地方に誰が行くんでしょうかね。

しっかしまあ日本も周回遅れになりましたなあ、という感想です。IT業界の人たちはいよいよ出番です。ワクチン接種率も周回遅れから巻き返して世界トップレベルになったように、デジタル化、やらないといけないね、2022年。