オープンソースソフトウェアに昔からある、フリーライド(無料でただ乗り)問題についての意見です。
TDFは、LibreOfficeを「自由・オープンソースソフトウェア」(FOSS)と称している。ボランティアによって開発されているCommunity版を企業組織がフリーライドする行為は慎むべきであり、さもなければLibreOfficeはオフィスの生産性スイートである「OpenOffice」のような停滞に陥る可能性があるという見解を維持している。
無料版と有料版があり、無料はCommunity Editionとして無料となっているケース、別のソフトウェアでもありますよね。Community、という言い方に対して良い訳語が日本語にないらしく、日本人はピンと来ていないように思います。
・UiPath
・Delphi
・Nutanix
・Visual Studio
・MySQL
・Automation Anywhere
・LabVIEW
・Alfresco
・Veeam
などなど。ほかにもモリモリあります。Free Editionとは誰も言わなくなりましたね。
なぜFreeではなくCommunityなのでしょうか。コミュニティーとは「共同体意識を持つ人々の集団。地域社会。」のような意味ですが、ソフトウェアにこの言葉を使うのは意味不明です。無料で使ったら、君も集団の仲間だよ、ぐらいの意味かもしれません。でも別にコミュニティーの一部になったわけでもなく、単に無料で使ってるだけだと思います。
で、この無料で使っている人たちに、以下のように呼び掛けるのはいかがなものでしょうか。
ボランティアによって開発されているCommunity版を企業組織がフリーライドする行為は慎むべきであり、さもなければLibreOfficeはオフィスの生産性スイートである「OpenOffice」のような停滞に陥る可能性があるという見解を維持している。
オープンソースへのフリーライドは慎むべきだ、という議論はオープンソースが生まれた当初からある議論です。しかし、この理屈は私はそろそろ時代遅れになっているのではないかと考えます。
一つに、Communitiy Editionをビジネス利用されたくないのであれば、契約で絞るという手段があります。
MySQL Community Serverは、無償で自由にダウンロードして利用できますが、MySQLの使用にあたってGPLのライセンス使用条件に従う必要があります。 また、商用製品として使用する場合などは、使用条件を詳細に確認する必要があります。
で、サーバー製品などはGPLライセンスとしてオープンソースにすると、かなり制約を受けるのでサブスクリプション版など有償版を買ってもらいやすい環境となります。
また、MySQLの場合はOracleが契約の履行を実質監視しているので、企業側もおいそれとはCommunity Editionでフリーライドしにくいのです。
ですから、「開発はボランティアでやってるんだから、商用利用している企業はCommunity Editionで済ませてフリーライドするんじゃないよ。そしたら開発側も干上がっちゃって誰も開発する気がなくなり、ソフトウェアも更新されなくなっちゃうよ」と言う、と。これってビジネスとしておかしいんじゃないかと思うんですね。
RedHatなんかは、オープンソースのソフトウェアをくるんで企業に有償でソフトウェアを販売していますが、逆にRedHatがパッケージとして利用しているオープンソースの団体には多額の資金を提供しています。
オープンソースコミュニティー側も、ユーザーを脅すばかりじゃなく、どうビジネスとして成立させるかまでを構築する必要があります。そこまでが持続可能なソフトウェアとしても成立条件ではないかと思うのです。
以前、GitHubをMicrosoftが買収しましたが、これもオープンソースコミュニティーの一つの在り方です。一つの企業がオープンソース自体の運営に責任を持ち、その収支構造までデザインし、ユーザーに永続的に安全なソフトウェアを提供する必要があると思います。
ソフトウェアは、幾多の事件の通りサイバー攻撃にさらされて続けています。どこかの営利団体が収支が成り立つ形で保守し続けないと、たちまちマルウェアの餌食になる世界です。
フリーライドが問題ではなく、フリーライドさせてしまう配布・利用の仕組みを、オープンソースソフトウェアの運営側が法的、経済的に改めることこそ、オープンソースのあるべき姿ではないかと思いますがいかがでしょうか。結果として、「ボランティアで開発」というあまり生産的ではない状況を変えることができるように思います。