orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

VMwareがデルを逆さ合併するレポートで株価が一時17.2%安となった件について

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VMware株価急落

仮想化技術で圧倒的なシェアを握るVMware社の株価が、2018年1月29日のアメリカニューヨーク証券取引所にて、一時17.2%安の大幅下落となった。終値も16.6%安125.05ドルで終えている。

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Yahoo Japan! Financeより転載

 

日本における初報

この状況を日本で初めて伝えたのがブルームバーグ社の下記記事だ。

ヴイエムウェアの株価急落、デルを逆さ合併で買収との報道受け - Bloomberg

29日の米株式市場では、仮想化ソフトウエアメーカーのヴイエムウェアの株価が急落した。同社が逆さ合併という形でデル・テクノロジーズを買収することを検討していると、CNBCが事情に詳しい匿名の複数の関係者の話として報じたことが背景。

 上記のように、株式を非公開としているデル・テクノロジーズ社が、80%の株式を持ち現在上場しているVMware社から買収される形で上場することを検討しているとの報道だ。子会社が親会社を合併する形となるので「逆さ合併」と呼ばれている。

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逆さ合併の事例

過去、日本でも「逆さ合併」の事例は多くあった。

例として、都市銀行の「三井住友銀行」と第二地方銀行「わかしお銀行」の合併の事例を挙げておく。

三井住友銀行と言えば、日本の誰もが知っている大手銀行だ。実は、過去に、わかしお銀行との逆さ合併を経験している。資本金208億円のわかしお銀行が資本金1兆3千億円の三井住友銀行を吸収合併し、存続する商号が三井住友銀行としている。2003年の話である。この際にこれを行った最大の理由は、存続会社の資本金を5600億円にしたことだ。7400億あまりを減資したことになるが、これで含み損のあった手持ちの株式を穴埋めしたい意図があったらしい。

その他、Wikipediaには複数の事例が上がっているので、この手法について知りたい方はこちらを見ていただきたい。

逆さ合併 - Wikipedia

 

原文を知る

さて、日本での報道を見ても、「なぜ」逆さ合併をするのかよくわからないため、bloombergの本記事を参照する。

VMware Plunges on Report It May Acquire Dell in Reverse Merger - Bloomberg

タイトルは、「Dellが逆さ買収を行うかもしれないというレポートでVMwareが急落」となる。

CNBCが、VMwareが逆さ合併でDell Technologiesの買収を検討していることを発表した後、VMwareは急落した。Dellが公開市場に戻ることが実現すればテクノロジー業界で最大規模の案件となる可能性がある。

670億ドルでDell社によって、EMC社と一緒に買収されたVMware社が、今度はDell社を買収する可能性があると、この件に詳しい未確認の関係者が語っているとCNBCは報じている。逆さ合併により、VMwareはDellの個人所有者に株式を発行し、これを公開市場で売却するかもしれない。これにより2013年にDellが非公開となったときに抱えた500億ドルの負債を相殺するのに役立つかもしれない。

VMwareの約80%を所有しているDellは、公開株式を含む様々なオプションを検討している。同社の取締役会は今月下旬に会合を開き、収入を増やし資金を調達する方法を模索している。

CNBCがこのレポートを出した後、VMwareは11%値下がりし、2年間で最も急落した。

デルの創設者兼最高経営責任者(CEO)マイケル・デルは、レッド・バイ・アウトでシルバー・レイク・マネジメント・エルエルシーと提携し、2013年に会社を非公開にしました。これにより、デルは、企業データセンター向けのハードウェアとソフトウェアのより大きなサプライヤになるためにコストを削減し、公開企業である四半期ごとの投資家の精査を受けることなく作業することができました。 3年後、デルはストレージ技術プロバイダーであるEMCと、データセンターのソフトウェアベンダーであるVMwareの大半を買収し、大規模な負債を取り込んで契約を締結しました。

 多少意訳があることをご留意いただきたい。

なお、下記の記事も参考になるのでご参照頂たい。

Dellに関する噂に真実味――再上場ないしM&Aで巨額負債解消に動く可能性あり | TechCrunch Japan

 

考察

現在、ITの世界、特にクラウドをめぐる攻防の中で、VMwareはジョーカーになっている。もともとIBM Cloudは一番早くVMwareと提携している(2016年2月)。AWSは2017年8月、Microsoftも2017年11月に、自社のクラウドにVMwareを載せる決断をしている。

オンプレミスの資産はクラウドで動いているワークロードと比べても圧倒的にあり、そのエンジンはほぼVMwareで動いている。このVMwareをどうクラウドに取り込むかが今後の勝負になることを、どの大手クラウドベンダーが認めている。

ところがそのVMware自身は、Dellとの資本関係で、全くクラウドとは関係のないところで不安定となっている。DellとVMware、そしてEMCと言えば、ハイパーコンバージドインフラで有名であり、この親和性は高い。しかし、それはDellでなくてもいいしEMCでなくてもいい矛盾もはらんでいる。もっと言えば、ベアメタルサーバーを利用できiSCSIやNFSでマウントできるストレージサーバーが使えるクラウド環境であれば、クラウドでも使えてしまう。VMwareの性能が良すぎてジレンマに陥っているようにしか見えない。

もっと想像を膨らませれば、Dellのハードウェアビジネスはシュリンクさせ、VMwareを中心にしたソフトウェアビジネスへ大きく舵を取る意味だってあるかもしれない。そう考えると前向きな逆さ合併とも言えなくもない。

CNNの記事中にある、500億ドルの返済のためデルの個人所有者へ株を発行する件は、今回の急落の原因そのものである。むしろこれを織り込んだので16%も株価が下がってしまった。デルに求められるのは今後の戦略であると思う。デルがどうなりたいのか。むしろデルという商号をやめ、VMwareという看板で戦った方が、ブランドとしては理解がとてもしやすいと個人的には思う。