orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

コスト削減手法の限界を乗り越えろ

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コスト削減のニュースを見るたびに、嫌気がさしてしまって。

 

www.nikkei.com

ダイキン工業は世界約50カ所の工場で、空調の部品と生産ラインを共通化する。目標はコスト7割減。身を切るような努力で少しずつコストを削り出す製造業にあって、常軌を逸したともいえる厳しい数値を掲げる。圧倒的な販売量を背景にした低価格戦略で成長する中国メーカーとの競争に備え、ものづくりを一から見直す。

 

相手が中国メーカーであれば、もはや「どう作るか」ではなく「誰が作るか」という問題となり、あとは消耗戦。この図式は理解できますが結局削られるのは、従業員のお給料だったり、同僚の人数だったりと、働く人のモチベーションを上げないのです。

コスト削減への見方に対しては、下記の記事のほうに共感します。

 

president.jp

ビジネスを効率化するため、多くの企業がコスト削減に努めている。IT企業レッドフォックスの別所宏恭社長は「現在の商品やサービスを『最適化』しすぎると、いざ売れなくなった時に身動きが取れなくなるリスクがある。企業は素早く切り替えられる余裕を持っておくべきだ」という――。

 

私自身も、コスト削減の一種の「楽しさ」にハマったことがあります。ITを使って普段の作業を自動化すれば、どんどん定常的にかかっていたコストを削減できます。来る日も来る日も、無駄はないかを探す日々。PDCAを繰り返し、少人数でしかも残業しなくても運用できる姿が見えてきます。

さて、無駄の多かった日々は、人数もたくさんいたし残業時間もたくさん発生していました。みんな大変大変と言いながらも活気はありました。

この状況にどんどん改善の手を入れていったら案の定人の時間が余るようになります。残業もみるみる減っていく。ついでにエラーも減っていい事だらけなのですが、都合の悪いことに活気はなくなっていきます。なぜなら、残業代が減るからです。給料が減って嬉しい人はいませんよね。しかも仕事も減るので「楽しさ」は失われていきます。

マネジメント層も、こんなに人はいらないんじゃないの?、と気づいてそこから人減らしが始まります。

コスト削減の結果、ビジネスはより儲かるようになるものの、そこに集った人数は減り残る人々のモチベーションも低下する。

ビジネス自身が変わってはいないので、売上が伸びるわけではありません。むしろやっていることが変わらないと、競合が現れたりして売上が下がったり、既存顧客から値下げの打診があったり、実はコスト削減は外向きの活動ではないのです。

一方コスト削減したことで価格を下げられますが、下げたら下げたで売上も縮小します。下げたことで販売量が上がればいいのですが、売上に影響を及ぼせるぐらいのコスト削減ができることは少ないです。

そう、コスト削減って限界があるんですね。コストがかからない商品やサービスってありえなくて、品質を出すために必ずコストをかけなければいけないという逆の考え方も成立します。そこに手をつけたら、確実に品質が下がるよね、というポイントは必ずあります。昔手に取ったあの製品、今買ってみると見た目は同じだけど、ところどころ材質がチープになっていてがっかり。そんなことが日常茶飯事に起きている気がしませんか?

アメリカ企業がすごいと思うのが、中国とは絶対に市場で競合しないように、政治も経済も徹底的に研究していることです。コストを削減するのではなく、価値を作り、アメリカからしか買えないようにするためにはどうすればいいかを追求しています。いわゆる知識集約型です。もし中国がその土俵に入り込んでこようものなら、徹底的に規制をかけて追い出す。最近だとファーウェイがその図式に一致します。

コストを削減することより、価値を生み出すことにコストを使うこと。それにより価格も上がり、給料も上がるという相乗効果を生み出しているように見えます。

日本人の我々もこの点は本当に見習わないといけないなと思います。より魅力的な製品やサービスを生み出し、お金を支払ってでも手に入れたいと思う価値を想像する。そのためにコストをかけて結果を出す、という循環を手に入れるために、コスト削減中毒から抜け出さないといけないですね。

自動化でのコスト削減ばかり考えているとしたら、一度手を止めて、何を生み出すかに時間をかけてみてはいかがでしょうか。