orangeitems’s diary

クラウド専任の40代インフラエンジニアが書くブログ。新規事業マネージャー。20世紀末の就職氷河期スタート時にIT業界に文系未経験で入りこみそのまま生き残った人。1日2記事投稿しています(0:00、12:00)。

誰もやりたがらない仕事

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一般的に言って「誰にでもできない仕事」は給料が高い。専門性が高いとも言う。誰にでもできないので、できる人が少ない。その上で誰かにやってほしい、いわゆる需要が高ければ人材獲得競争になるので高いお金を払ってでもウチで仕事をしてほしいとなる。

専門性が高いからこそ資格や経験が必要になってくる。誰でも高収入の仕事にはつきたいだろうからこういった仕事には資格の学校など、教育面でも賑やかになる。

そうやっているうちに、「誰にでもできない仕事」だったはずなのに、たくさんの人がその仕事に就きたいと勉強を重ね、ふと気づくと人が溢れている、ということがこの社会では簡単に起こり得る。

今は、薬剤師が過剰になっているそうだ。

 

www.nikkei.com

厚生労働省は16日、薬剤師養成を巡る検討会を開き、薬学部の入学定員抑制の検討などを求める提言案を示した。学部新設などの影響で薬剤師数は増加し、将来的に「薬剤師過剰」が深刻になる見通し。一部の大学で学力低下や定員割れなどの影響も指摘されている。

 

このブログ、3年半続けているのだけど、記念すべき1回目はこの話だった。

 

www.orangeitems.com

 

なぜこの話題を1番目に書いたのかは全然わからないけれど、IT業界に長年いる中で、調剤薬局の仕事場を見ながら、何か腹が立ったんだと思う。

彼らは彼らでバリューを出そうと必死なんだと思うけれど、物理的に人が多ければ、もう見ただけで過剰人員なことがわかる。そして、過剰なのに収支がなりたってしまっていて、このままいくと物理的に受け入れ不可能になるんだろうということもわかる。

 

一方で「誰にでもできない仕事」の別な表現がある。

「誰もやりたがらない仕事」だ。

誰でもできるかもしれないけど、できればやりたいくない、そんな仕事。

このIT業界の中でも、インフラエンジニアと言う職種は不人気だったように思う。私が新人だったころITの会社に入ってほとんどがアプリケーション開発の方に希望を出した。私はITサービスと当時呼んでいた、運用保守、サポートの分野に進んだのだが、人気が無さそうな雰囲気を察してわざとそちらを選んだ。サポートをずっとやっていたけれど、途中でインフラエンジニアに鞍替えした。この経緯のおかげで今でもプログラムを書かない(シェルは書くけど)ITエンジニアなのだが、それでもなんとか食えている。

十年ほど前に他人から聴いた話で、「開発エンジニアに慣れなかった落ちこぼれが、インフラエンジニアになる。開発エンジニアはインフラエンジニアを見下している。」と言われたことがあった。とんでもない話だが、実際のところ開発部門から落ちこぼれてくる人の受け皿みたいになっていた部署だったので、そういう認識もあったのだろう。部門の雰囲気も悪かった。このような自己評価の人々を集めてしまって崩壊にいたったインフラ部門も他社にはあったのではないか。

潮目が変わったのがクラウドの隆盛で、それまでコツコツとがんばってきたオンプレの知識を持つインフラエンジニアたちがクラウドを身に着けると、格段に生産性が向上した。クラウドとオンプレは天と地ではなく、道はつながっている。いきなりクラウドから始めた経験の浅いインフラエンジニアの話を聴くと、どこかフワフワした認識をしているのだが、それは物理的に触れて苦労したことがないからだと思う。

インフラエンジニアがクラウドの登場でかなり業界の中でも重宝されだした。クラウドを使いこなすと便利なのは皆わかっているが、それができる人材は限られていた。従って以前は「誰もやりたがらない仕事」だったのが「誰にでもできない仕事」に変質してしまった。

最近は、クラウドに関する教育も盛んになっているので、しばらくしたら薬剤師のようなことになる恐れはあるが、それでもやっぱりアプリケーション開発者の人気のほうが今でも高いので、まだまだこの仕事は伸びると思っている。外からは、プログラムも書かないでどんな仕事があるんだろうと思われがちだけど、システムを安全安心に動かすためには、やっぱり何らかのスキルが必要なのだ。それが何なのか表現するのは難しいから、誰にでもできない仕事なんだけれど。

 

私が思うに、人気があって、給与が高くて、安定して、楽しくて、他人からうらやましがられる。そんな仕事は誰でもやりたがるので、私はリスクがあると思っている。

むしろあまり人気が無く、それでいて誰かがやらねばならず、そのうえ将来需要が高まりそうな、そんな分野をいつでも狙っていくべきだと思っている。クラウドのように将来化けるかもしれないしそうでもないかもしれないが、それならまた次の分野を探せばいいだけだ。誰もやりたがらない仕事にこそ、宝があると思う。