orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

偽装請負よ、滅びよ。本当に滅びよ。

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外国人技能実習生に対する偽装請負

なかなか偽装請負の問題が無くなりませんね。IT業界の話ではありませんが取り上げておきます。

 

mainichi.jp

愛知県の青果卸会社と関連会社の農業生産法人に雇用され、北海道の農家などで農作業に従事しているベトナム人技能実習生21人が解雇を通知された問題で、全員が25日付で解雇された。青果卸会社の担当役員は取材に「そもそも農作業ができる社員はいなかった」と明かし、事実上、派遣先農家に実習を丸投げしていたと証言。識者は、職業安定法違反(偽装請負)に当たる疑いがあると指摘している。

 

偽装請負の何が悪いのか

労働者と、労働者に指示をする人の間に何の契約関係もない状態が諸悪の根源です。

今回の場合、外国人は農家から直接指示を受けています。教育も受けています。外国人は直接の上司が農家になると思いますよね。しかし農家は外国人と何の契約もありません。農家は外国人の健康状態や労働条件に気を遣う必要もありません。使用者責任がないわけですから。365日働かせても知ったことではありません。

一方で、本来の使用者責任は卸会社にあるのですが、目の前にいません。農家でどんな労働をしているか全くわかりません。そもそもどんな仕事をしているかもわかりません。もし問題があれば農家からクレームが上がってくるので、その人を引っぺがして交代人員を入れるだけの仕事です。教育もしてませんしだいたい仕事内容もわかりません。外国人は勤務時間を形式的に報告しているかもしれませんが、それだって正しいかどうかは怪しいものです。現場監督をしているわけではありませんので。

ということで、本来、農家に労働者を預けるのでしたら、きちんと派遣契約を結んで使用者責任を農家に担ってもらう必要があります。法的にもそうなのですが同義的にも全くおかしいです。

さて、この偽装請負の問題ですが、卸会社のメリットは何でしょうか。それは教育も労働管理もせず、派遣先に人を投げ込むだけでマージンを取ることができるということです。人集めに特化できれば数を裁くだけで売り上げをどんどん拡大できます。もし、派遣先にミスマッチだった場合は、別の派遣先に廻せばいいだけです。今回の農家もそうですがIT業界の場合も忙しいときと暇なときがありますから、自由に人を出し入れできて使用者責任を負わない農家もメリットがあり、教育や労働管理を省略できる卸会社にもメリットがあるのです。卸会社はそもそもスキルがなくてもよいので参入障壁も低いですし、仕事をまわしているうちに労働者がスキルを身に着けてくれるので、しめしめと言ったところです。

この偽装請負のロンダリングに参加する労働者は、派遣先を「ガチャ」と呼んでいて、幸運にもホワイト企業だったり高スキルの部門だったりすると思ってもみないスキルが身に付いたり、経験がつめたりします。一方で、無責任な派遣先だと、労働法上等なぐらいな奴隷労働をさせられたりします。少しのメリットと、無制限なデメリットがあり、過去の経験者として、偽装請負は無くなるべきだと信じています。派遣は派遣だし、請負は請負であるべきだと思います。責任は明確でないといけない。

2000年を過ぎたあたりからIT業界で横行したのですが、数年して取り締まりが厳しくなり大企業では対策が進んだと記憶しています。が、まだ法の目を潜り抜けるようなやり方が残っていると思います。

 

偽装請負よ、滅びよ。本当に滅びよ。

一番の問題は偽装請負が実現することで生まれる「益」によって、正しく運用する企業が経済競争に不当に負けることです。いわゆる不当競争により不当な勝ち組企業が生まれ、労働者がそこに巻き込まれてしまうことです。

ルールの運用が間違っていると結果も間違います。ルールをいかに審判に見えないように破るかで勝ち負けが決まってしまうスポーツは、結果として素晴らしい結果を生みません。素晴らしい選手、チームが称賛されず、誤った称賛を産むことになります。

どの業界でも、企業全体が正しい方向に進むように、当局には偽装請負について厳しく厳しく取り締まってもらいたいと切に願います。

 

偽装請負―格差社会の労働現場 (朝日新書 43)