結構会社員生活も長いので語っておきたいのだが、この会社員というものは非常に難しい。生き残ることが、だ。生き残ることに絶望するから皆転職を考えるのであり、一度だけ転職したときはこの会社じゃ生き残れない、と考えたためだった。別に、居心地やらやりがいやらでは決めていない。生きられない会社に長居するだけ人生の時間の無駄だからだ。
どうやったら生き残れないのかは、人によって事情が違うので論ずるだけ拡散する。そんなものを集めていったら社会人ってそんなに難しいのか、大変だ、となってしまうが、実際みんな、なんとかしている。そして私もとりあえずなんとかはなっている。
それでも、振り返ると、ああこうしておくのがいいんだな、ということがある。それを挙げてみよう。
まず、数字が身を守ってくれる、ということ。数字とは、売上と利益だ。会社に対して売上や利益で貢献すると、数字として、この部分は彼の役割だとなる。仮に上層部が彼に依存するのはまずい、といろんな手段を繰り出したとしても、彼抜きではその売上や利益が立たないほど、技術が高度であれば手が出しづらくなる。社会人として数字と不可分の仕事領域を持てば、それは身を守る。
ただ、この数字優先の考え方、万能ではないということに最近気が付かされた。数字が大きくなってくると、人に依存していることがリスクと捉えられる。売上や利益は、社会からの責任の大きさでもある。それを特定の人物に大きく依存することを長い間続けていると、「転職します☆」と急にいなくなられたら会社も責任だけ置き土産にされ、そしてフォローできないという最悪の事態が起こってしまう。
数字が身を守ると言いながら、数字が自分を襲ってくるのだ。なんとか、自分以外の誰かに引き渡すために努力しなければいけないのだが、これは実際、数字を積み上げる努力とは別次元であることも多く、「なんでがんばって、自分の仕事を引き渡してるんだろう」なんて、空虚な気持ちにもさせられる。
しかも、この数字だけに頼る戦略は、「本当にアイツがこの数字を立てているんだろうか」という社内の疑問も生じさせてしまう。自分の仕事ぶりは上司が評価するものだが、会社には上司以外にも人がいる。全く評価上は絡まないとしても、たくさんの人に疑問を抱かせないのは保守になる。「あの人、うまくやってるだけで、実は部下にうまくやらせてるだけでは」みたいな雰囲気から逃れないとまずい。
この脚色は、数字だけではだめなのだ。いわゆる、他部門に対して「こんなに仕事やってるぞ」というのを、それとなくプレゼンテーションすることが身を護る。「あの部署、一生懸命やってるよね」ってヤツ。これはいくら数字を積んでもそれ以外の努力が必要になる。
テレワークの危険性はここにあると思っていて、あんまりにもオフィスで仕事してないでリモートの、いわゆるピアツーピアだけの関係で部署内の仕事に閉じこもっていると、他部門から一切見えない。こちらも他部門のことを見ない。そうやっているうちに数字だけの関係になってしまい、プレゼンテーション不足となり、「あの部署何やってるんだろ数字はいいけど」みたいな状況になる。
だから、最近、むやみに会社に来るようになったのは私の話だ。
今後、ジョブ型の職制が流行していくとは言うが、結局は評価されていくのは、「上司が信用がおけるアイツ」「みんなに評判のいいアイツ」である。人間がやっている以上はしょうがないのだが、本当は、持っている技術と成果で評価されたいものである。
・・と、振り返ってみると、会社というのはどうやっても人間のどろどろした部分と付き合っていかねばならないので、言語化してみた。数字だけでは生きてはいけないということを頭においてほしい。