orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

スケールアウトしても「うまみ」の無い日本のビジネスを思う

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まず、スケールアウトという言葉について説明します。

規模を大きくするときに2つの表現があります。

 

①スケールアウト

②スケールアップ

 

この違いはご存知でしょうか。

スケールアウトとは、同じ機能のものを横に増やして規模を大きくするというやりかたです。お店で例えるなら、本店の立ち上げがうまく行ったので、同じ規模のものを別の地域で出店する、というようなやり方です。

スケールアップとは、今動いている機能を強化することで規模を大きくすることです。本店を増床しつつ、スタッフを増やし、お客さんをもっとお店に入れるようにする、などです。

 

世の中いろんな仕事がありますが、関わる仕事についてどんどん成長しているビジネスに関わった方が、給与も待遇も年々良くなるという話は一般論としてあると思います。ただ、では社員、もっと絞ればマネージャーの立場として、ビジネスを拡大していくことはどれだけ自分にとって得なのかな?と疑問に思うことがあります。

特にスケールアウトするような、売上を倍増させるために取引数も社員数も増やそう、という状況に関わるともやもやした気分になるのです。

利益率は変わらず、売上を増やしていけば、利益の総額は増えます。この原理で、どんどん規模を大きくしていくと、自分を頂点として組織は膨張します。部下が増えます。その上で仕事の総量は明らかに増えてきます。

だからといって、自分の給与は比例して増えるかと言うとそうではありません。10倍利益の総額を増やしたところで、自分の給与が10倍になる会社は稀でしょう。

むしろ社員が増えたことで売上に占める人件費も増えますし、彼らは昇級させていかなければいけません。

しかも、例え給与が増えたところで、給与総額が増えていくと税率が跳ね上がります。給与総額は増えたのに、手取りが全然増えない現象が発生します。

スケールアウトしておいしい思いをするのは、経営者や株主ばかりで、社員への還元が非常に弱い日本のシステムは、会社という枠でやっている限りは限界があるのではないかと思ってしまいます。

逆に、売上が半分になっても給料が半分になるわけではない、という意味で社会保障的な意味もあり、あまり気負わずに挑戦できるという良い側面もあります。

現状においては、急激なスケールアウトを狙わず、あまり規模を追いかけず、むしろ自分自身のスケールアップを行い技術を磨きできることを増やし、結果として緩やかな成長をする方がメリットが多いのではないかと思います。自分自身の能力を増やせば、仮に転職したり、フリーランスになったりするときに超絶有利ですから。

一方、スケールアウトの結果、ビジネスが伸び悩んだ時に縮小しなければいけないのですが、人はなかなか辞めさせられません。スケールアウトしやすい割に縮小はしにくいのです。日本においてスケールアウトに手を突っ込むのはギャンブル的要素が強い割に、社員にはメリットがないという状況に思えます。

名前は挙げませんがよくありますよね。メディアにも登場した急成長企業が、急に成長が止まり赤字転落。そこからのリストラでビジネス自体がガタガタになり‥と言った話は一つや二つではありません。

 

ここまで悟ったうえで、私の身の回りは、できるだけスケールアウトさせず、優良顧客を厳選して囲い込み、手がかかる割に金払いが無さそうなところは見積段階でお断りし、毎年安定成長させるような結果を得られるような活動をしようと思い、今に至ります。一方で、自分自身やメンバーのスケールアップは地道に行っています。

まぁ、経営や株主からしたら、もっと売上伸ばさんかい、と言ったところでしょうが、なかなかどうして、そのリスクを取ったとしても報われるようにはなってないよなという感想です。だから、あまり日本には急成長企業が現れないとともに、大企業の寿命が長いんだろうな・・と思います。