orangeitems’s diary

クラウド専任の40代インフラエンジニアが書くブログ。新規事業マネージャー。20世紀末の就職氷河期スタート時にIT業界に文系未経験で入りこみそのまま生き残った人。

企業DXの裏で、IT介護士が大量に必要になる理由

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私が担当している企業の方とお話したときのことだが、盛大に愚痴られたことがあって、それは自社のITリテラシーのことだった。自分の立場としては会社全体のデジタル戦略を立案し実行していかなければいけない。なのに自分が日々何しているかというと、社員の机の下に潜って、コンセントが抜けているのを探している。これは違うんじゃないか。

今考えれば、彼はきっとDXを推進する立場だったのに、社内情報システム部門としての役割も兼任していたせいで、そちらの仕事が多すぎた。その企業は小売で国内に複数店舗持っていたけれど、その店舗に光回線やWiFiを設置したり、基幹システムへ接続するためのパソコンを支給したりしていた。基幹システム側はお抱えベンダーにアウトソースしていたために、彼の守備範囲が足回り中心になってしまった。WiFiがつながらないから店舗でシステムが使えなくなったり、光回線のトラブルで基幹と連携できなかったりと様々だ。全国に展開していたこともあり彼一人でさばくのも大変そうだった。

そもそも彼は、大都会の本社の近くにわざわざ家を借りていたし、夜中に携帯電話を持たされ、休みもろくに取れずいろいろと破綻はしていた。数年彼とお仕事をご一緒したが、会うたびにやつれていて、最後の方はスタッフにプンスカ何かを怒っていた。何でこんなに働いているのに良くならないのか。部署内で大喧嘩しているようだったし、強いストレスを抱えているのだろうと思った。

もともとのDXの方も、結局はその企業、親会社の基幹システムとの絡みで成り立っていることもあり、独自に何かやろうとすると親会社の横やりが入るという始末。親会社自体、古い体質の企業だったために子会社化して独自戦略を展開しようとしていたのに、バックオフィスが古いといくらフロントばかり洗練化しようとしても仕組みが追いつかない。私もフロントの洗練化に立ち会ったのだが、後ろ側をVPNで古いデータセンターにつなぎ日々バッチで連携するということをしていた。

結局彼は、大企業の情報システム部門へある日転職していって、その後元気にされているかはわからない。その後担当者が目まぐるしく変わっていた。半年に一度くらい、私の対面が変わっていった。それからその企業は2年後あたりに会社ごと精算されてしまった。ビジネス自体が急に儲からなくなり店舗ごと無くなってしまった。コロナ禍は関係なく、その直前だったが、よくよく考えるとあの段階で手を打っておいてよかったのかもしれない。

これはたった1つの会社の事例だけど、今のDXブームを考えると教訓にはなる。社内のITリテラシーを向上させないとDXを前に進めれば進めるほどついていけなくなる社員が増加し、その対応、つまり「IT介護士」の仲間入りになってしまうということだ。前に進もうとしているはずなのに強烈に足首をつかまれむしろ後ろに引っ張られる。これを導入したのはあなたでしょう、あなたが私をサポートするのは当たり前じゃない。そうですかそれではまずログインしてください、認証方法はお伝えしましたよね、忘れましたかそうですか。

どの事業会社でもITを専門とする人はほとんどおらず、デジタル化すればするほどIT介護士が必要になる状況は注目に値する。最近は事務職を職務転換してDX人材を増やすことがメディアを賑わせているがこれは、DXそのものの話では決してない。DXした時に要IT介護者を大量に出さないために先回りしているだけなのだ。いくら情報システム部門がDXを企てても、それを利用する人間たちがまごまごし、「これなんですか〜」と問い合わせが殺到する未来が見えたのだろう。

IT企業で働かれている方は想像できないほど、非IT人材のITリテラシーは惨憺たる状況である。よく高齢者ばかり指摘されるが、これは年齢に限らずだ。パソコンを使えない若年層も大量にいるのだから。DX人材育成とは名ばかりで、やっていることはパソコン教室と変わりない。でもそこから始めないと実は組織は踊らず。強引に対応しようものなら今度はIT介護士が大量に必要になるというジレンマに、今大企業は直面しているに違いないのだ。