派遣とNDAの話
はてなブックマークで今盛り上がっている、某大型プロジェクトに(多分)派遣されていた若手のエンジニアが、現場の状況を本当かどうかわかりませんが赤裸々っぽくブログで伝えた件についての記事です。
コメントをみるとNDA!NDA!みたいな記載があふれているのですが、今回は派遣契約において派遣社員が秘密保持義務をどの程度負っているのかについて調べてみました。なお、状況を推察する限り派遣契約だと推察しました。SESだとするとプロジェクトを自社で完全に閉じて運用する必要があるのですが、この様子だと一つのプロジェクトにたくさんの会社のエンジニアをぶっこみ鎮火させるスタイルだと思いますので、一旦派遣契約が望ましいと判断しました。
まずは参考文書
こちらの記事から学びました。
結論
結論から言います。
派遣労働者は派遣先に対しては秘密保持義務を負わない。
この事実はご存知でしたでしょうか。私も初めて知りました。
・派遣労働者は派遣元に対して秘密保持義務を負う
・派遣元企業は派遣先に対して秘密保持義務を負う
ということで、派遣労働者は派遣先に対して、あくまでも間接的にしか秘密保持義務がないのです。
派遣労働者は派遣先に対しては秘密保持義務を負わない
しかも派遣労働者の場合は、派遣会社に対しては労働契約・雇用契約に付随する義務として秘密保持義務を負いますが、派遣先に対してはなんらの秘密保持義務を負いません。
このため、派遣労働者が故意または過失によって派遣先に何からの損害を与えたとしても、派遣先に対して直接その損害を賠償するのは、あくまで派遣会社であって派遣労働者ではありません。
開示者=派遣先による派遣労働者への秘密保持義務の問題点
このような事情があるため、秘密情報の開示者=派遣先が派遣労働者を使用する場合、その派遣労働者が情報を漏洩させてしまったとしても、開示者=派遣先は、その派遣労働者に対して、直接責任を追求することはできません。
ここはすごく大事ですね。派遣先が、派遣社員に、秘密保持契約書のようなものを義務付ける場合があると思うのですが、無効になる可能性が高いとのことです。直接雇用の関係となってしまうので、問題となるためだからとあります。
損害賠償が成立する場合は、まずは派遣先から派遣元へ
一般的な事例です。
派遣会社向けクレーム!派遣社員による損害を派遣先からのクレームや賠償請求された際の対応|咲くやこの花法律事務所
このような形で、賠償額を決めていく・・そうです。
賠償額が決まったら、次に派遣元が派遣社員に賠償を求める・・という流れになると思います。
感想
現場のグチを友達に居酒屋でしゃべるなどよくあるケースだと思います。
そんな次元の情報も解釈によっては「現場でしか言えない情報」に当たってしまうでしょう。NDAの書き方は個々で異なりますが、一般的なひな型も公開されています。
【ひな形付】秘密保持契約書(NDA)の書き方と20個のポイント | IT・仮想通貨(ICO)に強い弁護士|【トップコート国際法律事務所:IT弁護士】
秘密情報の定義をことさら広く定義すると、派遣先のコストがどんどん跳ね上がります。というのは、派遣先が秘密情報を管理できなかった場合は派遣元だけではなく派遣先も責任が問われるからです。したがって、秘密情報の定義は狭めるのが一般的らしいと書いてありますが、現場によって考え方は違うでしょうね。
私個人と言えば、仕事のことはほとんど会社以外では話しませんね。むしろ会社の中でも関係者以外に伝わらないよう配慮して話します。長年この業界にいるので、このあたりの肌感は染みついているのですが若手には厳しいものがあります。ちゃんと会社が教育をする必要があると思うのですが、派遣やSESなど顧客常駐でかつ環境が悪い場合、必要な教育を受けられない場合があると思います(特に炎上しているプロジェクトなど)。
プログラミングや設計ばかりが仕事ではなく、機密情報の取り扱いやプライベートでの立ち振る舞いなどもよっぽど重要です。ベテランは若手に正しく伝えていかねばならないと思う次第です。顧客常駐って何とかならないんですかね・・。問題ありありだと思うのですが。