NECがKMD Holdingsを買収
各メディアで、NECがデンマーク最大手のIT企業KMDを傘下に持つ、KMD Holdingを約1360億円で買収した記事が大々的に報道されています。
NECが買収すると発表したのは、デンマークの持株会社KMD Holdingsの中核企業であるKMDだ。従業員数約3200名で、2017年12月度の売上高約56億デンマーク・クローネ(約958億円)のうち70%以上を中央政府、地方政府のパブリックセクターで占める、デンマーク最大のITベンダーである。
さて、1360億円という大金を投入したKMD Holdingsですが、直近5年の損益計算書およびバランスシートを確認し、経営状況を財務面から探っていきたいと思います。
KMD Holdingsの年次報告書の場所
以下のリンクに保管されています。
2017年の英語版より、内容を確認していきます。
直近5年の成績
損益計算書、バランスシートを添付します。なお、デンマーク・クローネ(DK)の数字ではわかりにくいので、記事作成当時のレート(1DK=16.90815円)を基準に円換算しています。
損益計算書ベースで言えば、売上は年々増え直近2017年では953億円あるのですが、残念ながら純損失49億円という結果になっています。端的に言って売上原価の割合が多く、儲からない体質であることが見て取れます。
バランスシートにおいては資産が1320億円あり、今回の報道で、
取得価額は80億デンマーク・クローネ(約1360億円)で、買収の完了時期は2019年2月28日を予定している。
とあり、資産が正しく計上されている前提でのれん代がほとんどない買収案件となります。したがって一番大事なのは、NEC傘下に組み入れたことで営業効率が向上し、KMD自体の売上および利益が伸びることが大事だということです。もし足し算だけなら、1360億円を使って毎年損失を出す不良資産を買ってしまっただけになってしまいます。
下記のNECのスライドにおいて、
緑の部分がつまりKMDの売上そのままなのですが、売上規模だけ追及したところでKMDが今のところ利益体質ではないので、経営体質を変えないとNECグループ全体に何も貢献していないということになります。
NECの財務への影響は
KMD自体の有利子負債が800億円あるのがわかりますので、M&Aの結果、NECは実質800億分の有利子負債が増えることになります。
現状のバランスシートを確認します。
端的に言えば、負債は1兆7670億円、純資産は1兆542億円です。雑に計算すれば、負債に約800億足して、総資産に約500億引くようなイメージになると思います。ぎりぎり純資産が1兆円を下回らないような塩梅ではないでしょうか。NECはかなりの純資産を持っていて今回の件ぐらいでは大きく揺らぐような取引ではないと思います。
まとめ
・・ということで、そんなにリスクは取っていないものの、一方でもしKMDとのコラボレーションがうまくいかなければ、もうからないIT企業を買収しちゃったというだけになると思います。オーガニックとシナジー・・確かにその通りだと思いました。
KMDの営業網をNECが欲しかった、と言うことだと思います。ただどうしてもSI中心となるため、結果が出るにはしばらく時間はかかるのではないでしょうか。引き続き関心を持ってニュースを見ていきます。