orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

「放送の規制、全廃方針」何を意味するのか

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放送の規制、全廃へ

深夜にあまりにも主語の大きなニュースが舞い込んできたので反応します。

this.kiji.is

安倍政権が放送制度改革で、テレビ、ラジオ番組の政治的公平などを求めた放送法の条文撤廃に加え、放送局に義務付けた番組基準など、NHK以外の放送関連の規制をほぼ全廃する方針であることが22日、分かった。

情報はこれだけしかないのですが、全廃!。全部無くす!。どんな未来が待っているのか現段階で整理してみたいと思います。

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放送関連の規制について

放送関連の規制とは、一体なんでしょうか。これをきちんと把握するためにうってつけの文書がありました(PDF文書です)。

戦後日本における放送規制の展開 ~ 規制手法の変容と放送メディアへの影響 ~
(NHK放送文化研究所年報2015 p.49-p.127、メディア研究部村上聖一著)

かなりの大作論文ですが、これだけまとまった文書も他にありませんし最近の文書です。お時間があればご一読ください。

 

要約(上記PDF)

放送規制は、内容規制構造規制の2種類に分けられる。

内容規制とは直接的に番組の内容の適正化を図る規制である。構造規制とは間接的に放送の多様化を確保するための規制である。

内容規制については、政府が放送局に行政指導するようなケースは限定的であり一貫性も無く、ほぼ放送局の自主規制(BPOなど)によって実行されてきた。具体的には以下のような規制となる。

・番組準則
・番組調和原則
・番組基準の策定
・番組審議機関の設置義務付け
・訂正放送制度

構造規制については、資本や経営体制に対して働きかけることで、番組の多元性・多様性・地域性の実現を図ろうとしてきた。しかし民放の系列化が進んだり規制緩和が進んでいく一方でこの規制の効果も限られたものになってしまっている。
具体的には、以下のような規制となる。

・放送対象地域制度
・マスメディア集中排除原則
・外資規制
・放送番組の供給に関する協定の制限(民放の地域性確保)
・NHKの経営に関する規制(NHKと民放の二元的秩序の維持)

これら2つの規制の目的としては、以下が挙げられる。

・放送が国民に最大限に普及されること
・放送による表現の自由を確保すること
・放送が健全な民主主義の発展に資するようにすること 

一方、内容規制や構造規制の外にある、非公式の規制も存在する。構造規制をカードにして政権与党が放送業界に非公式に参入調整を行い、業界秩序が作られた。これをもとに番組に対する非公式な圧力があったのは間違いない。したがって、規制全体を語るときには、これらの規制が想定していない使われ方をして不利益がないように第三者機関も交えて検討しなければいけない。

 

考察

ここからは個人的な意見です。

この文書を読むとわかるのですが、過去、放送業界は政府の影響が非常に強かったのがわかります。放送業界の秩序は政府の積極的な調整で作られました。放送の規制はすなわち政府の権益であったと思います。しかし規制緩和が進んだことや業界が飽和状態であることも重なり、政府と放送業界の過去の蜜月関係は薄まり今や敵対関係にあると思われます。しかもインターネットメディアが幅を広げこちらはむしろ、フェイクニュース然り、規制をしないと社会に悪影響があるぐらいの状況になっています。わざわざ政府が放送業界だけ規制をし、放送業界を守る必要もないというのは、動機としてはよくわかります。業界を守っているのに自分が攻撃されるという図です。

内容規制についてはそもそも規制はあるものの放送局の自主規制(BPO)が中心です。これは政府から規制を受けたくないということの裏返しであると文書に書かれていますし、したがって今さら政府が政府側の規制を撤廃しても何も変わらないと思います。

構造規制については文書において、結局はあまり意味がなかったということ、また、過去は構造規制を楯に放送局をコントロールできたが今は飽和状態でどこも参入してこないから政府側が規制する意味がいない、とあります。むしろこれらを撤廃し良質な競争を促していきたいということになろうかと思います。政府は今の放送業界の秩序(反政府的で画一的な報道ばかり)を壊したいと思っているのだと考えます。

おそらく明日から、民放各社が大きく取り上げてくるでしょう。むしろ今のテレビ局の連日の安倍政権下ろしキャンペーンはこのニュースの裏返しだったのかもしれません。テレビ局にとっては今の規制は「既得権益を守る鎧」です。以前、ライブドアや楽天のときに、テレビ局に参入することがどれだけ大変だったかはご存知かと思います。規制が無くなったら既得権益が失われます。どう抵抗するかは見ものです。

また、インターネットへの規制、というのはこれは新しい話題で気になるところです。テレビ局においてはBPOがその役割を果たしましたが、インターネットでは自主規制は難しい面があります。ただし、インターネット独特の問題というのは確かに起こっていて年々その影響も大きくなってきていますので、議論自体はすべきだと思います。いわゆるフェイクニュースへの対応であったり、海賊版などの知的所有権の保護問題、海外の違法サイトへの対応、ダークウェブなどの対応などが中心になろうとは思います。

以上のように、本件は背景も社会的な影響もかなり大きなものになります。さまざまオピニオン記事が出てくると思いますので関心を持って臨みます。

 

続編

放送規制撤廃は全力でスルーして安倍政権打倒で結束するテレビ局 読売新聞社説へのコメント - orangeitems’s diary

 

 

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