orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

日本の属人化排除思想は全く的を得ていない

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属人化はダメだって誰が言い始めたんだっけな。

インターネットを探してみると、2005年あたりからちらほら記事が見える。

 

www.itmedia.co.jp

「属人化しやすい保守サービスのプロセスを標準化することで、システム停止時間を最小限に抑えることができる」と、保守サービスを契約する顧客らのメリットを話すのはエンタープライズ事業本部長の長谷川マイケル氏。

 

最近思うんだけど、この業界、実はやっていることや体質はここ20年来全く変わってないんじゃないか、と。

昨日と今日がそんなに変わらないことを20年積み重ねてきた結果なんじゃないかと思う。そりゃ、クラウドやらインターネットやら、ハードウェアやソフトウェアの性能向上はあったけど、それよりも社会から求められる責任の方が何倍も増えてるから、いくら生産性が上がったって仕事は干上がりはしない。

どちらかといえば、それらの性能向上に地道に付いていったベテランエンジニアが、よりよい仕事の仕方を経験値としてため込んでいて、いつもどこかでがんばって働いてくれるからかろうじて回っている気がする。

今日だって、Outlookだのセールスフォースだのがシステム障害になり、いろんな会社が右往左往してた。

 

www.jiji.com

 

www.itmedia.co.jp

 

こんな大きなシステムが、並行で独立してトラブルが起こるとはね。どっちも使ってる会社は仕事にならんらしかった。

でも、一日も経たずにで治るでしょ。

これ治してるのがすごい連中なわけ。全世界が使うシステムなんてほんと冗談じゃない。一発でメディアが記事にするし、SNSは阿鼻叫喚。金融系だったら社長の首まで飛ぶ始末。原因究明から影響範囲、暫定対策や再発防止策など、リアルタイムで考えながら、お偉いさんの相手までしなきゃならない。それが全世界ってんだから私は極力その中には参加したくないと思っているけど、守ってくれている人がいる。

今は医療従事者に感謝をとあるが、システム保守だって24時間動かし続けていることに関与している人たちがいる。勤労感謝の日でもいいから少しでも思い出してくれるといいな、と思う。それぐらい、システムに地球は依存しているよね。

この前、アメリカの石油パイプラインがサイバー攻撃でやられたっていう話があったでしょう。

 

www.bbc.com

 

これ、結構重要なインフラらしく注目しているのだけど、昔は、攻撃を受けるパスすらなかったと思う。それがWindowsやらインターネットやら施設に入ってきて、そしてシステムもオープン系(今はそういう呼び方もしなくなったけど)やらクラウドやらを使うものだから、防御をほんとにしっかりしないと、こんなふうに立ち入られてしまう。システム保守ってのは単に障害対応だけではなく、サイバー攻撃など、セキュリティーも絡んでいるからほんと守備範囲は広いな、と思う。

 

で、属人化の話に戻るけど。属人的でない保守なんて極論ないと思ってる。チームにして業務を複数人で当たれば属人化しないと言うけど、違うんだ。チームの中で属人化するんだ。でも、手一杯になるから、属人化するような優秀な人は自動化などの技術を使って、誰でもできるように仕事のワークフローを整える。そこまでやって優秀なんだけど、それで、「ああもう属人化しないね」とはならぬ。まずはその自動化の仕組み自体をちゃんと全メンバーが理解できているかどうか。たいていはできない。優秀な人の思考を全員がシミュレートするなんて絵空事なの。でも、人間は教育の力を信じてるから、資格試験のような標準化されたナレッジを使って優秀な人たろうとするけど、ほんと、優秀な人は優秀で、普通の人は普通で、できない人はできない。

そして、優秀な人が優秀なのは、既存事例ではないことが起こった時。想定外の時。それを経験と思考から導き出し解決策をひねり出す。この部分はなかなか、誰でもできることじゃない。

組織を語るときは、属人化しないように、ではなく、優秀な人をいかに組織に抱え込むか。そして優秀な人の助けになる普通の人を確保すること。そして、仕事しない人、足を引っ張る人を排除すること。この3点こそが重要で、属人化の排除なんてのは「優秀な人の論理」にしかすぎないと思ってる。(優秀な)あなた自身は属人化したままだよね、という。

だから、属人化しない組織なんてあり得なくて、むしろ属人化させる組織のコアになるような人材をどれだけ持てるかで、その組織の伸びしろが決まってくると思う。

最近は「フラット型組織」を、昔の事業部長 - 部長 - 課長 - 主任、みたいなピラミッド型組織よりモダンだという傾向にある。これはコア人材をいっぱい作って、一つのチームに大胆に権限を与え、そのユニットを横に増やしていくマネジメントだ。これは、結局はたくさんの属人化なのだと思ってる。コア人材がいないとチームは作れないからだ。

属人化しないなんて考え方自体、もう私は相手にしていないんだけど、どうだろうか。