orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

熱意とパワハラの間にあるもの

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毎日毎日ニュースを見ていて思うのは、著名な〇〇さんがパワハラで告発された、的な話です。本当にこのケース、増えています。わざわざ具体的案件は取り上げませんけどね。で、そういうニュースの論評を見ると、上司の指導方法が時代遅れとか、人間的に未成熟だとか、たいてい上司が糾弾されます。パワハラという言葉は加害者と被害者に分かれていて、加害者が叩かれるのはわかりやすいです。ですからパワハラという言葉がある時点で、加害者は上司にほぼ決まっているので負けなんだ、ということも理解しています。

だから、パワハラと認定されたら負け、ということです。本人がパワハラをしようとしたか、そうでないかは全く関係ない。第三者がパワハラと認定したら終わりです。そしてその第三者は、だいたい被害者の方を見ています。自分はこんなに痛いのだ。この痛さの原因は誰だ。彼だ。そんな具合です。

誰かの上司になったら、もうパワハラのリスクが発生していると言っても過言ではありません。そして、このパワハラ認定のラインは、厚生労働省がきちんと定義をしているんです。

 

www.mhlw.go.jp

職場におけるパワーハラスメントについて、裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づき、次の6類型を典型例として整理しています。
なお、これらは職場のパワーハラスメントに当たりうる行為のすべてについて、網羅するものではないことに留意する必要があります。

1)身体的な攻撃
  暴行・傷害

2)精神的な攻撃
  脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言

3)人間関係からの切り離し
  隔離・仲間外し・無視

4)過大な要求
  業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

5)過小な要求
  業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

6)個の侵害
  私的なことに過度に立ち入ること

 

単純化されていてわかりやすいのですが、よーく考えると「精神的な攻撃」という文言があり、とても解釈が難しいのです。攻撃と受け取られるかどうかは、相手次第であり、かつ信頼関係が重要です。信頼関係がないと、何を言っても攻撃に受け取られることがあります。上司は部下を信頼し自分も信頼されていると思っても、部下は全然信頼していなかった、なんてことも普通にあります。

相手の取り方次第、という概念がパワハラの定義の一部である以上、これは第三者がどうみても、精神的な攻撃ではない、という対応が必要となってくるのです。

 

この話を聴いて、システムエンジニアの私が一番ピンと来たのは、「ゼロトラスト」という言葉です。

 

www.ntt.com

ゼロトラストとは「何も信頼しない」を前提に対策を講じるセキュリティの考え方です。

従来のセキュリティ対策は、信頼できる「内側」と信頼できない「外側」にネットワークを分け、その境界線で対策を講じるというものでした。内側は社内LANやVPNで接続されたデータセンターなどが、外側はインターネットが該当します。その境界線にファイアウォールやプロキシー、IDS/IPSなどのセキュリティ機器を設置し、通信の監視や制御を行うことで外部からのサイバー攻撃を遮断する考え方です。

こうした従来のセキュリティ対策は、保護すべきデータやシステムがネットワークの内側にあることを前提としています。しかし現在は、クラウドが普及したことにより、外側であるインターネット上に保護すべきものがある状況が珍しくありません。このように、守るべき対象がさまざまな場所に点在するようになったことで境界が曖昧になり、従来の考え方では十分な対策を講じることが難しくなりつつあります。

そこで広まっているのがゼロトラストの考え方です。こちらはすべての通信を信頼しないことを前提に、さまざまなセキュリティ対策を講じていきます。具体的には、ネットワークの内外に関わらない通信経路の暗号化や多要素認証の利用などによるユーザー認証の強化、ネットワークやそれに接続される各種デバイスの統合的なログ監視などが挙げられます。

 

そう、会社の中であろうが、家族だろうがなんだろうが、すべてを信頼しないこと。これでセキュリティーは守られます。リスク対応ができます。部下であっても、信頼してはいけません。信頼しないからこそ、誰がどう見ても、精神的な攻撃と受け取られない対応が大事なのです。

だから、信頼に甘えた対応をすることは、現代社会において致命傷となりえるのだ、ということを理解する必要があると思います。

情熱を持って対応すれば、感情がほとばしる。私は四十代なので、子供の時は熱血指導が当たり前で、ビンタなどもされたこともありました。授業中にチョークが飛んできたこともありました。でも、今はこれは全部ハラスメントです。信頼関係に甘えた行動は、パワハラのリスクを抱えているのです。

ゼロトラスト。よく言ったもんだ。社会の人間関係は、これからはゼロトラストとなるべきなのかもしれません。

まぁでも、どこを見てもゼロトラストって、寂しい社会ですね。信頼はしてはいけないか。何とかならないんでしょうか。

コロナ禍での非接触や飲み会禁止、ソーシャルディスタンスなんかも、この世を象徴している出来事なのかもしれないな。