orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

70歳まで働くことと、会社にしがみつくことを一緒にしてはいけない

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70歳まで働くということが現実化しているのは間違いないです。人間の平均寿命が80歳あたりにある以上は、あまりにもたくさんの人が仕事をしないでいれば、若い世代の負担になるからです。少子化で若い世代の人数が減っていくことが必至な世の中で当然と言えましょう。それとも、60歳で引退し20年間仕事もしないで社会福祉にぶら下がる人々の数を増やしたい、というのでしょうか。

と、40代の私でもわかります。社会の負担になりたくはないので、ぎりぎりまで仕事はしていたいと思います。

一方で、こんな記事を見ました。

 

www.itmedia.co.jp

「オレも70歳まで会社に残って後輩たちとバリバリ働くぞ」と決意を新たにしている方も多いだろう。そんな高まった勤労意欲に冷水をぶっかけるようで大変心苦しいが、あなたのような「70歳まで会社にしがみつくおじさん」が皮肉なことに、人生を捧げた会社をピンチに追い込んでしまう皮肉な現実もあるのだ。

 これまで60歳でいなくなっていた社員の定年が延長されることは、それだけ人件費が余計にかかることは言うまでもない。ジョブ型雇用や契約社員への切り替え、フリーランスという扱いで業務委託契約にするなど働き方にはさまざまな選択肢があるという話だが、どのような形でも人件費が上乗せされることに変わりはない。では、そのしわ寄せを誰が受けるのかというと、若い世代である。

 

あまりにも偏見の強い記事で、しかも同世代の著者がこういう意見を書いていることに絶望をおぼえます。若者に支持されたいからなのでしょうか。

40代の人はわかるでしょうが、子どものときは定年が55歳と聞いていました。大学生になるころには60歳になり今では65歳にまで延長されました。どんどん先に延びていったのです。その割を食ったのは誰かというと、40代、つまり就職氷河期世代の私たちです。上の世代(高度成長やバブルに乗っかった人たち)がいつまでも引退せず、新卒カードは没収され、いざ40代になったら希望退職/早期退職と踏んだり蹴ったりの世代のはずです。

その40代が、「定年が伸びたら若い世代にしわ寄せが行く」と言う発言をするのは、ドMなのでしょうか。しわ寄せを受けまくった世代が自分たちが今後長く働くと、若者にしわ寄せが行くとはどういう了見なのでしょう。

もしくは、やっと60代が引退し自分たち(40代)が主役になるのかと思ったらまだ引退しないのか、ということを暗に言いたいのかもしれません。

しかし、40代って、あと数年すれば50、十年すれば60が近づいてきます。自分たちこそ「おじさん」「老害」予備軍です(著者の言葉を借りるとすれば)。

むしろ、若者世代を邪魔しないために、自分たちが社会保障にかかる費用をできるだけ減らす努力をしなければいけません。例えば年金について支払いを繰り延べる措置が用意されつつありますが、働きつつできるだけ利用し、若者世代に負担をかけないようにしなければならないと思っています。

そして、しがみつくことのないように若手にポストを与えながら、これまでの経験を伝え社会全体が劣化しないように努めていく必要があります。この「おじさん」とか「老害」とか言う言い方は、レッテル貼りであり、優秀な高齢の方はいくらでもいらっしゃいます。

一方、記事にはフォローのくだりがあります。

 

断っておくが、「シニア人材は使い物にならない」などとディスっているわけではない。企業でキャリアを重ねた後に独立し、活躍されているシニアは世の中にたくさんいらっしゃる。蓄積した知識や経験で、自分の人生を切り拓くという点で、シニア人材は若者に比べて遥かに優秀なのだ。しかし、その能力を「組織にしがみつく」方向へ用いると途端におかしなことになる。つまり、「社員がシニアになるまでしがみつくというマインドが強いような組織は成長ができない」と言っているだけだ。

 

しかし、これは独立しなければ、しがみつくと言わんばかりで、フォローになっていません。組織にいながらにして、70歳まで勤め、そして若者のモチベーションを上げていくような措置こそ大事であって、誰も彼も独立していくのが社会の正しい姿であるとは全く思いません。

 

ちょっと考えれば当然のことだが、定年まで会社にしがみつく人は、最終的なゴールは無事にその日を迎えることなので、どうしてもリスクを取れない。社内政治では長いものに巻かれるし、身を切るような改革はどうにかして避ける傾向が強い。批判をしているわけではなく、人間というのはどうしても組織に長くしがみつくと、既得権益を享受することがやめられなくなって、後進の若い世代にとってマイナスの存在になってしまうということが言いたいだけである。

 

全くの偏見です。

誰のことを言っているのか。一般化するにしては乱暴なのではないでしょうか。

いくつになっても、会社はいつ不健康な状態になるかわからない。

その中で、会社に貢献すべく日々働くのは若手も、中堅も、シニアも同じで、まるで高齢になって仕事している人は定年まで働くのが目標だというのは、完全にレッテル貼りだと思います。

 

こういった、世代間の分断を狙うような意見はどんな時代にもありました。しかし私の経験から言えば、素晴らしい人はどんな年齢だって素晴らしいし、ダメな人はどんな年齢でもダメです。年齢ではなく、人格を日々磨き、優れた結果を出そうと努力する生き方自体は、全ての世代に言えることです。

私はこういう、高齢であるだけでマイナス視するようなステレオタイプな意見が大嫌いです。十年前まで、「業界35歳定年説」っていうのがあって、IT業界にいるなら35歳まででそれ以上は通用しないと言われた時代も本当にあったんです。

 

www.huffingtonpost.jp

働き方が多様化した現代において、『プログラマ35歳定年説 』は過去の話と一蹴することはできる。しかし依然として、通説が健在しているケースもあるだろう。

そもそも『35歳定年説』には、「体力が落ちて、激務についていけなくなる」「記憶力が落ちて、新技術の習得についていけなくなる」などの理由を推す声が多い。しかし言語自体の利便性向上やフレームワークの進化など、過去と比べコードを書く量は減らすことができるようになった。体力勝負ではなく、知力と経験で通説を吹き飛ばせるという声もある。

 

むしろ若い世代が少なくなっていく現状においては、シニア勢は一生懸命若手を育てることが、WIN-WINの関係を作ることになります。

肉体や精神をアップデートし続け、70歳まで現役でいるのはおそらく誰でもできることではないので、これは日々の生活も含め準備を常に行う姿勢は必要だろうと思います。問題となるのは、このアップデートを忘れ衰える一方の人が会社を離れないで給料とポストをいつまでも要求しつづけることでしょう。そうならないように日々生きていくことが若手も含めて求められようと思います。70歳まで働くビジョンを持てば、不摂生な生活や不勉強が何をもたらすかは簡単な話だからです。

一方で、優秀なシニアをどんどん放出するような企業は、いずれ立ちいかなくなると予言しておきたいと思います。70歳まで働くことと、会社にしがみつくことを一緒にしてはいけません。