orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

将来、デフレにはならない理由

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www.nikkei.com

「欧米は日本と同じ道をたどっている」。4月、英議会上院の特別委員会に出席した白川方明前日銀総裁は訴えた。

 

デフレという言葉はバブルが崩壊したあたりから十数年語られ、おなじみとなった。日本は本当に物価が安定している国だと思う。1,000円札の価値はここ二十年くらいは全く変わっていないのではないか。

私が上京した時に新宿をぶらぶらしていたら、「アルバイト900円」という文字を見つけ、え、店番しているだけで900円ももらえるの??!!、大富豪じゃん、と思ったものだが、今も時給は1100円くらいが相場なのでほとんど変わっていない。

900円と1100円じゃ大違いじゃん、という感想こそデフレ志向で、むしろアルバイトの価値が高まっただけであり貨幣価値としての1,000円は堂々としていると思う。

もっと言えば、私が学生だったときはジーンズは8,000円したし、Tシャツだって4,000円くらいしていた。メガネも30,000円くらいしたものだ。ところが価格破壊がやってきて、今は4分の1くらいの価格で買えるようになった。もっと下を探すこともできる。

一方で、食料品などは、価格破壊ではなく、パッケージの中身を減らしたりするなど、実質値上げになったような気がする。最近ポテトチップスを普通に買うと150円近くするが、昔は90円くらいで買えていた。

全体的に付加価値があったものが安くなり、原料そのものは高くなった、そんな気がしている。人が手を加えなければいけないものは大規模な工場で生産することで手間を削減し、その上で人件費の安い外国で仕上げて日本に輸入することが当たり前になった。だからその分、価格破壊が進んだのだろう。

一方で、昔と比べると、社会に出回っているお金の量は恐ろしく多い。お金がいっぱいあって、物の量が限られているとすれば、お金の価値が相対的に減る。そうするとインフレが起こるはずだ。価格破壊が起こるかもしれないが、それにもましてお金の量は増えているので、デフレを心配することの方が感覚的にはおかしいはずだがなぜ、インフレは起きないのか。

一説には貯蓄が増えているからという話もあるが、いや、それは限られた富裕層だけの話であって、ほとんどの人が貯蓄がなくなっているという実感のほうが真実味がある。過去より所得は増えているが税金も増えた。おかげて手取りが少ないというのが社会問題化し始めている。預けても金利がほとんどつかないのが長期間化しているし、今一つピンとこない。

これには2つの要因があると思う。一つは、無形のモノ・サービスがデジタル化の浸透で急増し、それ自体が価値をもったから。いろんなモノやサービスには価格がついているが、それらの合計が資産だ。資産は過去は目に見えるモノだとされていたが、サービスという概念が生まれ、そしてデジタルがインターネットの普及でたくさんの人の手の中に届けられ、価値を持つに至った。例えば通信費一つとっても、目には全然見えないが、誰も通信費なんか払えない!と言う人はいないだろう。音楽聴き放題のサブスクリプションにしたって、音楽を聴く体験にお金を払っているだけであって、音楽を人が所有するわけではない。このように、無形のモノ・サービスが世界中に拡散し、それに貨幣量の急増が合致しているために、インフレが起きないという見方だ。

もう一つは、発展途上国が経済力をつけたことにより、一人当たりの資産が増えたことによる。モノやサービスがたくさんの人に必要になったのでたくさん作らなければいけない。たくさん作ったことと、貨幣量の急増が合致しているという見方だ。

この2つの要因により、インフレも起こらず、一方でデフレは一部の非生産的だった市場だけにしかおきなかった、と見ている。不思議と貨幣価値全体が長年安定しているのは、結果としてデジタル化と、発展途上国の成長のためと見るべきだと思う。

さて、これからの話。日経の記事が言うようにデフレは起こるのか。人口減が需要を減らし、企業の成長を妨げる。そのため価格競争に陥り、物価が上がらなくなる、は本当か。

日本は成長していないとは言うが、たくさんの衰退産業が本当に衰退し、一方でデジタルを取り込みすさまじく成長した分野もある。それらの合計は一致し、全体としては経済を保ってきた。どこかがおちぶれたらどこかが成長する。だから、「日本の低成長は、無策の結果」という意見は違うと思う。

この先も、似たような話が起きると期待している。デジタルだDXだというのは、当たり前の話過ぎるし、実際はデジタル化による価値増大なんてもう過去完了の世界である。次に何が起きるか、についてはコロナ禍で一旦いろんなものがストップしてしまっただけに、潜在的に今何かどこかで起きていて、市場に出ていないことがたくさんあるのではないか。

過去、インターネットが無かった時代に、インターネットの価値が誰にも理解されなかったように、何か新しいものがくすぶっているのが今。それは何かはわからないけれど、コロナ禍が収束したらいろんなものが、じゃんじゃか出てきそうな予感をしている。それこそが成長のエネルギーであり、期待をしているところである。旧来型のデフレは恐らく起きない、と思っている理由である。現状を打破できたら、今地面に潜っているものが、きっと現れる。経済成長するし、少子化も改善するし、社会問題も解決していく、そんな何か。期待したいし、体験したい。