orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

ハードウェア保守の話 定期保守を切ったらどうなるかわかります?

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ハードウェア定期保守を切る?

ITにかかる費用のうち確かに保守にかかる費用はバカになりません。そこで、定期的に、「ハードウェア定期保守料はぼったくられているんだから全部契約解除して、障害が起こった部品だけスポット保守(随意保守)に切り替えればいい」という意見が定期的に出てきます。japan.zdnet.com

定期保守というものをやめて、随時保守だけにした企業もある。劇的に保守料は下がったが、トラブルはそうは起きていない。ハードウェアごとに重要性を定めて、保守をきっちり行うものと、壊れたら買うものと決めているところもある。真剣に向き合えば、こうしたコストも本来必要なものに整理することはできる。

これは現実的なのでしょうか。 

 

スポット保守(随時保守)の実際

スポット保守を実際に使った人ならわかると思います。スポット保守は恐ろしく高額であり、かつ時間がかかります。また本当に修理してくれるかどうかの保証もありません。

例えばディスク1本が壊れたとします。普段は保守センターの電話にかければすぐにかけつけてくれるのですが、もし保守外だと電話を受け付けてくれません。

まずはスポット保守を頼むために、担当の営業を捕まえて見積を入手しなければいけません。この見積段階で断られる場合があります。スポット保守のためには、ベンダーはその部品と交換するためのエンジニアをアサインしなければいけません。突然の注文なので当日の対応は難しいかもしれません。また部品がないケースもあります。取り寄せとなれば数日では済まない可能性もあります。そのあたりの調整をベンダーができてやっと見積が出ていきますが、これに自社から発注をかけてやっと、技術が動き出すことになります。あと、サービスも悪いので、部品だけ郵送して終わり、というケースもあります。

上記で分かると思いますが、ベンダーとしてもとても工数がかかるので、ディスク1本なのに20万とか取られる場合もザラです。そもそもスポット保守をベンダーがやることは得にならないわけで、かと言って断ったら他のベンダーでは部品が手に入りません。客側にもリスクだらけです。

もし、システムの停止がビジネスを停止させてしまうのに、保守に入っていなかったことがわかったら常識的にシステム部長はクビでしょう。そこでかかった営業損失について、株主から指摘されれば経営者もクビでしょう。定期的な保守契約の棚卸も運用業務の大事なタスクです。もちろん、定期保守にもランクがあり、24時間駆け付けから、翌営業日対応まで様々です。メニューを整理してコスト削減を図るのはアリです。

また、最近流行っているのが「マルチベンダー保守」です。利用するサーバー機器はマルチベンダー化しているときに、保守契約はベンダーごとだと管理が煩雑になります。マルチベンダー保守契約をすると、別の会社の機器が壊れても一社でどの機器も対応してくれるので、窓口が1つになりますし、ボリュームディスカウントしてくれます。

マルチベンダワンストップ保守サービス:株式会社日立システムズ

HPE マルチベンダーサービス 保守サービス | HPE 日本(日本ヒューレット・パッカード株式会社)

IBM マルチベンダー・サポート・サービス - Japan

マルチベンダー保守 | 障害時の受付窓口を一元化【NECフィールディング】

どうやってやっているのかは不明ですが現場ではそうやって生産性を高めたり、コストを安くしたりしています。保守管理は一社とだけ話をすればいいので、更新や管理がすごく楽です。

 

壊れたら買い替えるという選択は?

これこそ非現実的です。

壊れるとは何を示しているのでしょうか。ディスク、マザーボード、ネットワーク、電源、などなど、様々なコンポーネントからシステムは組み合わされています。そして、1つのコンポーネントが壊れても動くように、冗長化の仕組みがインフラ設計で考えられています。買い替える、とは何を買い替えるのでしょうか。ディスクを買い替えると言いますが、RAIDを組んでいる場合は同じ型番でないと認識しません。結局スポット保守と言っていることは同じです。マザーボードが壊れたときの買い替える、はサーバーごとです。サーバーを買ったら結局保守も買うことになりますね。ホームセンターで家具や部品を買ってくるようにはシステムはできていません。ハードウェア保守ありきで整合性が取られています。

 

まとめ

私はクラウドを活躍の場に移していますので、ハードウェア保守についてはもう煩わされることはないのですが、それでも「定期保守をスポット保守にせよ」という意見はおかしいと思います。システムの現場を知っている人は、どれだけオンプレミスはハードウェア保守に守られているか実感していると思います。

保守料を支払いたくない、というのでしたらクラウド利用をお勧めします。ただそのクラウドのハードウェアですら保守契約を結んでいます。ハードウェアの量が多いので、保守費用も圧縮できるというからくりです。あまり重要ではないシステムはクラウドへ、重要なシステムはオンプレミスに、というようなハイブリッド設計がモダンであると言えますし、「スポット保守で経費削減」なんて運用品質上は逆効果です。何しろスポット保守でベンダーから断られたときのリスクヘッジなど事前にできるわけがありませんし、もしリスクが顕在化、つまりスポット保守できない部品が壊れてシステムが停止してしまったときの現場の緊迫感たるや、修羅場という表現が最も正しいと思います。

以上、ハードウェア保守の大事さについて現場よりお伝えしました。

 

補足

以前ハードウェア保守について別の視点で記事を書いています。

「日本郵便がハード保守契約を全面見直し」の内情を考える - orangeitems’s diary