orangeitems’s diary

クラウド専任の40代インフラエンジニアが書くブログ。新規事業マネージャー。20世紀末の就職氷河期スタート時にIT業界に文系未経験で入りこみそのまま生き残った人。

事務職、なんてない。

 

事務職、という職種がどんどんこの世の中から無くなっているように見える。

事務といえば、平日の9時から18時まで、椅子にすわってパソコンとにらめっこ。たまに上司から雑用をお願いされて対応する。パソコンスキルが必要なので、WordとExcel、最近はパワーポイントぐらいまでの操作を知っていればいい。あとは社内ルールと上司の喜ぶところさえ知っておけば、安定して働き続けられる。

こういうペルソナの仕事は、20年前辺りに派遣社員が侵食しだし、正社員がやることでもなくなった。

しかしここ最近は、その派遣の仕事すらニーズがどんどん落ちている。システムが自動化することを世の中が前提にし出したからだ。

人がパソコンを操作するんだから、それにはルールがあって、その手順をロジックに落とし込んで自動化するのはRPAだが、RPAばかりが切り崩しているわけではない。通常のシステム構築自体が事務作業の軽減を狙っている。

巷で流行った、○○万時間削減、のさの削減された時間は事務職の人生だった。たくさんの事務職の時間が余ったので、今盛んに議論されているのがリスキリングの議論だ。

 

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第210臨時国会が3日召集された。岸田文雄首相は衆院本会議で所信表明演説し、個人のリスキリング(学び直し)の支援に5年で1兆円を投じると表明した。

 

リスキリングする対象が既存の事務職である前提で、新しい事務職を雇い入れる発想は完全に矛盾する。具体的な事例も挙げておこう。

 

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8月まで商社に一般職として勤めていた。報告書の作成など事務サポートが主な役割だ。ただ、そうした定型的な仕事は入社時より減り、ここ数年将来のキャリアに悩んでいた。思い切って職種チェンジしようと退職。ITスキルを基礎から学べる同講習に懸ける。

 

だから、もう「事務職」なんてジョブは無くなっている。既存の経験者ですらスキル扱いされないのであれば、新しく目指すなんてない。

だったらITスキルを学んでIT業界に未経験で入社・・という発想を持つ人は多いと思うが、正直言って数か月勉強して仕事で使えるレベルまで育つとは思えない。20代の半ばならまだいいが、30代になって、それで未経験ですという立場で既存の職場に入り込むのはなかなかハードルが高いように思う。

まるでリスキリング自体が魔法のように語られるが、リスキリング自体はどんな指導方法なのか。IT業界はどうやって人を育てて来たのか。ほとんどがOJT(On Job Training)で、ついてこれない人は排除するシステムではなかったか。

もしくは、一週間の研修が何十万もかかる非現実的な教育ビジネス。

それでは、資格試験がリスキリングの受け皿になるかというと、資格試験がある分野と業務が一致するとは限らない。この資格が受かったからこの仕事できるね、という対応が正直、薄い。基礎にはなれど仕事そのものではない。

未経験者をどう育てるかという問題をIT業界が長年抱えていたのに、ここにきてリスキリングで1兆円。お金だけが動くが、何をどうするかが全く見えていないのだ。

これまでのIT業界は職人的な志向が強かったのだが、そのために若手以外の未経験者に大きな壁を作っていたように思う。このリスキリングの動きがそれを変えてくれるのか。過去の事務職のように、大量の職を提供できるようになるのか。

システム化/デジタル化による省力化・人員削減というモデルと、デジタル人材のリスキリングで職を大量に提供するという計画が、全然かみ合っていないのだがこの流れで大丈夫なのだろうか。