orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

未経験者を、いかにIT業界へ招き入れるか

 

西暦2000年前後のITバブルの時代も、未経験者をIT業界に引き入れるムーブメントはありました。ありましたが、当時は就職氷河期真っただ中で、しかもIT業界なんてニッチな業界だったので、入った人々のモチベーションも知識レベルも低かったのをおぼえています。とりあえず入りましたの世界で、でもコンピューター化は止められません。人数は必要なのでいったんそろえようという状況でした。

定着率は低く、退職率も高く、それでも世代的に人数が多かったので「あなたが辞めても代わりはいくらでもいる」が成立する社会でした。ブラック企業という言葉もその頃に作られました。懐かしい。

ところが今は違います。何でもかんでもデジタルです。世の中がデジタル化することに執心するようになってしまいました。他業種も「IT業界の専門家に任せておけばいい」から、「主体的に参加していかないと仕事を取られる」というふうに考え方が変わってきています。どうやって、デジタルを取り入れるかについては、万人の悩みの種になっています。

こんな状況において、今、ポイントとなっていることは「未経験者を、いかにIT業界へ招き入れるか」になってきているのではと感じます。

西暦2000年ごろと何が違うかというと、人材の枯渇です。これから少子化が進み人数自体が限られてきます。そうすると「教材だけ与えて勉強し、身に付けた人だけが残ればいい」という過去の価値観は捨てる必要があります。そこまで来ていると思います。

競争して、切磋琢磨して、出来る人を使うという考え方ができなくなっています。むしろ競争原理を取り入れず、全員を大事に育て退職を極力回避し、全員戦力にするぞ、という発想こそ大事になってきます。

最終的には、今、資源の奪い合いが世界で起こっていることと同じように、人材の奪い合いが起こると思っています。単に人間だ、ということだけではなく、「ITを理解しコントロールできる人材」です。

だから、今後、未経験者は「原石」です。磨いて宝石にするために、どうやれば一人前に育てられるか。今一度教育プロセスについてクローズアップされる時期に入って来たと強く感じます。

かなり雑に言えば、これまでは「基本情報処理技術者試験」を勉強して取得して、それから現場に入って仕事をおぼえれば何とかなるよ、という考え方が標準だったと思います。

それをもっとかみ砕かないといけなくなりました。

・どうやって基本情報処理技術者試験を突破させる?
・突破したあと、どうやって現場の仕事を理解できるような基礎を身に付けさせる?

大企業の新卒研修を見ても、レベルが高すぎるような気がしています。今の現場が求めるスキルとは、基礎の上にここ20年くらいのノウハウを凝縮したような話題ばかりで、色々経緯をすっ飛ばしているので、応用が利かないだろうなと思うことばかりです。

具体的に言えば、過去20年に起こった業界のいろいろな課題と、それに対する解決方法を、歴史をさらうような形で理解してもらう方法論の確立、と言えばよいでしょうか。

そう考えたときに、教育プロセスというのは短期で完了するようなものではないと思います。よくある5日間研修みたいなもので、完結するほど狭い話ではありません。

未経験者が仕事をしながら、絶えずインプットできる場を職場内に構築し、1年単位で学習していかないととうてい説明しきれない、というのが私の率直な感想です。

それだけ、たくさんの人が長い時間かけて育てて来たIT業界ですから、招き入れる側も経緯をきちんと伝える姿勢が重要です。私たちが自習してしがみついて生き残って来たことを未経験者に強要できる時代じゃないと感じています。