携帯電話の世界は、確かにたくさんの人が使うから、言葉は簡便にしないとわかりにくいよね。
NTTドコモやKDDIなど通信大手6社は、携帯電話で通信障害が発生した場合にわかりやすく説明するための素案を公表した。難しい専門用語を言い換え、各社で同じ言葉を使う。生活に欠かせない重要なインフラなので、障害時の周知を徹底する。
ここ最近、異業種の方とも会話することが多いので、その度に発見がある。あまりにも業界の中でしか会話しないと、自分が専門用語を使っていることすら忘れてしまう。
もともとITなんて、ニ十年前はニッチもニッチで、自分の仕事を家族に伝えることすら難しかった。就職するときにも「わけのわからない仕事」みたいな見方をされたものだ。
今や、IT業界にいない人でも、感度の高い人はクラウドやサーバーのことも知っている。一方で何にも知らないという人もいる。Digital Divide(デジタルデバイド)と言う言葉があり、以前は年代や、住んでいる地域で語るものだったが、昨今はそんな簡単な因子で語れないと思う。デジタル忌避(きひ)という言葉は私が考えたが、本当に毛嫌いしている人もいる。マイナンバーカード?危険でしょ。QRコード決済?わけわかんない。スマートフォンも電話でしか使ってないよ。SNSなんて知らない。かろうじてLINEは使ってるけど・・みたいな。
IT業界の業界関係者、デジタル忌避している人、この二段階しか見えていないとコミュニケーションが断絶する。この二者の間にグラデーションがあるし、その人たちの方が圧倒的に多い。デジタル慣れしている人は増えて来た。いろんな手続きがデジタル化されそれに付いていっている人もたくさんいる。でも「なぜそれができるのか」については彼らは全く知識がない。知識がない人にも伝えなければいけない。
・平常時に「なぜそれができるのか」はわからない
・障害時に「なぜそれができなくなったのか」はわかりたい
この2つは同時に満たせない、ということはないということはおわかりだろうか。普段はわかる努力をしていない人が、障害時に急に理解できるようになるものか。だから障害時に大混乱するのだ。仕組みをわかっていない人がああだこうだ議論しだすから、社会が大混乱する。
まずは前者、通常時に理解をしてもらえるようにすると言うことを念頭に、行動していくことが業界関係者には強く求められる。
全くもって障害が無ければその必要すらないのだが、残念ながらそんな悠長なことを言ってはいられない世界だ。
どうすればいいか。
・普段から、利用者とコミュニケーションを、「定期的に」行うこと
・普段から、わかってもらう努力を続け、少しでも「なぜできるのか」を知ってもらうこと
・普段から、会話が成立するために専門用語を減らし、平易な言葉で説明することを心がけること
・普段から、複雑な専門的ロジックを、多少の脚色も含め、平易なロジックに置き換え説明すること
私のシステム運用の現場では、自然とこういうことをやっている。何にも伝えないことは、障害時に首を絞める。正常だから何もやらなくていいということではなく、普段から、顧客の理解を積み重ねておくことが、万が一の時の保険となる。
ま、それでも二十年前と比べると、話が通じやすくなったとは思う。デジタルがたくさんの人々の生活の普通に溶け込んでいくのだから、業界関係者はますます努力して行かないといけないと思う。障害時だけではなく、平常時も。
専門ではない人に、わかってもらえることができるからこその、専門家なのだから。