orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

レジ打ち論争をもっと考えよう 本当に生産性は上がらないのか?

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国会での「レジ打ち」論争

レジ打ちのスピードが上がったら労働生産性が増えるかどうかということが議論になっているとのこと。なんと国会での話です。

www.tokyo-np.co.jp

今月一日の参院予算委員会。
民進党の大塚耕平代表が安倍晋三首相にこんな質問をしました。

大塚「スーパーのレジ係が二倍速で仕事したら、スーパーとしての労働生産性はどうなりますか。上がると思いますか?」
安倍「生産性は上がるというふうに考えます」
大塚「総理、これは一緒になって考えてもらいたいのですが、この場合、レジが倍速になってもスーパーの売り上げは増えないんですよ」

 

この記事は民進党寄りのスタンスで、安倍首相が誤解をしているとの指摘です。

安倍首相が図らずも答えたように、機械のごとく短時間に速く働けば売り上げも利益も増える-という誤解が、労働強化につながりかねないからです。

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考察

ことばの定義

労働生産性の議論をするならば、この言葉の定義をまず初めにすべきですよね。

bowgl.com

労働生産性には主として 2つの種類があります。

・物的労働生産性
・付加価値労働生産性
の2つです。

物的労働生産性とは「産出」の対象を「生産量」「販売金額」として置いたもの、一方、付加価値労働生産性は「産出」の対象を「付加価値額」として置いたものという違いがあります。

で、スーパーという労働形態を考えたときは、物的なほうではなく付加価値の方を見るべきですよね。スーパーが物を作るわけではありませんので。

付加価値労働生産性を測るための式を定義しましょう。

付加価値労働生産性=付加価値額/労働量

付加価値額とは企業が新たに生み出した金額的な価値を指すと考えてよいでしょう。

付加価値額の計算方法には、実はさまざまなものがありますが、企業として見るときの簡便法は以下です。

付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費

ほぼ、粗利益に近いものと考えてよいでしょう。

 結論は出ました。スーパーは、粗利益が高くなれば労働生産性が上がるということになります。

 

レジ打ちのスピードが2倍になったときのストーリー

さて、労働生産性の計算方法が明確になったのであれば、実際のケースを考えてみます。仮説は以下の通りですよね。

スーパーのレジ係が二倍速で仕事したら、スーパーとしての労働生産性はどうなりますか。

まず、レジ係の人数が一定であり、お客様の購入する物の量が一定であれば、労働生産性は上がりません。繁盛店であればお客様の待ち時間が削減され快適になるでしょう。あまり忙しくない店であれば、レジ係の空き時間が増えることになります。この時点では民進党大塚氏の言う通り生産性に変化はありません。

さて、ここで思考を止めてしまったらダメです。経営者ならどう考えるでしょうか。もし今のサービスレベルを維持するという考え方であれば、レジの人数を減らそうとします。レジの人数が減ればその分人件費は減りますから、粗利益は増えるということになります。かつ、レジの台数まで減らすことができれば設備投資も減らせますからもっと粗利益が増える方向になります。客の購買力が増えなくても生産性は上がってしまうのです。

一方でレジ打ちの労働を行っていた人が、別の職につきそこで労働生産性の高い仕事につき、その人たちがそのスーパーに来てもっと物を買うようになれば、客の購買力まで上がる始末です。

これが「労働力の酷使による生産性向上」です。なので、安倍首相が答えているように労働生産性だけ見れば上がるという答えもあながち間違えとは言えないと思います。

 

一方で、本来の労働生産性向上に立ち返ると、例えばコンピュータ、ロボティクス、AIなどを取り入れてあまりレジ打ちの人がいなくても、レジ打ちがすんでしまうような技術革新が行われたとします。しかもあまり高価なシステムではなくすぐにでも導入できるような技術であるとします。そうすると、人件費も下がり設備投資も少なくてすみます。こういうことを、まっとうな生産性向上と言うのだと思います。

 

記事は、

レジ打ち論争が明らかにしたように、実質賃金を引き上げ、税制などによる所得再分配を進めて多くの人たちの購買力、消費を底上げすることでしょう。

と締められていますが、アベノミクス以降、金融によるマクロ的な政策で、労働側が何も変わらずに生産性を上げようという議論が多く、個人的には辟易しているところです。すでにもうこれらは大胆に実施されていて、効果は限界に来ており、むしろ出口政策まで語られ始めています。

www.asahi.com

「(金融緩和政策の)出口のタイミングを考えることが大事だ」と訴えた。

レジ打ちを倍速にする=労働者が2倍で動く=労働者の酷使、というのは明らかに想像力の欠如であって、労働者が2倍の成果が出せるような仕組みを考えることが本来の筋だと思います。それは技術革新かもしれまんし、いろんな働き方の追求かもしれませんし、これこそが働き方改革だと思います。

 

もっと具体的に考えてみる

話をもう少し身近に戻して、私は週に一度、相当繁盛しているスーパーに行きます。レジの数も20ぐらいあるのですがどのレジもかなり待たされます。そもそも一人一人のお客様もかなり大量に買い込みます。安いですからね。で、待たされながら観察しているとレジ打ちが早い人と遅い人、二人入っているところと一人で回しているところ。どこが一番早いか私も狙って並びます。たまに失敗もしますが。

で、仮に全部のレジ打ちが2倍速くなったら、それはうれしいですね。でもうれしいだけで買う品数が増えるかといえば微妙です。必要なものだけ買えればいいですから。限度はありますがある程度は待ちます。だから、スーパーにとってみれば、今の時点でレジを極端にスケールアウトするモチベーションがあるかというとないと思います。ある程度雇ったら、「みんながんばれ」作戦でしょうね。

一方で、セルフレジのある店舗もあります。セルフレジが何がいけないかって、お客様に生産性向上を強いることです。お客様が早く手を動かせばよりレジ係を減らせます。このあたりが普及を妨げているように思います。またセルフレジのシステムもまたユニークなのでここに設備投資がたくさんかかっていそうです。トータルとして考えるとセルフレジは生産性を向上させない。

Amazon Goという取り組みがアメリカで行われているのをご存知でしょうか。これは無人レジの画期的なスーパーです。

www.businessinsider.jp

お客様はアプリをはじめにインストールし、入り口で認証を受けたら、中の物はレジ無しで持って帰っていいというスタイルです。取り出した瞬間に課金されるとのことで、これができると、レジ係は不要になるという算段です。一方で、レジ係は調理に周るようになり、店舗自体がもっと付加価値のある物を生産できるようになるという、ここまでの生産性向上の議論を具現化したようなお店です。

既存の大手スーパー、イオンも中国と組んで同じようなことをやろうとしているようです。

www.bcnretail.com

3月19日、イオンの子会社で施設管理などのIFM事業を手掛けるイオンディライトはDeepblue Techと合弁会社を設立すると発表。日中でAmazon Goに対抗する共同戦線を張る。

 

まとめ

金融を駆使して政府が生産性を向上させてくれる、というのはもはや古い考え方だと思います。今我々が必要なのは、自分の職場をいかにスマートにし、手をかけず今のアウトプットを維持するもしくは上げていくかを真剣に議論するということだと思います。これまでの古いしきたり、当たり前だと思っていることなど、公共も民間もどんどん変えていかないと人口減・人手不足が顕在化していく日本が保てないということにほかなりません。

 

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