orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。


炎上したプロジェクトで見たあるプライムベンダーの思い出

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私は過去一度だけ、超大型のインフラ構築プロジェクトで、盛大に炎上している案件に参画したことがある。ユーザーも大企業だし、プライムベンダーも超有名なSIerだった。私は多分SESで呼ばれていて、しかも自社で一人だけ。SESで一人だと、結局指揮命令系統などなく、現場の社員の人から仕事が振られるだけなので、実質派遣と同じ状態。多分、体制図は、営業が責任者でそこから私に矢印が引かれているというわけのわからない絵だったように思う。まあ、案件に人をぶち込むときなんて体裁だけ整えればなんでもよかったんだろう。

また、超大型のため、都心の雑居ビルの一階をまるごと貸し切っていた。常時100人くらいがいたと思う。プロマネも複数いたし、事務だけやっている人もいた。構築もたくさんのメンバーに分かれ、終盤にやってきた私は何が何やらわからなかった。というより、三日目ぐらいまで、仕事が全然降りてこなかったので、私は何のため呼ばれたんだろうと思いながら、定時になっても誰も帰らないオフィスで、自分に与えられたノートパソコンのセットアップをやって、そのうえで今ある文書を片っ端から読んでいった。

さすがに超有名なSIerらしく、設計書などはよくできていた。正直言って私の今の仕事はそのときに見たものをそのままパクっている気がする。こういう資料を作れば構築案件はこなせるんだ、という正解のようなものをあの時に学べたのは大きいので、どんな環境にも学びの機会はある。

ただし、炎上したプロジェクトらしく、オフィスにはたくさんの人はいるものの、営業が複数の会社からかき集めた技術者がごった煮のようになっていて、全く統制が取られてなかった。みんな忙しそうなのだがなぜ忙しそうなのかわからない。あのとき、ある仕事が結局私に振られたのだけど、その仕事を振った人がその仕事が何かよくわかっていなかった。結局はその仕事については私が専任のような形になり、最後の最後でデータセンターでの運用立ち会いに私も連れていかれ、私がプライムのような立場でその分野の説明をしたのは今になったら笑える。いや、下請けなのだが。

ある日の夕方、プライムの社員で営業の元締めみたいな人がプロジェクトメンバーを集め、しかも下請けも呼ばれた。そこで彼が言ったセリフは、「このプロジェクトはX億も今までかかっていて、しかも顧客への評判は正直言って悪い。しかし、ここからがんばっていきたい。ぜひ力を貸してほしい。」だった。いや、下請けの立場の私でまだ何にもわかっていないのに急にそこから言われてもわけがわからないのだけど。でも響く人には響いたのかもしれない。とにかくあのSIerは、炎上している案件を収めるために、人集めを急いだのだ。収まるならお金なんて糸目をつけない。反省は後からする。それが多分プライムとしての矜持なのだと思う。

SIerの社員たちは、そこから土日祝もなく延々と働き続けた。その事務所は不夜城になった。そのプロマネが言ったセリフを今でも覚えている。「スケジュールに余裕がないと言うけど、深夜時間や、土日も働く前提で考えたの?。違うよね。だったらまだ全然時間はあるんだよ。」と。もう労働基準法真っ青だ。でも彼らは、その通り働いていた。私は下請けの立場だから、よほどのことがない限りそれにはお付き合いしなかったけど、彼らは馬車馬のように働いていたのは間違いない。

最終的にその案件は納められたし、ユーザーの評判も悪くなかった。集められた人々の努力の成果だと思う。私は下請けとして呼ばれた一人だったけど、結局私の会社からもそこから十名ほど呼ばれたようだ。私は関わりはなかったが。下請けは炎上するほど都合がいいのだ。品のいいプライムは、カネとヒトに糸目を付けず、クローズしようとする。それに乗っかるのがSES専業の会社の矜持だと思う。プライムベンダーの営業に、営業するのだ。そして、できるSEを一人目として派遣し、シェアを増やしていく。そんな片棒を多分私は担いだのだ。

一方で、もうこんなのやだ、とそのプロジェクトにいるときに思い、出張中のホテルの中で転職の決意をしたのもおぼえている。いろいろ学びもあったし、そのことがあって今の自分がいるので、感謝しかない。でも大変だった。自分も大変だったけど、周りの技術者ももっと大変だった。あの世界にずっといたら、プライベートも何もあったものじゃなかっただろう。

でも、プライムをやるって、こういうことなんだぞ、ということを間近に見れたし、もし仮に自分がプライムをやるのならばそうしようというモデルも学べた。もうあの体験は一度だけでいい。知ると知らないのでは大違いだ。だから、プライム案件、顧客と直接契約し、構築案件をやりきる企業というのは、そういう矜持を持っているのが前提であり、そうでなければ、プライムベンダーなど目指すべきでもないし、いずれ炎上案件にぶちあたり、できないで逃亡するのがオチなんだろうと思う。