今日は「続ける」「辞める」という話について書きます。
2月、今年デビュー43年を迎えた日本を代表するポップ・インストゥルメンタル・バンドT-SQUAREとファンに激震が走った。それは結成からただ一人バンドに在籍し続けた安藤正容(G)が2月、公式YouTubeチャンネルで2021年夏のフェアウェルツアーを最後に退団することを発表したからだ。国内外のファンからは勇退を残念がる声がYouTubeのコメント欄にも多く届いている。「数年前から、どこかでT-SQUAREの活動から身を引かなければならないと考えていました」と語っている安藤に、勇退することについて、そして7月28日に発売されたT-SQUAREの新旧メンバーが選曲に関わった7枚組CD+Blu-rayボックスセット『Crème de la Crème ~Édition spéciale~ 特別篇@THE SQUARE~T-SQUARE "1978~2021"作品集』について話を聞かせてもらった。
私の幼少のとき、母親から「一度始めたことは辞めないこと」みたいな話をされたことがあった気がして、どうも自分の人生自体に大きな影響を与えている気がします。結構、いろんなことを辞めない。私は、これしかできないから、というよりは、続けることには大きなメリットがあって、辞めることには大きなデメリットがある。そんな単純な思考はどこから来ているのかと思ったら、なんとなく幼少期の刷り込みのような気がします。
辞めないんだ、ということによるメリットはやはりあると思います。続けているといつしか、慣れがでてきてそこから飽きが始まる。続けるかどうかは飽きが来てからが本当の課題になります。新しい体験がこれ以上できないのではないかということと、それによって自分自身が感動しなくなり、その結果も平凡なものになっていく。
だからこそ辞めて新しいことを、という発想は一つですが、これを繰り返すとどこまでいっても、飽きては辞め、飽きては辞め、で大成しないということになります。これは間違いないと思います。
どこかで本物を掴み、ここは辞めない。飽きたら飽きたでまた新しい何かをこのフィールドの中で見つけ開拓し、ずっとずっと続けていく。
一見こちらも良いように見えるのですが、単に惰性で、辞めるデメリットが怖いからしがみついているだけで、大成もしないのにそこにいるだけになってしまうかもしれません。
辞める/続ける、というのは戦略が必要なんだと思います。その先に何が待っているかについてきちんとビジョンを立てて決めていく。
辞めるために次のことを考えるのではなく、次のことをしっかり準備してから辞める。
今考えると「一度始めたことは続けなければいけない」という言葉は、これは今では違うと思っています。次のビジョンが開けるなら辞めることが正しい場合もあります。人生は一直線に流れますから、方向転換しても一つの人生であることには変わりません。良くなるならばやるべきだと考えます。私にとっては呪いの言葉でした。
そもそも一番のリスクは、一度始めるなら続けなければいけないのならつまらないことを始めてしまったら大変じゃない?、ということで、すごく自分にブレーキをかけるのです。そのため、辞めない性格とともに、始められないこともセットで付いてきました。
これまで後ろを振り返ってみると、それでも辞めたことは毎回それなりに心が傷ついていて、「ああ辞めちゃったなあの時」という少しの後悔を必ず含んでいます。何となく残る罪悪感は冒頭の呪いのせいなのかもしれません。でもやっぱり、理路整然と考えると、人生をかけて辞めなければいけないこともあるし、新しく始めなきゃいけないこともある。存在する。
大事なことは、辞めるのか続けるのかという二択ではなく、自分の人生は一本のラインでつながっていて、どちらの選択が自分にとってより良いものかという一点です。どちらを選択するにしても、自分に取って良い方向になるのであれば、どちらも正解ということだってありえます。そうやって今後も考えていきたいと思っています。