orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

技術者にはいくら支払われるべきか

 

年中、ネットで論争していると思われる「技術者にはいくら支払われるべきか」という話。IT業界は特に、構成される技術の汎用性が高いため、会社を動いても技術が転用できる。おかげで転職も他業界に比べたらしやすく、企業経営も大変である。一方で、「助けて!お金あるから!」と言えば、助けてくれる企業もたくさんおり、大きな目で見たら、みんなで助け合って生きている、と言えなくもない。

さて、では、末端の技術者にはおいくら万円をお渡しすればいいのだろうか。

一見簡単に見える。高度な技術には高額を。低度な技術には低額を。ほら簡単。

しかし、実際そうはなっていない。業界経験が浅い方やIT業界ではない方は、すごく意外に思われると思う。報酬と技術は連動していない。もちろん資格手当のような、技術連動型の収入もあるが、それは給与のほんの一部である。

技術者の報酬と一番連動している要素は何かな、と考える。一言で言えば「責任」である。責任という言葉をもっと細かく見ていこう。

・その仕事を成功させることがどれぐらい会社に対してインパクトがあることか(難易度)

・その仕事は、他者ではできづらく、高い報酬を与えてでもその会社・そのプロジェクトに残ってもらわなければいけないこと(希少性)

・仕事は発生していないが、所属し続け、何か合った場合にすぐに動いてもらえるようにしたいかどうか(ブランド)

 

責任=難易度×希少性×ブランド

 

なるほど、自分で書いていてとても腑に落ちた。お金を支払うべきかどうかはこの計算式で考えれば納得できる。普段あまり気にしていなかったが、基本的にはこの数式で社会はまわっていると思う。

はじめに難易度と書いたが、これは小難しさではない。実は方法論自体は簡単でもよくて、その結果がとてつもない利益をもたらすなら、それはそれで難易度は高い。簡単にお金を稼げるって、難易度高いでしょう?。だから、技術の困難さはあまり難易度とは関係が無くて、すごいことを成し遂げられるかだけがポイントとなる。

希少性というのは面白い。人気の技術はたくさん競争相手がいるので希少性が低いかというと実はそうではなく、需要もたくさんなので、このバランスの問題となる。ある日急に人気がしぼんだとき、で競争相手がいっぱい取り残されたら、それは希少性が小さくなる。事務員はオートメーション化で随分企業需要が減り、でも「事務希望」という人が取り残され、薄給の職を奪い合うようなことになっている。

あとはブランド。その人だから信用される、という現象を甘く見たらいけない。ブランドにお金を払うのは社会においてとても自然なことだ。デパートで、なぜあんなに高い品物にお金を払って喜んで買う人がいるんだろう、という疑問を持ったことがないか。それでも商売は成り立ち、そしてお金を払ったほうが喜ぶのだ。これがブランドの力である。ブランドは短期間では作れない。個人がどれぐらい信頼を積み重ねたか、そして守るために不断の努力を行っているかが、ブランドである。

「責任」をどのように果たすかは自由だ。そして社会はどんどん変化し、売れ筋も技術トレンドも目まぐるしく入れ替わる。その中で、高い責任を果たし続ければ収入は上がるし、責任を放棄すればたちまち下がる。ただそれだけだと思える。

この責任のゲームは、結局はビジネスそのものだ。ビジネスを理解しないまま、自分の報酬を見つめていると「安すぎる!」と途方に暮れる人もいるかもしれないが、残念ながら、ひどく正確に「責任」が数値化されたものとなっている。

給与を上げたいなら、「責任」を最大化すること。

環境の中にそんな責任がないと思うなら転職し、新しい責任に挑戦すべきだと思う。

なお、仮に会社の評価がおかしくて、ちゃんと責任分よこせ!と思うなら会社と交渉するのもアリだ。

大事なのは、「難易度」「希少性」「ブランド」の最大化だから、結局の所マーケティングの基本のようなところがポイントとなる。どういうふうに商売をしたら、たくさん売れるか。値段が上がるか。自分自身を売るのもマーケティングだ、と考えるとかなりスムーズに、自分の価値を最大化できると思うがどうか。