orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

「自分一人で何でもできる」からの脱却をしたくなるための考え方

 

「自分一人で何でもできる」というは、結構色んな人がそこまで達成できちゃうんですよね。同じ仕事を何十年もやる職人のような方は、そんな気持ちなのではないでしょうか。もう体に染み付いていて、常人ではないパフォーマンスを安定してこなすことができます。ところが、未経験者が同じことをやろうとしても、いくら努力してもそこまでには達することができません。こんなに頑張ったのに、達人がちょちょっと手を動かしただけでできてしまうのを見たときに、絶望すら感じる人もいます。どうやったら、ここまで実力をつけられるんだろう、と。

私の仕事であるITの世界は特にその性質が強く、知識がない人がいくら勉強しても調査しても手を動かしてもできないことを、一瞬で仕上げてしまえます。一人の人間ができることはせいぜい他人の二、三人分だとおっしゃる人はいるかもしれませんが、実際は百人分、千人分の仕事を一人でできてしまえる業界です。

そうして、自分一人で何でもできる前提で、一人でなんでもかんでも自動化し、そして高度なことも全部自分一人で対応する。そうやってもまわる仕事、職場は結構たくさんあります。世の中の中小企業で、そういった会社って結構たくさんあるのではないでしょうか。

致命的な弱点があります。達人が何らかの理由で休職、退職となったときに、誰もフォローできないということです。一人で千人分・・が本当なら、千人をすぐに連れてこないと現場がまわらなくなるのです。

それは厳しいですよね。そうやって廃業となる中小企業もどんどん増えてくると思います。それは、達人にビジネスを依存していたツケ、と言えます。そのツケを支払わないといけないリスクを思い浮かべましょう。そして、どんどんこれから人口が減っていくのですから、時間が経てば経つほどに危険性は高まっていくのです。

まずいな、と思った人から先にやるべきことを言います。

 

①利益を削ってでも、物理的に人数を増やすこと
②自分の仕事の中で、明らかに自分じゃなくてもできることは、切り出して他人に任せること
③自分にしかできないことについて、具体的に誰に任せるのか顔を思い浮かべられること
④自分しか知らないことをドキュメント化した上で、メンバーとシェアすることを定期的に実施すること
⑤他人に任せたことに口を挟まないこと
⑥任せた他人が大変なときは、問答無用で代わってあげること

 

この6つです。

 

①利益を削ってでも、物理的に人数を増やすこと

まずは、人を増やさないことには何もできません。自分がいなくなったら千人必要と考え、潤沢に人を入れましょう。利益を圧迫するという考えを捨てないとできません。目先の利益より、自分が手を動かさなくてもまわる世界を優先しましょう。

 

②自分の仕事の中で、明らかに自分じゃなくてもできることは、切り出して他人に任せること

次に、自分の仕事の切り出しです。達人であればわかるでしょう。ここは誰でもできるという仕事の存在に。積極的に切り出していったら、きっと周りがつぶれるほどかもしれませんが、これはやるしかありません。潰れないように人は余裕を持って入れましょう。

 

③自分にしかできないことについて、具体的に誰に任せるのか顔を思い浮かべられること

三つ目。切り出して切り出して。それでも残る自分しかできない高度な仕事。これどうしますか。それすら誰かに渡していかないと、リスクは消えません。このときに誰か育ったら伝えるよ、なんて言っていると時間ばっかり過ぎていきます。

誰に引き継ぎますか。顔を思い浮かべられるなら一安心ですが、そうではないなら何もしていないのと同じ意味です。一人ではなく二人、三人でも構いません。

 

④自分しか知らないことをドキュメント化した上で、メンバーとシェアすることを定期的に実施すること

高度な技術を、一日二日で伝えられるはずがありません。時間がかかります。そして、何を伝えるべきかどうかも、実はご自身でもわからないことが多いです。

思いつく限りドキュメントを作り、そしてシェアしましょう。定期的に。時間がかかるのは当然ですが、やり続けないと進みません。仕組みとして、技術を提供する機会を作りましょう。

 

⑤他人に任せたことに口を挟まないこと

一旦、他人に任せた領域について、達人はいろいろ言いたくなってしまうでしょう。でも、そこで口を出してしまうと、きっと任された方は絶望を感じやすくなります。任されたほうには試行錯誤する権利があります。ぜひ、信じて見守りましょう。

 

⑥任せた他人が大変なときは、問答無用で代わってあげること

何かを任せたときに、思いの外うまく行かず、四苦八苦していることがあります。こういうときに、なぜうまくいかないのか、みたいなコーチングをしだす人がいますが逆効果です。とりあえず問答無用で引き取りましょう。任せた相手がつぶれてしまっては、何の意味もありません。

そして、達人がとりあえずやってみせる。そうやって、相手の負担を減らしましょう。何、達人ならちょこちょこっと手を動かせば解決できることです。

 

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日本全体で、今後、こういうことを考えていかないとほんとに、厳しい状況にどんどん追い込まれていくんじゃないだろうか、と思います。だって、大企業は仕事の細部について、中小企業の達人たちに依存してますからね。その末端で、達人たちが伝承をせず、廃業に追い込まれていったら大企業の仕事もいずれまわらなくなるでしょう。それを外国に委託するようになったら、おそらく日本も終わります。だって、日本にお願いする意味がなくなりますからね。

多くの現場が抱える問題だと思います。必要性を理解して、みんなでがんばって乗り切っていきましょう。